◎RESTLESS HEART
▲レストレス・ハート
☆Whitesnake
★ホワイトスネイク
released in 1997
CD-0035 2011/05/01
ホワイトスネイクの10枚目のアルバムで、ミニアルバムは含めリミックスは除いて数えたもの。
ホワイトスネイクの新譜FOEVERMOREを聴きました。
本来はそれを記事にすべきかもしれないけど、ここはひとつ「往年の」サウンドを強調して好きな人には安心して聴ける1枚かなということでまとめておきます。
ホワイトスネイクの場合「往年の」といえばおそらく1987年のWHITESNAKE「サーペンス・アルバス」の頃以降のことであって、決してそれ以前のブリティッシュ・ブルーズ・ロック時代ではないでしょう。
そのことを考えた時、今日はここで僕が大好きなこのアルバムを取り上げようと思いました。
ホワイトスネイクはこのアルバムの前か後に解散するだのやめただのいろいろとあり、僕は大好きだけど熱心に追っていたわけではなかったので、結局は出たかのかと思いつつすぐに買いました。
しかし僕はこれを聴いて驚きました。
なんだこれ、ソウルじゃないか!
断っておきますがこれは最大級のほめ言葉です。
当時はまだソウル系を傾聴していなかったですが、あのデヴィッド・カヴァデイルがこんなことやるんだって意外性に打たれて楽しくなりました。
意外性と書いたけど、元々はブリティッシュ・ブルーズの人だから、そこから時代を下ってヘヴィメタルになったのと逆の作用が働いてR&Bに戻った、そしてソウルもそこから分かれた別の流れだと考えれば何も不思議ではない、そこに僕はすぐに気づきました。
ソウルもロックもブルーズの孫みたいなものですからね。
もしかしてデヴィカヴァは今後はこういう路線で渋い音楽を聴かせてくれるのかなと僕は期待しました。
今回は1曲ずつ話します。
Tr1:Don't Fade Away
ゆったりとして音が広がる心地よさに満たされたバラードで始まり最初から意表を突かれました。
言ってしまえば演奏が強いAORという感じですが、感動的に盛り上がる佳曲であるには違いありません。
Tr2:ALL In The Name Of Love
続いて似たような感じのゆったりとした曲を歌い上げてまるでディナーショーの雰囲気。
Tr3:Restless Heart
ようやくそれらしい強い曲が出てきたけど、でもこれもハードロックではあってもヘヴィメタルではない。
Tr4:Too Many Tears
出たぁ!
マスル・ショールズ・サウンドのブラスを入れ忘れたという感じの完璧なソウル。
あ、ブラスのないマスル・ショールズはコーヒーのないクリープみたいだけど(笑)、とにかく思いっきりソウルにひたるデヴィカヴァも悪くないというよりカッコよすぎる。
ヴォーカルも上手い、力唱、熱唱、なんでもいいからほめ言葉を並べたくなる。
こういうのが出来るんだって当時はほんとうに驚き感動しましたね。
デヴィカヴァは後にソロアルバムでこの曲を再録音していますが、それはほんとうにソウルでやっぱりそうだったかと頭の中でつながりました。
Tr5:Crying
少し反省したのか(笑)、本来のホワイトスネイクっぽいメタルがかったヘヴィなブルーズ。
感想もサーペンス・アルバスのあの曲辺りを連想させられるし。
低音で動きまくるギターに痺れますね。
ところでこのアルバムの前にデヴィカヴァは喉の手術をしていたせいか、高音が以前ほどすかっと抜けなくなっているけど、この音楽にはむしろその声のほうがいいかもしれないと僕は思う。
Tr6:Stay With Me
そしてついにソウルのカバー!
ここまでやるに及んで、デヴィカヴァは間違いなくソウルみたいなことをやってみたいと思っていたと確信しました。
これはもうほんとうにカッコいいのひとこと。
録音はライヴ形式で行われ、エイドリアン・ヴァンデンバーグのギターソロのみ後からオーバーダブされたとのことで、ほんとにライヴ感あふれるスリリングな演奏。
どれだけライヴ感があるかというと、ヘッドフォーンでよぉ~く聴くと、イントロの出だしのエイドリアンのギターの音が他の楽器よりコンマ何秒かフライングしているのが分かるというくらい。
僕はこの頃はもう聴きながらギターを弾きくことも少なくなっていたけど、このギターソロは素晴らしく久し振りにCDプレイヤーを前にリモコンを持って音を拾いながらコピーしたくらい。
ソロ以外のギター全般の動きがダイナミックで心をかき乱されます。
デヴィカヴァのヴォーカルも冴えまくっていて、感情表現も豊かだし、サビに入る前の演奏がブレイクした後のはちきれ方や一度しか出てこない中間部分の最後の声が上るところなんかぞくぞくしもの。
これはポール・ロジャース的デヴィカヴァという感じがします。
このアルバムの僕のベストチューンはこれ。
車の中で疲れた時に大声で歌っています(笑)。
Tr7:Can't Go On
前の曲で取り乱された心を落ち着けるかのような優しいアコースティック・ギターの音色で始まるバラード。
しかも前の曲の最後に"I can't go on"と叫んでここにつなげる流れも最高ですね。
Tr8:You're So Fine
ロックンロールも決して忘れてはいませんからね(笑)。
Tr9:Your Precious Love
僕はこの曲を聴いて、デヴィカヴァもサム・クックが大好きなんだろうなって思いました。
だって、"Bring it on home"なんて叫んでいますからね(笑)。
デヴィカヴァが好きなヴォーカリストがポール・ロジャースであり、そのポール・ロジャースはサム・クックを敬愛していると、ヴォーカリストの線でのつながりも僕には見えました。
またこのアルバムは曲名や歌詞にもソウル的イディオム満載で、決してメタル的ではないですね。
"Angel spread your wings"なんて今までそんなこと言ってたっけ、というくらい(笑)。
真面目な話、Tr4やこれなんてソウル系の人がカバーして歌ってほしいしきっと素晴らしく輝くと思う。
なお曲はTr6以外はすべてデヴィッド・カヴァデイルとエイドリアン・バンデンバーグのクレジットになっていますが、実はそこがまたこのアルバムが凄いところで価値がある部分じゃないかな。
ソフトなソウルです、完璧に。
Tr10:Take Me Back Again
緩いブルーズを激しく歌って大きな波が出来ている曲。
これは60年代英国ブルーズの嵐の中にに気持ちが飛びますね。
Tr11:Woman Trouble Blues
あはは。
アルバムの最後はまるでソウルをやり過ぎた罪滅ぼしのようなレッド・ツェッペリン的ハードロック。
いや、ツェッペリンというよりはカヴァデイル・ペイジを自ら茶化した感じかな。
"wishing well"だの"judgement day"だの、ここにきてメタル的イディオムも多投しているのも面白い。
この曲があることにより、今回は特別に趣味でやってみました(それだけのものだよ)ということが僕には伝わってきました。
このアルバムはしかしやはり問題作というか、当時はあまり評判がよくなかったようですね。
といのはあくまでもヘヴィメタル系の人たちの間でという意味で言っています。
デヴィカヴァ本人もこのアルバムは一度はこんなことをやってみたかった以上のものではないと考えていたかもしれないですね。
この後で活動を再開するなら「サーペンス・アルバス」的な音に戻ることがレコード会社の条件であったかもしれないし。
まあそれは仕方ないことですね。
ただ、僕はこのアルバムが大好きだし、メタルっぽくないというだけで顧みられていないのはもったいない。
メタルだってロックなんだし、僕はそこはこだわりなく聴いてきました。
個人的には、ビリー・ジョエルのRIVER OF DREAMSとともに1990年代の白人ロッカーによるR&Bアルバムの傑作だと思っているくらいです。
僕が生きて音楽を聴いてゆく限りこのアルバムは最大限支持したい、それくらいの決意を持ったアルバムであると、今朝聴いて思い直しました。
さてこの後はソウルを聴くか、ホワイトスネイクを聴くか、日曜の夜はどうしようかな(笑)。