- 池波正太郎の東京・下町を歩く (ベスト新書)/常盤 新平
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今はなき、ニフティのFADV(冒険小説・ハードボイルドフォーラム)のオフで、台東の池波正太郎記念館と待乳山聖天宮に行ったことがある。
待乳山は小高い丘の上にあり、近所の酒屋神社の社を思い出させた。この待乳山の近くに、池波正太郎の生家があり、どの辺だろうねと付近を散策した記憶がある。
今、見開きの地図を見ると、浅草寺が案外近くにあるのがわかる。そのときはわからずに、浅草寺にはお参りをせず、従って、五鉄のモデルになった軍鶏鍋屋や駒形どぜうにも行かず仕舞いだった。
池波正太郎が、愛される理由は、人々は人間の営みと、その営みの中に、そこに人間の性をあらわしているからだろう。そして、人々は共感する。
「人間と言うやつはいいことをしながら悪いこと、悪いことしながらいいことをする」
すべてはこれが原点だ。
池波正太郎を初めて読んだのと同じ頃に、映画監督の神藤兼人の作品に影響を受けた。その著作、『映画づくりの実際』で「人は自分の経験したこと、しか創造できない」という意味のことが記されていた。
本書、『池波正太郎の東京下町を歩く』は、まさにそのとおりで、長谷川平蔵にしろ、秋山小兵衛にしろ、藤枝梅安彼等の生活の拠点は池波正太郎の生活に基づいている。