後輩のOと食事をした帰り道で、SのKちゃんと電車の中で会った。長く商社で羊毛の買い付けをしたのち、独立をした。今も一年の半分以上を海外で過ごしている。
「Yを見かけたよ。」
懐かしい名前だ。小学校の同級生で小学三年の転校して来て、中学二年ときに父親が亡くなり転校していった。
会った場所はクアラルンプール。旅行者なのか、そこに住んでいたのかわからなかったそうだ・・・
Yをその露骨なあだ名で呼ばず、かつ、彼をいじめなかったのは、少し脚が不自由だったY、在日のY、自転車屋のT、小児喘息の僕だけだったと思う。明るくスポーツマンのTを除き、言わばクラスではマイノリティで、いじめの対象だった子どもたちだった。
小さく、身体が弱く、大人しくて、反抗しなくて、お家が裕福で、いつも身奇麗な服装で、高価な玩具を持っていた彼は絶好のいじめの対象だった・・・
けれども、彼が偉かったのはどんなにいじめられても泣かなかったことだ。じっと耐えていた。
彼が転校したのち、一度だけ会っている。大学に入った頃、偶然街で会った。喫茶店で少し話したが、余りにも、昔と違っていた。パチンコで生活している。フルコンタクトの空手を習っている。機会があれば復讐したいと・・・
同窓会で、ポツリと言ってやったことがある。いじめっ子たちは驚き慌てていた。
その次に彼の話題がでたのは、就職して数年たった後だ。セールスで廻ってきたことを母から聞いた。最近、就職したとのことで、何のセールスかは忘れたが、昔のよしみで買ってあげたかったが、高価で買うことが出来なかったそうだ。
あれから、大分経って今、Yはどんな人生を過ごし、今何を考えているんだろう。
どこか地球の片隅で、元気で幸せに暮らしているのだろうか?