BRIDGE OVER TROUBLED WATER サイモン&ガーファンクル | 自然と音楽の森

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洋楽の楽しさ、素晴らしさを綴ってゆきます。

自然と音楽の森1日1枚-April26SimonGarfunkel


◎BRIDGE OVER TROUBLED WATER 
▲明日に架ける橋

☆Simon & Garfunkel
★サイモン&ガーファンクル

released in 1970

CD-0030 2011/04/26


 サイモン&ガーファンクルの歴史に残る名盤、彼らの5枚目のアルバム。

 そうか、たった5枚しかないのか。

 

 「明日に架ける橋」の40周年記念盤がリリースされました。
 CD2枚とDVDの3枚組で、Disc1にはアルバム本編が、Disc2には1969年のライヴ音源が収録されています。
 最近はこうしたおやじロッカー狙いの商品が増えましたね。
 まあそれに乗せられてうれしいクチなので文句は言わないですが(笑)。

 サイモン&ガーファンクルとカーペンターズ、ビリー・ジョエルそしてスティーヴィー・ワンダーは日本における「洋楽」という言葉の代名詞だと僕は思います。

 もちろんビートルズもですがビートルズはビートルズだから(笑)、なんてわがまま言わずにビートルズも含めてこの5者かな。

 なぜかというと、それらは僕が洋楽を聴くようになる前からテレビやラジオなどで聞き知った曲があったからで、音楽好きの枠を超えて膾炙していてマニア性も薄いからです。
 S&Gでいえば僕は、橋、コンドル、セシリア、サイレンス、スカボローの5曲は、自らの意志で彼らの音楽を初めて聴いた時「この曲聞いたことある」と思いました。

 他の4者についても同様に複数の曲をそうして聞き知っていました。

 S&Gのこのアルバムはひとことで言うと「S&G版音楽展示会」といった趣きで、彼らの、とりわけポール・サイモンの音楽の幅の広さや懐の深さを感じ、またそれを表現しきれるまでに成長した姿を見ることができます。

 アート・ガーファンクルも最高の歌を聴かせてくれますね。
 当時はアートが音楽以外の活動に夢中になりおくようになりポールの不満が募っていたということで、結局この後2人は別々の道を歩むこととなりました。

 ビートルズも69年に実質上最後のアルバムであるABBEY ROADを、なんとかビートルズとして作り上げて終わりましたが、本作とともに、ひとつの時代の終わりを象徴していたわけですね。
 奇しくもどちらも音楽的に幅を広げつつバンドの色で覆っただけなのに、結果として散漫という印象を与えない素晴らしい出来栄えになったのは興味深い点です。

 今回も全曲について短く。


Tr1:Bridge Over Troubled Water

 この曲はおそらく日本で最も有名な洋楽の曲のひとつでしょうね。
 音楽を聴く人でこの曲を知らない人っているのかな、想像できない。
 公務員試験の一般教養問題に出すべきだと思うくらい(笑)。
 この曲はソウル系のアーティストによるカバーが多いですが、なるほど、ゴスペルの要素が、ある、とは言わないまでも感じさせるもので、人間の荘厳さを歌っているところでつながっているのでしょうね。
 一昨年7月のS&G札幌ドーム公演は僕も行きましたが、この曲をアーティが歌い切り会場は感動の渦に巻き込まれていました。

 そのアーティをまるで親か兄のように後ろで見つめながら演奏するポールの姿も印象的で、きっと会場のみならず本人たちも感動していたのでしょうね。

Tr2:El Condor Pasa (If I Could)
 この曲は小学生の頃から「コンドルは飛んでゆく」として知っていました。
 これは南米のフォルクローレ。
 "I'd rather be a sparrow than a snail"
 「僕はカタツムリよりはスズメになりたい」
 「僕はAよりBのほうがいい」と連綿と綴ってゆく歌詞ですが、実はどちらでも不十分であることが伝わってきて、結局は人間でいたい、人間であらなければならないと悟ります。
 ちなみに僕はカタツムリを見るとこの曲が頭に浮かんできます(笑)。

Tr3:Cecillia
 ポール・サイモンは背が低いことへのコンプレックスが強い人だなとこの曲の歌詞を読んで感じました。
 ここでは直接的には背が低いことは歌われていないけど、でもポールの表現の原動力は背の低さにあるのかなと。
 それにしてもこれは歌うと気持ちがいい曲。


Tr4:Keep The Customer Satisfied
 強烈なシャッフルに乗ってぐいぐいと引っ張る曲で、ブラスも入ってポールのソウル好きも垣間見えます。

Tr5:So Long, Frank Lloyd Wright
 僕がフランク・ロイド・ライトという人物を知ったのはもちろんこの曲を聴いたから。
 この曲はボサノヴァ風、でもどこかもの悲しい。


Tr6:The Boxer
 これはアルバムに先んじてシングルで大ヒットしましたが、だいぶ後からこの曲が収録されたのは曲が足りなかったのかな、なんて邪推もしてしまいまう。
 嘘であってほしいことがあまりにも多すぎる現実にどうすることもできないでもがく姿が身につまされます。
 この曲はギターで弾けるようになりたいと思い続けてはや20年以上・・・

Tr7:Baby Driver
 S&Gは本質的にロックンローラーなんだってこれを聴いて思いました。
 この歌詞を読んでポールはちょっとエッチな人だなと思いました。

 エロではなくエッチ、そこが味噌です(笑)。


Tr8:The Only Living Boy In New York
 録音に来ないアートへのポールのあてこすりの曲がここから続きます。

 僕はこの曲が大好きだけどそんな内容の曲だからコンサートではやらないだろうと思っていたところ、札幌ドーム公演ではなんと演奏してもう大感激!

 ほとんど涙目で一緒に口ずさむことができないくらいで、個人的には演奏してくれていちばんうれしかった曲でした。
 この曲を演奏したのはポールとアーティが関係を修復したことを宣言したかったからかな、そう思うと余計に胸にしみてきました。
 音楽聴きなら誰でも、大好きなアーティストの中に、ヒット曲でもないあまり知られていないけど異様に大好きな曲があるものでしょうけど僕にとってS&Gのそれがこの曲です。

Tr9:Why Don't You Write Me
 恨み節はまだ続きます。
 レゲェも後に大流行しますが、1970年にやっていたというポールの先取性がうかがい知れます。


Tr10:Bye Bye Love

 敬愛するエヴァリー・ブラザースのカバーでライヴ録音。
 普通のアルバムにライヴを入れるのは、やはり曲が足りなかった、と思ってしまう・・・タイトルもまたまた恨み節だし。
 会場の手拍子がわざと大きくミックスされていて、ともすればヴォーカルより大きいのですが、それもサウンドとして効果的。
 だけど会場のこの一体感はいいなぁ。


Tr11:Song For The Asking
 ついに最後までポールのあてこすりでアルバムが終わる。
 訥々としかし怨念深く歌うポールの姿は或る意味恐い。
 怨念の割には曲があっさりと終わってほっとしますが、少し経って後に残されたものが大きくずっと尾を引いていることを感じます。
 今はこれが最後と知ってこう書いていますが、でも当時の人もこれを聴いて何かが終わるのを感じたのではないかと思います。


 40周年記念盤のDisc2のライヴは、1969年の秋このアルバムの収録が終わって一応はポールとアーティが
一時的に仲直りをしてアメリカをツアーで回ったいわば彼らの最後のツアーからのライヴ音源です。
 当然のことながらこのアルバムの曲ばかりではなく、彼らの名曲がたくさん聴けてなかなかいいライヴです。

 久し振りに何度も聴いたけど、やっぱり素晴らしい感動するアルバム。

 洋楽が大好きでよかったと心の底から思える1枚ですね。


 ちなみに今日は本邦初、本家BLOGとこちらで同じ記事を上げました。

 ただしもちろんこちらは大幅に短くしていますが(笑)、リリースされ届いて聴いたばかりだから話題としてもそうしたかったのです。