◎McCARTNEY II
▲マッカートニーII
☆Paul McCartney
★ポール・マッカートニー
released in 1980
CD-0078 2011/06/18
Paul McCartney (& Wings)-002
本日6月18日はサー・ジェイムズ・ポール・マッカートニーの誕生日です!
今年で69歳、ポールおめでとう!!
僕は本家BLOGでは毎年この日はポールの記事を上げていますが、こちらの音楽BLOGでは今年が初めてということになります。
数字を覚えるのが苦手な僕ですが、なぜかポールの誕生日だけは毎年数日前にはっきりと思い出すのです(笑)。
ポールのカタログ版権がUniversal傘下のHear Musicに移りましたが、今月おそらくポールの誕生日がめやすなのか第2弾としてMcCARTNEY、McCARTNEY IIの2枚がリリースされました。
今回も僕は豪華限定盤を予約していますがそれらの発売日はまだで届いていないので、先に届いた2枚組盤を聴きながらIIを記事にしました。
僕は最初はポール・マッカートニーが嫌いでした。
ビートルズを聴き始めたきっかけがジョン・レノンでありジョンの生前最後のインタビューを読んでいたせいもあり、おまけにビートルズを一緒に熱心に聴いていた中学のクラスメートで今でも友だちであるO君がポールが大好きだったので、張り合うように僕はジョン派になりました。
しかしそれ以前に僕がポールに悪いイメージを持ったのは、来日した際に麻薬不法所持で逮捕された事件でした。
僕は小学校6年生で社会科が好きだったのでその事件により「ポール・マッカートニーは悪い人」というイメージが固まりました。
当時は洋楽を聴いていなかっただけ余計に。
さらにそのイメージを映像として僕の頭に固着させたのがこのアルバムのジャケット写真でした。
小学6年生当時住んでいた家の近くの東京都台東区の「いろは商店街」にあったレコード店の店頭にこのLPの宣伝用ポスターが貼られていて、僕は毎日前を通りながらその写真を眺めて「悪い人だ」と思っていたのです。
実際にこのジャケット写真は留置場にいるイメージで撮影されたという話だから実はそれは的外れじゃないイメージだったのですが、逆にいえば子どもにも伝わるポールの表現力はさすがというべきか。
ポールの中でも最も悪そうな顔つきの写真ではありますよね(笑)。
もちろんビートルズを真剣に聴き始めてからは悪い人というイメージほぼなくなり、ポールに対しても僕自身の思い出に対してもまあそれは若い日のちょっとした過ちと思うようになりました。
そして今はジョンもポールも同じくらい好きですよ。
多分ビートルズが好きな人の中でも僕くらい2人がイーヴンな人は珍しいんじゃないかというくらいにジョンもポールも同じです(笑)。
このアルバムは1970年代をウィングスの「いちメンバー」として過ごしたポールが10年振りに作った「ソロ」アルバム。
ビートルズ解散のきっかけともいえるMCCARTNEYから10年一区切りでタイトルもシンプルにIIとしたのでしょう。
ほとんどひとりですべての楽器を駆使して録音した実験的な内容という点でもこの2枚は共通点があります。
その10年で音楽が大幅に進歩したわけですが、周りでやっていることをひとまず自分でもやってみないと気が済まないポールのこと(笑)、このアルバムも新しいサウンドに満ちています。
そしてシンプルな中にアイディアで手を施すというビートルズの基本がここではいかんなく発揮されていてとにかく面白い音楽になっています。
このアルバムのもうひとつの「特徴」ともいえるのが、全体的に音がこもっていてスカッと抜けた感じがしないことです。
僕はこのアルバムはCDの時代になって初めて聴いたのですが最初はなんだこれっと真剣に思いました。
このサウンドプロダクションは好き嫌いが出ると思います。
Coming Upはポールの傑作、快作、モダンだけど懐かしい響きの曲。
シンプルで面白くかつ深いアレンジがとにかく最高に楽しい上に歌メロもよくて僕が口ずさむことがきわめて多い曲。
1980年当時にロックンロールの新しい魅力を見せつけ、ロックンロールは死なないことを高らかに宣言した上に、パンクのようにそれまでのことを壊すのではなくむしろのっとりながら新たなロックンロールを聴かせることができたという点においてこれはロックンロールの歴史の中でも極めて重要な曲だと僕は思います。
ビートルズ時代のポール役も含めポールがひとり10人くらいのミュージシャンに扮したビデオクリップも最高。
おまけにこの曲は歌詞も素晴らしく、歌詞としてもポールの最高傑作のひとつに挙げられるでしょう。
ジョン・レノンの生前最後のインタビューでポールについて質問されたジョンは「この曲で彼はいい仕事をしている」と語っていました。
やはりロックンロールの魂はジョンにも素直に伝わったのでしょうね。
そしてジョンは歌詞がいいこともうれしかったに違いない。
Temporary Secretaryの歌い出し。
「ねえマークスさん、誰かいい子を探してくれない? 強くてかわいくて僕の膝にぴったりくる子をね」
ポールも結構スケベなんだってこの曲を聴いて思いました。
ここではテクノに挑戦、僕はよく知らないけど後のハウスやクラブというやつかな。
テクノ風の無機質なサウンドだけどどこか温かみを感じます。
途中のお経のように歌う部分とそこだけなぜか前に出てくるポールの喋りと怒ったような喋りが印象的。
ポールどうしちゃったの?という曲ではあります。
On The Way、ポール・マッカートニーはブルーズを感じない人ですよね。
これは曲相としてはどう聴いてもブルーズでギターソロもブルーズを意識したなかなか巧いものだけど、ポールがのほほんと歌うとまるでブルーズではない。
まあ少年時代のまだビートルズ前のポールは自分のそんな特性に気づいてその後は多分意識してブルーズから離れていったのではないかと推察します。
そしてビートルズの人気が出たのはブルーズやソウルといった黒人音楽の要素にフィルターを通して聴きやすくしたからであってこれはそのことが確認できるという点で意味がある曲。
Waterfalls、ポールお得意のバラードだけどでもなにかちょっと感じが違う。
演奏が緩くて音的にかっちりしたところがなく、曲自体にもめりはりがなくなんとなく進んでいく。
ポールらしさとらしくなさが同居している感じの曲。
なんとなくトラッドの香りが強くそしてどことなく寂しげ、孤独感が漂う。
この曲も歌詞が素晴らしい。
歌詞にも出てくるホッキョクグマをスタジオに持ち込んだビデオクリップも印象的。
Nobody Knowsはとにかく楽しい曲。
ポールには珍しい3コードのブルーズ形式のシンプルな曲にアレンジだけでこれだけ楽しく聴かせてしまうのはさすが。
ポールのすっとぼけた歌い方も面白いし高音で鳴るギターはジャズのような古くさい雰囲気。
そして歌メロの部分はよく聴くと1小節挟まった13小節で進んでいてにやりとさせられる。
Front Parlour
華やかで軽やかな響きのインストゥルメンタル曲、まるでおもちゃですね(笑)。
Summer's Day Song
これはスコットランド風のたおやかなバラードで、BACK TO THE EGGのバラードのメドレーを1曲持ってきた雰囲気。
さすがに英国の夏は日本よりも涼しげに響いてきますね(笑)。
Frozen Jap、僕たち日本人にはつらい"Jap"という蔑称を用いているけどまあポールはなにかにつけて正直な人だから仕方ない。
日本の拘置所での体験にインスパイアされたインストゥルメンタル。
日本といいながらもどこかしら中国風の響きなのは・・・
Bogey Musicは思いっきりオールドスタイルのスウィングするロックンロール。
曲のスタイルもギターの音色もやっていることは古くさいんだけど全体のサウンドが斬新に聴こえるまさにポールの魔術。
ポールのヴォーカルがエコーというよりズレて歌っているのが聴いていると頭の中が混乱してきます。
またポールはドラムスもうまいことが分かりますね。
このボギーというのは日本で逮捕されたのは「余計な1打」という意味かな・・・
Dark Room、「暗い部屋」つまり牢獄、これもポールの日本での拘置所シリーズ。
その通り何か押し殺されたような窮屈な響きの曲で、ポールも声を絞り出したり情けを乞うように裏声で喋ったりなにかちょっと聴くのがつらくなる時がある曲ではあります。
まあしかしそのよなマイナスの体験をプラスに変えてしまう力にポールはやはりよい意味でしたたかな人だなと実感します。
僕はこの曲を聴くと「スネークマン・ショー」を思い出しさらには中学時代にFMで放送されエアチェックした渋谷陽一の番組でのポールのインタビューも思い出します。
ポールが日本の拘置所での経験を話していて、隣にいた日本人男性と片言でコミュニケーションをとった際の話で面白いので紹介します。
ポールは「スズキ、カワサキ」と知っている日本語を話すと隣の日本人男性が「マギタッチャ」と言ったのですがポールはそれが何のことか分からない。
何度か聞き返して考えたところそれは当時の英国の首相で鉄の女と呼ばれた「マギー・サッチャー Maggy Thatcher」だと分かったという話が印象的でした。
日本語には"th"の発音がないので伝わらなかったのでしょうね。
人間力が大きいポールにはこれも単なる通過点のひとつでしょうね。
なんにしてもポールは表現力あふれる人です。
One Of These Days、最後はポールお得意のアコースティック小品系のバラード。
とてもいい曲なんだけどこれがしんみりと寂しくなってしまう。
リンダさんのコーラスも同情しているようにさらっと添えているしなによりポールの歌い方が不安げ。
今回のCDはDisc1は本編だけで終わるのですがこの曲が最後だとなにか不安になってしまう。
以前のCDはボーナストラックがあってB面曲などが入っていてそれは楽しい曲だっただけ余計に今回はそう感じました。
このアルバムは日本絡みの件もあってそれほど人気が高いわけでもないかな。
僕は普通に好きですけど。
最後に今回の2枚組のボーナスディスクに収録されている曲が豪華なので少し紹介します。
Coming Up (ive at Glasgow)ヴァージョン、アメリカではこちらがシングルカットされてNo.1に輝いています。
以前のCDにボーナストラックとして収められていた2曲。
Check My Machineはファルセットというか素っ頓狂な裏声で単調な曲を変わった音と演奏で歌い続けるだけなんだけどこれがまた面白くて引き込まれてしまう不思議な曲。
もう1曲のSecret Friendのフルレングスヴァージョンでは多分ポールで初めて単独で10分を超えた曲でこれまた同じように楽しく聴ける曲。
先ほど書いたように以前のCDでは寂しげな曲の後でこの能天気な2曲があって救われたと思ったものでした。
だからボーナストラックも善し悪しですね。
そしてもう1曲Wonderful Christmastimeのエディットヴァージョンが入っているのはうれしいですね。
毎年クリスマスに聴きたくなるのにこの曲はなぜかベスト盤などには収録されておらず、ポールの中では
いまいち中途半端な存在になりかけているのが残念なところ。
というわけで今は僕も半年遅れ、もしくは半年早くクリスマスソングを聴いていますよ(笑)。
あらためてポールおめでとう!
来年もBLOGを続けていればもちろん6月18日はポールの記事を上げます。
だけどふと思った。
来年、ポールも70歳か。
今日は誕生日だから特別、最後に犬たちとのCD写真をもう1枚、豪華2枚にてお届けします!