◎I WAS WALKIN' THROUGH THE WOODS
▼アイ・ワズ・ウォーキング・スルー・ザ・ウッズ
☆Buddy Guy
★バディ・ガイ
released in 1970CD-0125 2011/09/06
Buddy Guy-02
バディ・ガイが1970年にリリースしたこのアルバムは1960-64年に録音されたチェス時代の音源を集めたもので、現在のCDには2曲のボーナストラックが入っています。
最近ブルーズがほんとうにいいなと感じています。
今までも少しは、いやそこまでも至らないくらいだけど一応は聴いてきたのですが、それはあくまでも寄り道というかロックの延長線上という感じでした。
でも今はブルーズを聴きたいと自然と思えるようになっているし、ブルーズを聴くのは興味の段階を通り越して落ち着きを感じるようになりブルーズを聴く比率が高くなってきました。
バディ・ガイはすでに1枚「74歳の若者」LIVING PROOF を記事にしていてそれがとっても気に入ったのでひとまず古いもので定評があって買いやすいものを買ったのがこれです。
といって買ったのはもう三か月ほど前の6月のことで、それから常に記事にしようと思いつつなかなか気持ちのタイミングがなくて延ばし延ばしになっていました。
しかし延ばし延ばしになっていたおかげで逆に僕がこのCDをたいそう気に入っておりまたこれがとってもいいということがお分かりいただけるかもしれません。
毎日じゃないけどもう3か月飽きずに聴き続けているということになるからです。
これを聴いて、バディ・ガイはとにかく人とは違ったことをして驚かせてやろうという人なのだろうなと思いました。
バディ・ガイはギターが攻めて攻めて攻めまくり「ブルーズ界のジミ・ヘンドリックス」という人もいるくらいだという話を聞いていました。
これを聴くて、ほんとうに心がかき乱されるくらいにギターに攻められたという後味が残り、ギターが歌のバックとはこれっぽっちも思っていないことを感じました。
そのギタープレイのおかげで落ち着いて聴こうという感じの音楽ではなくむしろ若くて弾けた感じがします。
先ほど僕はブルーズを聴くと落ち着くと書きました、矛盾しますが(笑)、音楽としてはそういう感じだけどそれを聴くと今の僕は落ち着くというくらいの意味です。
驚いたのはジャケット写真で、彼が持っているギターは白のギブソンSGであること。
あまりよく知らないのにそう言うのも申し訳ないと思いつつ、SGを持ったブルーズメンというのは僕は今まで見たことがない、初めてです。
しかも白いSGはそれ自体が珍しいモデルであり、僕は他に1回しか見た記憶がありません。
その1回その人とはジャクソン・ブラウンで、2010年のシェリル・クロウとのジョイントコンサートの際に1曲目で白いSGを弾いて歌ってくれていきなり驚きました。
ジャクソン・ブラウンもまた人とは違ったことをしてやろうという思いが強そうな人だから、バディ・ガイのこのジャケットを見て白いSGを持つことの意味を感じました。
ただしバディ・ガイは主にフェンダー・ストラトキャスターを使っていてこのCDのブックレットでもストラトを持った写真があり、録音ではすべてSGというわけではないように思います。
歌メロも自作の曲は凝っているというかひねりがあるというかなんかこうありきたりの感じがしなくて、6曲目のNo Lieなどは途中から歌い始めたみたいでこの先この歌はどうなってしまうんだろうとはっとさせられます。
歌い方も伝統にのっとったという感じじゃない、じっくりとではなく何か急いて歌っているような感じがします。
うん、やっぱり悪く言えば落ち着きがない人なのかもしれない。
人と違うことをしてやろうというのは革新的ということなのでしょう。
このアルバムで繰り広げられている音楽は総合的にまさにそんな感じで、若いですね。
1曲目のWatch Yourselfに"real mccoy"という歌詞があってそれは「本物の」「最高にいい」という意味なのですが、それはあたかもバディ・ガイが自分に向けて言っているようにも聴こえます。
自然が好きな僕としては「俺は森を通り抜けた」というタイトルにもひかれます、はい、もちろん買うに及んでそこは重要でした(笑)。
これを聴いてどう森を通り抜けたのか想像してみました。
今では森林浴といえば気持ちを落ち着かせるものとして広まっていますが、この音楽は森を歩くことにより予期しなかった体験や発見があって気持ちがむしろ昂ぶっている様子が感じられます。
僕が大好きな英国ミステリ作家のコリン・デクスターに「森を抜ける道」The Way Through The Woodsという作品がありますが、森というのは何か普通ではないことが起こる場所という認識は同じかもしれません。
考えてみれば今の僕のブルーズの流れはまさにバディ・ガイの「74歳の若者」を買って聴いたことから始まっているのです。
その時はAmazonの過去の購買履歴からのおすすめで出てきたジャケットを見て何かを感じた、そう、「ひらめいた」のです。
音楽を聴く楽しみはいろいろありますが、僕はこの「ひらめき」を大切に聴いてきました。
それが当たった時はなぜか「きっとこうなる運命だったに違いない!」と自然と思えるのです。
バディ・ガイは僕の音楽人生では大切な人になりました。
さて、次はどんなブルーズを聴くかな。
ブルーズははまると深いという話だから覚悟しておかないと(笑)。