◎WITH THE BEATLES
▲ウィズ・ザ・ビートルズ
☆The Beatles
★ザ・ビートルズ
released in 1963
CD-0075 2011/06/15
The Beatles-002
ビートルズのセカンドアルバム。
遠征でお休みしていたこのBLOGも5日振りの再開です。
節目ともいえるこういう時にはやはり基本のビートルズ(笑)。
ビートルズにとって2枚目のこのアルバムの大きな意義は「ロックとしての表現手法を確立したこと」でしょうか。
それまでのどんな音楽とも違う響きの音楽が定着し普及するきっかけとなった「ロックの音」をデビューわずか2枚目で確立した偉業ともいえるアルバム。
このアルバムはオリジナル8曲とカバー6曲で構成されていますが、オリジナルにはシングルヒットした曲がありません。
当時はアルバムとシングルを完全に分けて考えて臨んでいたようでそうせざるを得なかったというのが実状でしょう。
一方でカバー曲には全米No.1になった有名な曲もあるなど、曲としてはむしろカバーのほうが印象が強い曲が並んでいます。
しかし既成の曲をビートルズが演奏することでビートルズというバンドのそれまでとは世界が違う表現力の新鮮さと凄さを感じることができたのではなかろうか。
メンバーかジョージ・マーテインかブライアン・エプスタインかはたまたレコード会社のお偉方さんか誰が考えたのか、そこに着目させるために敢えてシングルヒット曲を入れなかったのではないかと邪推もしてしまうほど。
実際にカバー曲のオリジナルを聴き比べるとオリジナルがいかにも古臭く感じるけどビートルズのカバーは時代を超えてもはやビートルズにし聴こえません。
もはやこのアルバムはまったく新しい時代体験だったのではないかと想像してやみません。
カバー曲について先に収録順に話すと、Till There Was Youは今聴くとポールらしい曲だけど当時はまだポールにオリジナルでこうした曲を用意することができずにカバーで自分の理想のスタイルを歌ってみた。
そして自分たちの色に染めきってしまったセンスとしたたかさが光ります。
このアルバムで僕がいちばん好きな曲はこれかな。
Please Mister Postmanはマーヴェレッツの全米No.1ヒット曲を印象が薄まらないうちにカバーして早くもオリジナルを凌駕してしまったという印象。
B面に行ってRoll Over Beethovenはスマートなアレンジにジョージが歌ったことで癖が出てもはやチャック・ベリーではないビートルズ以外の何物でもない世界になっています。
You Really Got A Hold On Meはジョン・レノンが作詞家として尊敬するスモーキー・ロビンソン&ザ・ミラクルズの代表曲でジョンの強いヴォーカルがスモーキーとは毛色が違うけどもうこれももはやジョンの歌。
この曲はジョンとジョージ・ハリスンが唯一ヴォーカルを分け合っている曲ですが面白い話があります。
僕が海賊盤に凝っていた頃に聴いたスウェーデンの1963年か1964年のコンサートの海賊盤CDだったかな、この曲を歌っていたジョンは1番の歌詞の"No-oh-oh,you treat me badly"の部分を2番の"No-oh-oh,you do me wrong now"と間違って歌いジョージと合わなくなってしまいました。
それでは面白くないと思ったのかジョンは2番で機転を効かせて本来の2番の歌詞ではなくまだ出てきていない1番の歌詞を歌いました。
しかしジョージと意思疎通をしたわけではないのでジョージは通常通りに2番の歌詞を歌いそこでまた2人が合わないという事態に。
ところがこれ聴いているとジョージのほうが間違ったという印象を受けるんです。
ジョンは堂々と歌っている上に声が大きく一方でジョージはまだ自信がいまひとつくらいの声だから。
とまあジョンの押しの強さが分かる上にちょっと微笑ましい話でした。
この曲は最近カバーをよく聴きます、真の名曲ですね。
Devil In Her Heartはカバー曲におけるコーラスワークのひとつの到達点でしょう。
ジョージがリードヴォーカルをとっているのでジョンとポールの遊びが生きてこんなにも素晴らしいコーラスになったのでしょう。
彼らはオリジナルを聴いてこんなコーラスをやってみたいというイメージが浮かんだんでしょうね。
ジョージのヴォーカルも見過ごされがちだけど既にいい味出してるし。
そうだこのアルバムはジョージが4曲でリードヴォーカルをとっていてこれは2枚組以外では最多、そうかこのアルバムはジョージがヴォーカリストとして成長した1枚でもあるんだな。
Money(That's What I Want)はジョンのヴォーカリストとしての凄味をアピールするのに最適な選曲ですね。
曲は古くさいけどセンスは新しい、ビートルズのこのアルバムにおける到達点がよく分かります。
ではオリジナル曲に魅力がないかというともちろんそんなことはない。
確かにシングルヒット曲のようなパンチ力には欠けるかもしれないけど作曲家としての伸びしろを感じる味わい深い曲が並んでいます。
It Won't Be Longは当時ギリシアのなんとか風などと評論家に言われたものの本人たちはまったく覚えがない。
どこか異国風の変わった響きに聴こえたのでしょうね、若さが弾けているのに余裕を感じる曲です。
All I've Got To DoはオールドスタイルにR&Bを焼き直すことで新しさを出したかった。
ヴァースの部分で裏打ちで高音で鳴り続けるジョンのギターがいい響き。
All My Lovingはジョンが後に「くやしいけどポールの曲さ」と語ったまさに誰にも愛されるいとおしい曲。
Don't Bother Meでジョージ・ハリスンは晴れて作曲家としてのデビュー。
最初の割には歌メロがいいし既に彼らしく曲が凝って(ひねくれて?)いる。
ただしアルバム制作にじゅうぶんな時間がなくて運良く使われたという面もあるのかもしれないですね。
実際次の2枚のアルバムにはジョージが作った曲がないですし。
まあともあれ大きな足跡で僕は結構好きでよく口ずさみます。
Little Childはジョンが「アルバムの埋め草」と語ったけどR&Bとして悪くないしアルバムにはそういう曲も必要。
Hold Me Tightは激しく動く低音のギターがとにかく印象的でギターで弾いていても楽しいったらありゃしない。
高校時代に友だちが「これはハードロックだ」と言っていたけどまさにそんな感じ。
曲は優しいけど。
これはまたキィがFで低音弦を動かすので運指が少し難儀なんだけど何度チューニングを半音下げて開放弦を混ぜて弾きたいと思ったことか。
しかしそれ以上にその通りに弾けるととっても気持ちがいい。
このアルバムのオリジナル曲ではこれがいちばん好きかな。
I Wanna Be Your Manはローリング・ストーンズに「プレゼント」した曲で彼らの前でジョンとポールがささっと書き上げたのを見て「グリマー・ツインズ」もやる気になったのだとか。
ビートルズではリンゴ・スターが歌っていますがハードだけどとぼけた感じがいいですねこれも大好き。
Not A Second Timeは玄人筋、ミュージシャン受けする曲ですね。
「抱きしめたい」がゴスペルの影響があるとするならこれはもっとそれを強く感じて或いはそこが玄人受けする部分なのかもしれない。
もちろん、とこの場合は言わないのか(笑)ともかく僕も大好きだけどジョンのこうした歌のいいところは自分で歌っていて自己陶酔できるところですね。
自分がカッコいいと勘違いしてしまいます(笑)。
というわけで14曲を極力短くさらっと触れてみました。
このアルバムの個人的な思いを最後に話すと、今となっては自分にとってのソウルへの入り口だったということです。
スモーキーは今ではすっかり愛聴するアーティストになりましたしモータウンももちろん大好き。
ロックを通して素晴らしいソウル系の曲をたくさん聴いて育ってきたわけですが、大人になってそれらを聴くとなんだか感慨深いものがあります。
ただ、ここまで来るのが遅かったかなと思う面もあるにはあるのですが(笑)。
そしてもちろんビートルズは新しい解釈でカバー曲を歌っていますが基本にあるのは素晴らしい曲を作った先達への尊敬の念と愛情に違いありません。
ビートルズが表したその思いを僕らより若い世代さらにはもっと若い世代が聴き継ぐ。
こうして音楽はつながってゆくのです。
素晴らしいことですね。
そしてビートルズが次に迎えた局面はオリジナル曲の強化でした。
なんて続きそうな勢いでしめましたが次のビートルズのアルバム記事はいつかな(笑)。
※ひとまず次の遠征までひと月ほどはまた毎日上げ続けてゆきます。
よろしくお願いします!