NATURAL HISTORY JDサウザー | 自然と音楽の森

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洋楽の楽しさ、素晴らしさを綴ってゆきます。


自然と音楽の森1日1枚-June03JDSouther


◎NATURAL HISTORY

▲ナチュラル・ヒストリー

☆JD Souther

★JDサウザー

released in 2011

CD-0067 2011/06/03


 JDサウザーの新譜の記事です。

 もうほっんとうに素晴らしい!


 一昨日届いたばかりだけど曲の覚えが人数倍悪い僕がもはや記事を上げられるのにはわけがあります。

 これはカバーアルバムだからです。

 正確に言えばセルフリメイクとカバーアルバムということになりますがとにかくJDが作曲して歌った曲のリメイク及び共作も含め他人に提供した曲を自らが歌って録音した作品集です。


 演奏はJDのギターにピアノやウィンドインストゥルメンツなど楽器が2つか3つだけで演奏されたシンプルでアコースティックな響きの落ち着いた音楽です。

 こうすることにより曲が持っている力そのものを引き出そうとしているのでしょうけど、それは最大級の成功を収めていると言えます。

 コーラスも入っていないのでJDの独白をドキュメントとして聴くような生の感触が伝わってきます。


 実は僕は今回も手元に届いて見るまでこのアルバムは新曲ではなく既成の曲の焼き直しで作られていることには気づいていませんでした。

 分かったのですが僕は必ず買うアーティストのアルバムについては出るという情報に接した時点で注文してそこから先は情報を集めずに届くまで放っておく人間のようです(笑)。

 

 しかし今回はそれが分かって逆にうれしさが増しました。

 

 だって!

 

 ひとまず曲目を書き出します。


01. Go Ahead And Rain

02. Faithless Love

03. You're Only Lonely

04. The Sad Cafe

05. Silver Blue

06. New Kid In Town

07. I'll Take Care Of You

08. Little Victories

09, Prisoner In Disguise

10. Best Of My Love

11. I'll Be Here At Closing Time


 この中でなんといっても僕がうれしいのはイーグルスの3曲ですね。


 The Sad Cafeはウェストコーストサウンドの代表格ともいうべきイーグルスがニューヨークの雰囲気を醸し出したアレンジですが、ここでは生ギター中心でそうかこの曲は元々はアコースティックな響きが強く感じられる曲だったんだと。

 演奏が薄いので曲の変わり目の劇的な流れの変化をショッキングなほどまでに感じることができます。


 New Kid In Townはですね、僕が、ビートルズとそのメンバーの曲を除いたすべての洋楽の楽曲でいちばん好きな曲なのですよ。

 これだけで記事10本くらい書けるくらい思い入れが大きくて強くて深い曲ですがここではそのことだけを書いておきます。

 こちらは長くて思わせぶりな生ギターのイントロで引っ張ってやや唐突に歌い始める印象でドラマが始まります。

 メキシコ風のアレンジが施されているのですが僕はそれを聴いて「やっぱり」と思いました。

 元々が西部劇をモチーフとした曲でもあるしそういう響きが潜んでいそうな曲だったのをイーグルスは意図的に配してむしろ都会的な響きに仕立てあげていたのかなって思いました。

 ああこの曲はもっともっと語りたい(笑)。

 こちらのリンクに本家BLOGで書いた長い記事がありますのでご興味があるかたはご参照ください。


 Best Of My Loveはイーグルスが初めてビルボードNo.1を獲得した曲ですね。

 考えてみればイーグルスはNo.1になった5曲のうち3曲はJDが作曲に絡んでいるんですね。

 この曲は歌って気持ちがいい曲として世の中でもトップクラスの素晴らしく流れる歌メロが持ち味だからそこだけに焦点を当てているJDのこの演奏はまさにBestといえるかもしれない。

 オリジナルではギターの曲だけどJDのこちらはピアノ中心の大人の響きです。

 "Every morning I wake up and worry, what's gonna happen today"

 このくだりはロックの歌詞の中でも僕が特に好きな一節ですが、朝起きるということは生きていることを確認することなんだなって毎朝思います。

 この曲は歌詞がほんとうに素晴らしいです。

 歌メロもほんとに素晴らしくてもう涙が出てきました。

 そして僕はやっぱりイーグルスの歌が大好きなんだって再確認しました。


 You're The Only Lonelyはこのアレンジでも同じような感じで響いてくるのはやはり自らが歌っていたからかな。

 このアルバムでもうひとつ思ったのはJDは声が若いですね。

 昔からこういう声質なのでしょうけど何も知らない人がこれを聴くとせいぜい35歳くらいの人が歌っているようにしか聴こえないんじゃないかなって。

 彼の中ではまだ傷つきやすい青春がそのまま続いているのかもしれません。

 そんなJDの声を聴くのもこのアルバムの楽しみの一つですね。


 I'll Take Care Of Youは1984年のアルバムからの曲ですが寂しさをこらえて明るくふるまおうというJDの歌い方は心にしみてきます。

 これはしかしオリジナルより力強く響いてきました。


 他も僕が知らない曲も(覚えていないというのがより正確だけど・・・曲の覚えが悪いので・・・)あったけど、でもJDサウザーが稀代のソングライターであることを再確認できました。

 だって逆にあれはないの、あれはどうしたのという曲も浮かんでくるから。

  

 JDはこの時代に歌の持つ力を証明したかったのでしょうね。

 その衝動にかられて作り上げたのがこのアルバム。


 聴いていると演奏が薄く響きも大人しくてともすればさらりと過ぎてしまう感じもあるいはあるけど、聴き終って残るものの大きさは計りしれないものがあります。

 また先ほどはさらりと過ぎてしまうと書きましたがそれはあくまでも物理的な音の感触であって、僕はこれがかかると他の手が止まって聴き入ってしまいます。

 それはやっぱり僕が歌が大好きだからでしょう。


 「自然誌」というアルバムのタイトルもまた僕を泣かせて喜ばせてくれます(笑)。

 これはJDの歴史を綴ったものというのがそもそもの意味でしょうけど、JDはきっと自らの曲を化石になぞらえたのではないかな。

 ロックの歴史の中にぽつりぽつりと顔を出す自らの曲は一見するとばらばらに散らばっているけど、生命の進化の歴史においてそれらはつながっている。

 JDは進化の系統を見せてくれたわけです。

 このCDを聴いてまた久しぶりに進化論関係のエッセイが読みたくなってきました。


 ああそれにしても、かえすがえすもJDは作品が少なすぎる。

 それが最大の不満。

 もっともっとたくさん素晴らしい曲を聴きたい!


 でもJDは彼のペースを貫いて音楽を作り続けてきたからいい曲ばかりなのでしょうね。

 JDほど1曲1曲にこもった気持ちの大きさを感じられるアーティストはめったにいないでしょうね。