◎FROM THE ORIGINAL MASTER TAPES
▼ベスト・オブ・バディ・ホリー
☆Buddy Holly
★バディ・ホリー
released in 1985, recorded during 1957-1958
CD-0149 2011/10/24
バディ・ホリーの20曲入りのベスト盤です。
音楽の世界では時代の先を行っている人が時として現れます。
そうした人たちがロックに革命を起こし、新たな価値観と方法論を提示し、後続車が現れてロック音楽が大きくなっていきました。
バディ・ホリーもそんなひとりでしょう。
何が驚くって、このCDを聴いて、これらの曲が作られ録音されたのが1950年代であることがにわかには信じ難い、そんな音を出していることです。
僕が初めてバディ・ホリーを聴いたのはこのCDを買った大学時代でしたが、聴くなりそのことに驚き感動しました。
いうまでもなく僕はビートルズに洗脳されていた(る)人間だから、ビートルズより前の音楽は古臭い響きで「オールディーズ」としてひとくくりにして考えていました。
でも、バディ・ホリーのこのCDはそんな僕にハンマーよりも重い衝撃を与えてくれました。
ビートルズの後に雨後の筍のごとく出てきたビートグループのほとんどは、バディ・ホリーよりも古臭い響きの音楽だと言ってもいいくらい。
バディ・ホリーの曲を初めて聴いたのは当然のことながらビートルズがカバーしているこのCDの12曲目のWords Of Love。
しかし僕は後からオリジナルを聴いて、ビートルズのヴァージョンよりもオリジナルのほうがアレンジも音の響きも斬新だと感じました。
バラード風に仕立てたビートルズはちょっとやり過ぎ、バディ・ホリーのオリジナルの切れの良さがこの曲の魅力だと。
ビートルズがカバーしたうちオリジナルのCDを持っていて聴いたことがある曲の中で、Words Of Loveは唯一、オリジナルのほうがいいと思うし好きな曲です。
もう1曲オリジナルより前に聴いていたのがジョン・レノンがカバーした10曲目Peggy Sue。
ジョンのヴァージョンは迫力と熱気がこもりきっていて力強いですが、バディ・ホリーのオリジナルは余分な熱を取り除いたクールな響きだけど迫力は負けていない、いや、勝っている、やはりオリジナルのすごさを感じました。
曲作りがまた斬新ですね。
1曲目のThat'll Be The Dayは曲がいきなりサビから始まって後からヴァースが出てくる、途中から始まっているように感じるのは、何か気持ちが急いている気持ちを抑えきれないことが伝わってきます。
ちなみに"that'll be the day"というのは「出直してきな」「明後日来い」という意味で内容に対して曲の効果がてきめんであることが分かります。
3曲目はローリング・ストーンズでも有名なNot Fade Away、ボ・ディドリー・ビートに乗ってクールに歌うバディの声が時々ひゅっと引っくり返ります。
昔風にいえば「カマトト声」、今はなんというのかな、こんな歌い方もその後のロックでは聴いたことがない。
まあ、それをやると真似になってしまうからでしょうけど、何につけても先駆者ですね。
そういえばPeggy Sue、バディ・ホリーのオリジナルでは「あっおぅ」と引っくり返る声をジョン・レノンは恥ずかしいのかなんなのか普通の声で歌っていて、やっぱりこれは完全コピーではないので真似してはいけない歌い方なんだなって思う。
で、僕はやっぱりこの歌い方は「カマトト声」がぴったりだと思うんだけど(笑)。
そうかと思うと7曲目Rock Around With Dillie Veeは甘い声でパワフルに歌ったりプレスリー風にカッコつけて低音を交えたり、これはカッコいい。
バディ・ホリーはローリング・ストーン誌の100人の歌手で48位に入っていますが、ヴォーカリストとしても比類なき人であることが分かります。
順序が前後入り乱れて申し訳ない、6曲目Everyday、オルゴールのような優しくてノスタルジックな響きの歌と演奏、この2曲を立て続けにやられてはもう参るしかないですね。
この曲は誰のなんという曲か知らないまま多分小学生くらいから聞き知っていた曲で、CDを買ってこの曲がかかった時におもちゃ箱をひっくり返したような懐かしさに襲われました。
カバーで有名な曲を幾つか触れます。
8曲目It's So Easyはリンダ・ロンシュタットのカバーが大ヒットして1970年代洋楽の代名詞的な曲のひとつとなっています。
ビートルズのところではオリジナルのほうが好きと書いたけど、この曲はリンダのカバーはリズムを変えて落ち着かせたところにリンダのパワフルでポップなヴォーカルがのるウェストコースト・サウンドのひとつの到達点であり、オリジナルを凌駕する出来だと僕は思います。
14曲目Well...All Rightはブラインド・フェイスがカバー。
そのうちの2人、エリック・クラプトンとスティーヴ・ウィンウッドの札幌公演がいよいよ来月に迫っていますが、この曲をやってくれないかな。
この曲は僕はブラインド・フェイスを後で聴きましたが、ブルーズが大好きな人たちとバディ・ホリーというのはミスマッチ感覚が最初はあったんだけど、でもやっぱり後世への影響が大きかったのだと分かりました。
11曲目I'm Gonna Love You Tooはブロンディがカバーしていますね。
パンクシーンに影響を受けたブロンディはこの曲をうまく自分たちの色に染めているけど、でもやっぱり元の曲が持っている力がそうさせたのだと思う。
ここに並べた3組だけをみても後世に与えた影響の大きさや広さをうかがいしることができます。
バディ・ホリーの音が斬新に響いてくるもうひとつの大きな要因を書かないまま記事が終わるところでした。
ずばり、ギターの音、ストラトキャスターの音色でしょう。
フェンダー・ストラトキャスターは1954年に発売され当時はまだまだ新しい楽器でしたが、バディ・ホリーがこれを使うことによりストラトの音がロックの中に広まって行ったのでしょう。
半世紀以上経った今でもストラトはロックの音の主流といっていいギターであり、つまりバディ・ホリーの音は直接今につながっている、だから斬新に聴こえるのでしょうね。
それはバディ・ホリーの音楽自体でも感じられることで、ドラムスの叩き方など他の楽器の音は当時をしのばせるものである中でストラトの音色がまるで浮き出ているかのように響いてきます。
もうひとつ、ヴォーカルのダブル・トラック録音を既にこの時代に取り入れていたのも新しく響いてくるところでしょう。
ただしダブル・トラックは今は時代遅れとみなされることもあるようですが、でも、ビートルズが得意だったように1960年代に直結した音作りのひとつでもあります。
まさにロックの伝説、それがバディ・ホリー。
1959年、わずか22歳にして夭逝してしまったバディ・ホリーが、あと10年、いや、あと5年でも長く生きていれば、ロックの歴史はもう少し違ったものになっていたかもしれません。
ビートルズと夢の共演を果たしていたかもしれない。
いや、それ以前に、ビートルズが出る幕がなかったかもしれない。
このCDは大学時代に買ったのですが、同じものの輸入盤が一昨年ブックオフで500円であったので買い足して以降車に積んであり、時々聴きたくなった時に聴いています。
今回の知床遠征でも突然聴きたくなって聴きましたが、バディ・ホリーはドライブに合うんですよ。
しかも、十勝や道東の広い風景の中で聴くとなぜかとってもよく響いてきます。
どちらかというと都会的な音楽でありルックスであるんだけど、これは不思議なことです。
ともあれ、知床で聴いたことが今回記事にしようと思ったきっかけでした。
バディ・ホリーは大好きです。
ビートルズ絡みの話をもうひとつすると、バディ・ホリーの曲の版権をポール・マッカートニーが所有しているという話は高校時代から知っていて、それも、単純な僕がバディ・ホリーを大好きになったところではありますね(笑)。