GOING BACK フィル・コリンズ | 自然と音楽の森

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洋楽の楽しさ、素晴らしさを綴ってゆきます。

自然と音楽の森1日1枚-June06PhilCollins


◎GOING BACK 

▲ゴーイング・バック

☆Phil Collins

★フィル・コリンズ

released in 2010

CD-0070 2011/06/06


 フィル・コリンズ8枚目のスタジオ録音によるアルバムはほとんどモータウンで固められた60年代の曲のカバー集。

 昨日のローリング・ストーンズからのチェインリアクションで聴きました。


 ベテランのカバーアルバムはこのところほんとうに多いですね。

 僕は楽しみな部分とがっかりな部分の比率がアーティストやどんな曲を歌うかの内容により変わってきます。

 フィル・コリンズのこれは最初はがっかり度が高かったけどモータウンのカバーと分かって期待度が大反発して9割くらいにまで達しました。

 

 最初はフィル・コリンズとモータウンと一瞬だけ思ったけどすぐにYou Can't Hurry Love「恋はあせらず」の大ヒットを思い出しました。

 僕がフィル・コリンズという人を初めて見て知ったのがその曲でしたから。

 そんな意味でも届くまでの期待が高かった1枚でした。


 このアルバムを聴くとこれがとってもいい、ある意味予想以上に!


 モータウンがあらためて多くの素晴らしい曲を作ってきたことはもはや再確認するまでもないでしょうけど、それらの曲を僕が10代の頃から聴きなじんできたフィル・コリンズがいわばロック的な姿勢で歌ってくれるところが僕にはすぐにすっと気持ちの中に入ってきた部分です。

 でもだからソウルっぽいかというとそういうことはあまりなく、だからそういうフィーリングを求めて聴くとこれは冷たいと感じるかもしれません。

 聴くにあたって邪魔になることがある個人の思いが排され張り詰めた空気の中で曲が進んでいきます。

 しかし楽しくないのかといえばまったくそんなことはなく聴いてゆくと自然と楽しくなります。

 そこは長い間エンターティメントの世界の身を置きツボは押さえている人だから心配ありません。


 これは車で聴くととってもいいアルバムですね。

 25曲77分あって長いだけ余計にありがたくいい曲がどんどん流れてくるラジオのような感覚になります。

 そもそもモータウンの音楽が車で聴いて楽しいものを目指していたのでこれはフィルの狙い通でしょう。

 しかしうかつなことに僕があるいみ予想以上と書いたのはこんなにまでも車に合うということはまったく想定していなかったからです。

 アルバムとして通して聴いて初めて意味が分かるとかそういう小難しいこともないし純粋に楽しめる。

 そしてアルバムとして聴く必要もないからCDが終わるまでに目的地に着いてまた出発する時にそこから聴き始めても一向に差し支えない。


 ほんとに大好きなCDになりました。

 どうせなら2枚組150分くらい聴かせてほしかった(笑)。


 何曲か拾い上げて話します。

Tr2:(Love Is Like A) Heatwave

Tr6:In My Lonely Room

Tr16:Jimmy Mack

Tr22:Nowhere To Run

Tr24:Dancing In The Street

 このアルバムで最初に思ったのはマーサ&ザ・ヴァンデラスの曲が多いことでしかも彼女たちの代表曲を網羅しているのはマーサお姉さまに夢中になっていた少年時代のフィル・コリンズを連想させて楽しい部分です。


Tr5:Ain't Too Proud To Beg

 ローリング・ストーンズの昨日の記事で取り上げたアルバムでこの曲を歌っていることを「再発見」してすぐにフィルのこれが頭に浮かんで聴きました。

 この曲はストーンズよりテンプテーションズのオリジナルに近いアレンジのフィルのバージョンのほうが好きです。


Tr7:Take Me In Your Ars (Rock Me For A Little While)

 ああこれはドゥービー・ブラザースの曲じゃなかったんだ・・・

 僕がテレビで初めて見て聴いたドゥービーの曲がこれだったので余計に思い入れが強くて驚いたと同時に自分の不勉強が・・・


Tr8:Blame It On The Sun

 スティーヴィー・ワンダーのアルバムの中の1曲だけどフィルの感情がこもっていない冷ややかなヴォーカルがこの曲には合っていますね。

 元々好きな曲だったけどフィルのこれを聴いてこんなにいい曲だったかと思いました。


Tr9:Papa Was A Rolling Stone

 そして僕が選ぶこのアルバムのベストはテンプテーションズのこれ!

 フィルの冷ややかでぬめっとしたヴォーカルがこの曲の不気味さや不条理さを見事に表していて聴いていて恐くなり背筋が寒くなるほどです。

 演奏も鋭い。

 そしてフィルは音楽にのってくると熱くなるのではなくむしろ冷ややかになる人なんだ、だからこのアルバムは冷ややかだけど楽しいと感じるんだとここで納得しました。


Tr4:Some Of Your Loving

Tr10:Never Dreamed You'd Leave In Summer

 今回は知らない曲のほうが少なかったのですがこの2曲は知らない中では最も気に入りました。

 どちらもTr8、Tr9と同じくひんやりとした感触の少し寂しい響きのバラードでフィルのヴォーカルの持ち味はこのへんにあるんだなと再確認しました。

 

Tr14:You Really Got A Hold On Me

 フィル・コリンズはあの「ビートルズがやって来るヤァ!ヤァ!ヤァ!」にエキストラで出ていたんですよね。

 この曲を歌ったのはその思いがあったのかな。

 それにしてもこの曲をカバーする人は多いなあ。


Tr3:Uptight (Everything's Alright)
Tr20:Ain't That Peculiar

 フィルはマーヴィン・ゲイとスティーヴィー・ワンダーについてはその人を代表するほど有名な曲を取り上げていないのはなるほどと思った部分です。

 そしてどちらもアップテンポで軽やかな曲なのも偶然ではないのかも。


Tr25:Going Back

 モータウンだとずっと書いてきたけど最後はキャロル・キングの曲。

 アルバムのタイトルもここからとられているところにフィルの古い曲たちへの思いを感じます。
 冷ややかだ楽しいと書いてきたけど最後のこの曲だけ少し違って響いてきて結局アルバムとして残るものも大きい、そんなCDです。