BRAVE NEW WORLD スティーヴ・ミラー・バンド | 自然と音楽の森

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洋楽の楽しさ、素晴らしさを綴ってゆきます。


自然と音楽の森1日1枚-May02SteveMiller


◎BRAVE NEW WORLD

▲すばらしき新世界

☆Steve Miller Band

★スティーヴ・ミラー・バンド

released in 1969

CD-0036 2011/05/02


 スティーヴ・ミラー・バンドの3枚目のアルバムは、1969年にリリースされたことに大きな意味があります。


 スティーヴ・ミラー・バンドの新譜が昨日発送されました。

 楽しみにしていたので早く聴きたいけど、今日はこのところよく聴いている旧譜を予習代わりに聴きました。

 新譜も早めに記事にするつもりです。


 スティーヴ・ミラーは僕にとってはまだまだ名前だけ知っているに毛がたくさん生えたくらいの人です。

 

 僕が彼と出会ったのは中3の時にAbracadabraが全米No.1ヒットとなりにLPを買ったことでした。

 当時はまだほんとうにビルボードのチャートを中心に聴き始めたばかりでその曲がただ気に入ってLPを買ってみました。

 でもいきなり中学生には渋かったようで、件の曲以外はあまりピンとこなくて、少ないお小遣いで選択を間違ったかなと思いました。

 それ以来昨年までずっと新譜を買うことはなく、旧譜も特別盤が出たFLY LIKE AN EAGELしか買っておらず、ベスト盤すら最近買ったくらいでした。

 別に中学時代の経験が後を引いているわけでもなく、簡単に言えば海外盤でリマスター盤が出ていないので買うまでに踏みきれない、だから聴いてこなかった、それだけです。

 もっとも聴こうという意欲が物欲に勝てなかったことは指摘されても仕方のないところですが。


 このアルバムはだから僕が買ったまだ4枚目の彼らのアルバムです。

 しかしこれ1枚を聴いてスティーヴ・ミラーという人がかなり見えたように感じています。


 スティーヴ・ミラーの音楽ってなんて面白いんだ!


 このアルバムは曲がとにかく面白い。

 基本的にはブルーズとカントリーの間のどこかに位置する感じの音の出し方をしていはいますが、でも形式の中に収まっておらずむしろそこから元気よく飛び出そうという意欲を持って表現しているのを感じます。

 ルーツは割とよく見える音楽だけど、一方で強烈なオリジナリティを既に感じさせる音作りに成功しています。

 かといって個性で埋め尽くしてしまわずにルーツの音楽がもつ楽しさを敷衍しながら独自性を出す、まさに温故知新の音作りをしています。

 この「すばらしき新世界」はオルダス・ハックスリーの小説から取ったのでしょうけど、ここで展開する音楽はまさにそのタイトル通り、だからある意味これはコンセプトアルバムとも言えるのでしょう。


 僕は国内紙ジャケット盤を買いましたが、そこにはこのようなことが書いてあります。

 "SUMMER OF LOVE Capitol psychedelic Collection"

 サンフランシスコから出てきた彼らは「サイケデリック」と目されていたのかな。

 僕は前にもちらと書きましたがサイケデリック系のロックが実はそれほど好きではなく単独で好きなものがあるのですが、これを聴いてサイケデリックっぽいところはあってもサイケデリックだとは感じませんでした。

 僕が鈍いだけかもしれないけど、僕にとってはいい感じのアメリカンロックで、だから安心して聴けました。

 もしかしてスティーヴはサイケだけが新しい音楽ではないと示したかったのかもしれない、と思ったり。


 かつてのアルバム至上主義者としてケチをつけさせていただけば(笑)、まだまだ曲ごとの主張が強すぎて全体としてはうまく流れていないと感じます。

 でもこのアルバムは曲がとにかく充実しているので、流れよりも気持ちを入れ替えて聴き進める、そこにまた別の楽しさを見出すことができます。

 僕は逆に、へえ、アルバムってこういうやり方もありなんだって思い直しました。


 ところで、なぜわざわざ紙ジャケット盤を買ったかというとそれにはわけがあります。

 Tr9:My Dark HourにPaul Ramoneという人が参加しているのですがそれが実はポール・マッカートニーの変名であるからです。


 ポールの1997年のFLAMING PIEには昔の約束を果たすべくスティーヴ・ミラーが参加していますが、その昔の約束を僕はまだベスト盤でしか聴いていなかったのです。

 まあポールが参加しているのが1曲だけだからベスト盤でいいじゃないかと言われればそうかもしれないけど、でもやっぱりオリジナルアルバムが欲しいですね。


 スティーヴ・ミラーはこのアルバムの仕上げにロンドンに渡りスタジオで偶然ポールと会って意気投合しセッションをして1曲録音したというものです。

 ポールはドラムスとベースとコーラスを担当していますが、聴けば一発でポールの声と分かり楽しいを通り越して涙ものの感動です。

 1969年といえばもうABBEY ROADの頃でビートルズとしては行き詰まり悩みも深かったでしょう。

 しかしここではそんなことは感じさせず気分転換うさ晴らしばかりにポールが弾けに弾けまくっていて、ミュージシャンとして久し振りに純粋に楽しんで演奏したことが感じとれてうれしいやらほっとするやら。

 もしかして「私の暗い時間」というのはポールにとってのビートルズとうがちたくなるくらい(笑)。

 そういうアルバムだからやっぱり紙ジャケで買いたいですよね(笑)。


 ポールの参加以上にアルバムとしてとにかく楽しくて、これは今年買った旧譜では群を抜いていちばん気に入り、もはや愛聴盤の仲間入りをした1枚となりました。

 どちらかというと聴く時の気持ちを選ばないのもこの場合はいいところだし、30分もない短いアルバムなのでちょっとした時間に聴くことができるのもいいところです。


 スティーヴ・ミラーは新譜も楽しみ。

 だけど、他のアルバムも少しずつ買ってゆきたいですね。

 道のりはまだまだ長いだろうけど・・・(笑)・・・ 


◎このCDこの4曲

Tr1:Brave New World

 軽快なシャッフルに乗って高らかに新たな音楽世界を宣言する力強い曲。

 でもコーラスの声がなんかちょっと疲れた感じがするのはなぜ(笑)。


Tr4:Got Love 'Cause You Need It

 アバンギャルドなブルーズで冒頭のスティーヴの素っ頓狂な声に驚く。


Tr7:Space Cowboy

 スティーヴ・ミラーの代名詞的曲のひとつ。

 バックのギターがどことなく「ずんどこ節」、でも印象に残る強い曲。


Tr9:My Dark Hour

 ポール・マッカートニーが客演した中でも極めて重要な1曲。

 タイトルとは裏腹にとにかく楽しくなりたい時に聴くと最高。