瞳に映るは君の幻覚、耳に残るは君の幻聴、今も其処に君の残像 -3ページ目

修学旅行:準備編

中学3年の春

この3年間で最も重大なイベントが待ち受けていた。

それは修学旅行だ。

小学校の時、関西に住んでいたあたしは広島と宮島に修学旅行で行った。

夜中にこっそりホテルを抜け出したり、外で花火をしたりとそれはもう楽しかったのだが・・・

行くまでが苦痛だった。

広島に行くからもちろん第二次世界大戦の勉強ばかりしていたことをよく覚えている。

広島はこんなに大変だったのだと様々な資料をこれでもかと言うほど見せられた。

あたしはクラスでも変わった生徒の方で、図書室が大好きだった。

その図書室にこれまた沢山置いてある戦争関連の絵本を、放課後こっそり趣味で読むような生徒だった。

そんなあたしでも授業でさんざん見せられたため、修学旅行へ行き終わった後、二度と図書室の戦争関連の絵本を開くことはなかった。

そんな少々嫌な思い出のあった修学旅行だけど、今回は違う。

なんと行き先は京都である。

・・・昔住んでたよコラ。

自由行動では京都以外の神戸・大阪・奈良の中から好きな県へ行くことを許されている。

この3つの県のうち1つはあたしがコッチに引っ越して来る前まで住んでいた県だ。

でもあたしは同じグループの子達に「遠慮しないでいーよ。」と声をかけ、行き先は大阪になった。

腐るほど歩いた街でも、仲の良い友達と行けばまた違うに決まってるしね。

そんなこんなで行き先の決まった修学旅行。

グループは2年生の頃に作ったから、3年生となった今はみんなクラスがバラバラだった。

あんなに仲良しグループだったのに引き裂くなんて、先生の意地悪。

でもまた新しい友達をいっぱい作ればいいだけの話だ。

とにかくこの修学旅行は2年生の頃を懐かしみながら力いっぱい楽しもう。

そんなことを考えていた土曜日の3時間目。

特に決めることもなくなったあたしたちは他愛も無いおしゃべりをして時間を潰していたのだが、ふと隣のグループから聞こえてきた言葉に耳を傾けた。

「黒崎さんって色っぽいよな」

え、あたし?

声の持ち主は唯君だった。

サッカー部でキレイな顔で背が高い。みんなからちょっと顔がhydeに似てると言われている男の子。

不良グループに一員で、あたしがなるべく係わり合いにならないようにしている人間の1人と言っても過言ではない。

だって色々と面倒くさそうだし・・・

唯君と言えば2年生の時よく隣の席になった。

初めて隣の席になった時、目立つ存在の彼と噂になっちまったりしたら大変だと思ったあたしは、極力話さないようにしていたんだけど・・・

唯君はお構いなしにおしゃべりだった。

手品や面白い話をいっぱいしてくれたけど、何時だってあたしの返事は

「へぇ」や「はぁ」や「ふーん」だった。

今思い返してみると可愛げのない女だ。

1年の3学期も何とか無事に(と言っても色々あったけど)やり過ごし、春休みにあたしは決意していた。

2年生になったらみんなが1からのスタートだ!

その中にあたしも紛れ込んでいっぱい友達作ってやる!

そうだ!恋にうつつをぬかしてる場合なんかじゃ絶対ない。

とにかく友達を作って作って作りまくって、恋は3年生になってからしよう。

彼氏もそれまでおあずけだ!

―――と。決意した。

なのであたしはhydeさんのファンだったけど、唯君の顔に全く持って興味を示さなかった。

こんな発言は危ないかもしれないけど、女子にしか興味が無かった。

なるべく普通の子と友達にならなければと、目を光らせて獲物を狙った。

ごめんね唯君。

3年生となった今なら男子に興味あるんだけどね。

まぁあの頃のあたしはガキだったってことで勘弁してよ。

必要以上に話しかけられてたし、今の言葉だって・・・もしかして唯君、あたしに惚れてるな?

心の中でそう呟いてあたしは思わず噴出した。

あ~やっぱり恋って楽しい。

頭の中が花畑になっちゃった感じだよ。

3年生になって良かったぁ。

と、あたしは浮かれまくっていた。

あの頃のことを思い返してみると、唯君はあたしから何らかの情報を得ようとしていたのかもしれない。

2年生の頃必要以上に話しかけてきたのは、あたしと仲良くなって榊原君とあたしをくっつけようとしていたんじゃ・・・

どれだけ考えても真実は分からない。

2005年1月の成人式での情報によると、唯君はホストをやっているらしい。

hyde顔だったし、人気No.1になってたりして。