BERT JANSCH バート・ヤンシュ | 自然と音楽の森

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自然と音楽の森1日1枚-June28BertJanschBJ


◎BERT JANSCH

▲バート・ヤンシュ

☆Bert Jansch

★バート・ヤンシュ

released in 1965

CD-0088 2011/06/28

Bert Jansch-03


 バート・ヤンシュのデビューアルバム。


 昨日の記事で登場したスティーヴ・ウィンウッドの後を受けて最近CDを買い集めて複数のアルバムを聴いて凝っている人がバート・ヤンシュ、記事にするのは早くも3枚目。


 前回のROSEMARY LANEで書いたように歌はあくまでも曲の一部で歌だけが目立つのではない、聴かないことを積極的に選びたいような気分の時でも聴きたい音楽であるという印象は変わりません。


 ただ、今回はもう1枚初期の頃のアルバムを一緒に買って聴いたのですが、ROSEMARY...で感じたようなクラシック的要素がこれとそれにはほとんどなくて普通のトラッドです。

 トラッドというか彼はスコットランド出身ということでスコティッシュ・フォークに分類されるようですが。

 ROSEMARY...を先に聴いてしまったがためにバート・ヤンシュの音楽性の基本はその辺りなのかなと思ったのですがどうやらそうではなくあくまでもフォークでありそのアルバムがむしろ音楽的な幅を広げて作ったというところかもしれません。

 今回買った2枚を聴いてだいぶ印象が違うなと少し驚きました。


 ただ印象が違うとはいっても大勢に影響はなくて、彼も参加したペンタングルと比べるとペンタングルは女性ヴォーカリストがいるだけに完全に歌が中心で演奏は力強いバックといったところで明らかな違いを感じ取ることができます。

 

 このアルバムは穏やかというよりは少し粗っぽく力強い部分があってバート・ヤンシュも声を荒らげて歌ったりギターの音もまろやかという感じではありません。

 ジャケットのバートを見ても、全身黒の服装に体を斜に構え挑発的な表情でカメラを睨んでいるモノクロームの写真というところに挑戦的な姿勢をうかがい知ることができます。

 なんせデビューアルバムですからね。

 伝統的なフォークを新しい感覚で聴かせてやろうという意気込みだったのでしょうね。


 それはほぼ100%達成されていると感じます。


 これを聴くと伝統的なフォーク・トラッドではなくこのアルバムより後の時代のロックにイメージがつながってゆきます。

 例えば近いところではレッド・ツェッペリンから少し遠くてドゥービー・ブラザースなどのフォークサイドの曲の音の強さはバート・ヤンシュがいたからこそロックとフォークが自然に溶け込むという発想に容易に持っていくことができたのではないかとすら思います。

 

 だからバートも力強く歌っているのでしょうね。

 時々音程が外れたり発声が不安定だったりするのですがでもそれは自然の成り行きとして音楽全体に溶け込んでいて決して音楽を壊しておらず不思議なくらいに気になりません。

 9曲目のDo You Hear Me Now?では焦るようなアップテンポの曲で特に強く歌う曲ですがいったいどうしちゃったんだろうというくらいの迫力ある歌を聴かせてくれてアルバムの中でもよいアクセントになっています。

 8曲目のNeedle Of Deathは反対に穏やかに何かを包み込むように歌っています。

 11曲目のRunning From Homeも淡々と訥々と歌うところに自然な感興を感じます。

 バートはもちろん自分の声がどういうものか分かってのことだと思うのですがそういう音楽は僕は初めてです。

 バートは声もまたいいんです。

 そして演奏は少し攻めていてもどこか穏やかな部分を失わないのはその声があるからでしょう。

 総じて自然に響いてくる音楽で、だからいつでも聴けます。


 ヴォーカルがない曲では本編最後のAngieがWork Songの旋律を採り入れた力強いシャッフルでどうにもカッコいい曲ですね。


 そして「自然と音楽」BLOGとしてうれしいのが5曲目にFinchesという曲があることですね。

 1分に満たないインストゥルメンタル曲ですがフィンチはダーウィンの進化論にヒントを与えた鳥でありごく身近なところではフィンチの仲間のカワラヒワが毎日庭に来ているおなじみの鳥が曲になっているのはほんとうれしい。


 ロックミュージシャンが演奏したフォーキッシュ曲やアンプラグドものではなく本当のフォークを聴いてみたいという思いは僕も昔からあったのですが、バート・ヤンシュを聴いてようやくそこにたどり着いた気がしています。

 存在は知っているけどまともに聴いたことはなかったいわばエアポケットのような人でした。

 このところバート・ヤンシュに凝っているのは自分にとっては未知の世界でありそれが見つかったことがうれしいのです。


 

 さて、ギター弾きの端くれとしてはやっぱり、バート・ヤンシュを聴くとこんな風にギターを弾けるようになりたいと思いますね。

 「無理だろうなあ」ではなく「弾きたい」と思うだけ僕はまだ気持ちが若いのかな、と自分がうれしくなったりもします(笑)。