POTATO HOLE ブッカー・T | 自然と音楽の森

自然と音楽の森

洋楽の楽しさ、素晴らしさを綴ってゆきます。


自然と音楽の森1日1枚-CDOct19BookerT


◎POTATO HOLE

▼ポテト・ホール

☆Booker T.

★ブッカー・T

released in 2009

CD-0158 2011/11/13


 ブッカー・Tのソロとしては6枚目のアルバム。


 僕の最近の密かな愛聴盤がこれです。


 ブッカー・Tはいわずとしれたブッカー・T&MG’sでスタックスの数々のソウルの名曲のバックを務めてきた伝説のバンドマン、キーボード奏者。

 かつての仲間のスティーヴ・クロッパーの今年の新譜は8月に記事にしていたので、少し遅れて当BLOGに登場といったところでしょうか。


 このアルバムは全曲がインストゥルメンタルです。

 となると歌好きの僕はつまらないと思いがち。

 実際にこのアルバムの存在を知ってウィッシュリストに入れてから買うまで1年以上を要したのは、その部分が引っかかっていたからです。


 ギターにはなんとニール・ヤングを迎えています。

 それも最初から知っていて、ニール・ヤングが参加していれば1曲でも即買い候補なのですが、でもやっぱりインストゥロメンタルということですぐに買おうとは思わなかった。

 歌がないことにかなり抵抗が大きかったようです。

 

 それでも買ったのは、スティーヴ・クロッパーを買ってよかったその勢いでしょうか。

 はっきりいえば何も関係ないんですけどね、今は一緒にやっているわけでもないし、本人たちはそんなこと言われてもというところでしょう(笑)。


 聴いてみるとしかし、僕にはよくあること、知ってすぐに買わなかったのはなんでと後悔のような念が。


 とっても素晴らしい!


 まるでブッカーのハモンドオルガンやニールのギターが言葉を語りたくてしょうがない、そんな風に聴こえてきました。

 人間の声がないというだけで歌心はたくさん詰まったアルバムだと感じました。


 1曲目Pound It Outのイントロの高らかに鳴り響くキーボードからしてもうまるで歌。

 ニール・ヤングのギターはいつも通りザクザク切り込んでくるし、体が突き動かされ揺り動かされる響きでこれは最初から心を掴まれます。


 ブッカー・Tとニール・ヤングとバンドの醸し出すグルーヴ感がまたいいですね。

 あうんの呼吸でもなく、どちらかがどちらかに合わせているだけという感じでもなくて、なにかこう、やってみるとなんだか分からないけど自然と息が合い波長が合ってしまったという感じですね。

 サッカーでいえば、パスを出す選手Aとパスを受ける選手Bがまったく別に動いていた時に同時に前を見たところに穴があって、アイコンタクトをするわけでもないけどそこに自然とAからパスが供給されBが受けてシュートを打ったという感じ。

 やってみなければ分からないけど、やっている人間は確かに感じる共通感覚みたいなものでしょうか。

 

 そのグルーヴ感で歌心がある旋律と切り込み鋭いギターがどんどんと繰り出されてきて、とにかく頭が、体が、無条件で反応してしまいます。

 楽しいですね。


 しかも楽しい以上のことは何もない、そこにあるのは音楽でしかない、というのがまたいい。

 

 歌詞がないので聴く人各自で想像しながら聴けるのも楽しいですね。

 曲名を見ながら、これはラブソングかな、これは元気な時の曲、これはしっとりとした曲と想像しながら聴くのは楽しいです。

 そうなんですよね、言葉がないだけ想像の部分が刺激されてそれもいいところでしょう。


 だけどそれにしても歌心がある曲ばかりで、才能がある人なら旋律に合わせて歌詞が浮かんでくるんじゃないかな。


 何より本人たちが楽しく作ったことがまっすぐに伝わってきます。

 録音は曲順通りに行われたわけではないでしょうけど、僕はこのアルバムを聴いて、最後の曲が終わったところでニール・ヤングが笑いながらギターのストラップを肩から外してスタンドにギターを立て、ブッカー・Tがにまずこりとしてニールの方を見ながらタオルで顔を拭くというシーンを想像してしまいました。


 それにしてもこの2人はどういうつながりなんだろう。

 そこを考えるのまた楽しい。


 とまあインストゥロメンタルのアルバムとしては僕の中でも最高に気に入った1枚となりました。


 でもやっぱり僕は基本は英語の歌がいいから、こういうのばかりを聴くという感じでもないかな。

 逆に、ずっと歌物を聴いてきて頭が多少疲れたところで、同じ頭を使うのでも脳の中の別の部分を刺激されるこの音楽が間に挟まると気持ちもやすらぎ落ち着きつつ頭は活性化される、そんなアルバムですね。

 そういうアルバムというのは今までほとんどなかった、だからこれは得難い1枚です。

 

 今から寝る前にまた聴こう(笑)。


 ところで、最後の10曲目Space Cityは最初に聴いた時にブラインド・フェイスのPresence Of The Lordのカバーかと思ったくらいに雰囲気が似ています。

 僕はここで似ていることがどうのこうの言いたいのではありません、この曲自体もとっても気に入ったし。

 

 しかし、似ているのが奇しくもというかブラインド・フェイスの曲であることが自分としては面白かったんですね。

 今週の木曜日、いよいよ、その中の2人のコンサートに行くことになっているから。

 このアルバムを買ったのはコンサートに行くと決まった後だったので、なんだか前祝みたいだったというわけ。

 

 なんて、まるで個人的な戯言でしたね、失礼しました(笑)。


 最後に本題に戻って、それにしても「芋の穴」というのはなんだろう?

 ジャケットの絵からして印象的で素晴らしいアルバムです。


※本家BLOG「自然と音楽を愛する者」 

 最新の音楽の記事はこちら。

 「1970年代ロックの傑作を10曲決めてみた」