先週の木曜日、9月24日は母の86歳の誕生日だった。
それを名目に、
母、姉と共に伊豆の下田蓮台寺温泉にある「清流荘」に1泊した。
二人とは湯河原で合流する旅程だった。
成田空港から東京まで指定席を予約していた「成田エクスプレス」は、
佐倉付近の倒木を理由に運休。
それを知ったのは駅に着いてからで、
慌てて京成スカイライナーの特急券をチケットレスで購入した。
空港第2ビル10時37分発の特急「スカイライナー114号」に乗れた。
台風25号の被害が続いていた印旛沼付近。
伊豆急下田まで通しで購入していた乗車券だったが、
振替輸送ということで日暮里までは京成に乗れて損はなかった。
日暮里駅で山手線に乗り換えた後、
無事に東京駅に着いた。
12時発の特急「踊り子9号」に乗車。
東京駅構内の店で買った品々で昼食とする。
ビールにチキン弁当のからあげ。
大船軒のサンドウヰッチ。
食後には角ハイボールとミックスナッツ。
独り、旅気分が盛り上がる。
定刻の13時13分、湯河原駅に到着した。
母と姉が乗り込んでくる。
車内は空いていたので、
次の熱海駅からは座席を回して向かい合わせにした。
これも旅らしい。
二人と会うのは7月以来、
ちょうど2カ月ぶりだった。
元気そうでなによりである。
海を眺めながら、呑む。
終点の伊豆急下田駅には、
定刻を10分あまり過ぎて到着した。
あと数分で15時になろうかという頃だった。
行き止まりホームは、終着駅の風情があって好きだ。
アロハシャツを着た駅員さんの姿を目にすると、
南国に来た感も湧く。
改札口を抜ければ、
宿の名が入った旗を持ったお迎えのスタッフさんが並んでいる。
予約していた「清流荘」もその中にあり、声をかけた。
「踊り子9号」からの客はわれわれだけらしく、
すぐに車に案内されて宿へと向かった。
趣ある宿に到着。
ロビー脇のラウンジに案内され、
記帳を済ませた後にお茶をいただく。
館内も外の景色も落ち着いた雰囲気で、
到着早々に「良い宿」と確信した。
案内された部屋は「黄瀬」。
一休から予約していた。
部屋に露天風呂があったほうがよい、
という二人のリクエストもあり、
広い貴賓室だ。
露天風呂。
脚に負担をかけたくないので、
テーブル席を用意してもらった。
内風呂も温泉。
ベッドルーム。
茶菓子。
母がお茶をいれる。
86歳の手。
夕食は17時半からでお願いしていた。
それまでは各自、自由行動。
自分は中庭にある温泉プールに行った。
水着はしっかり持参していたのだ。
家族連れやカップルなど何組かの客が遊んでいる。
久しぶりの青空の下、泳いでみたりする。
最近はスポーツジムでもプールは使っていなかった。
泳ぎは忘れていなかった。
プールの後には大浴場へ。
誰もいなかった。
消毒の塩素臭がしない温泉は嬉しい。
静かに浸かる。
露天風呂に入れば、庭の緑に心和む。
時折吹く風は、すっかり秋のもので気持ち良い。
庭の先の道路を走る車の音もわずかに聞こえはするが、
虫の音がそれを勝っていた。
部屋に戻る。
姉も大浴場に行ったらしく、
やはり誰もいなかったという。
大浴場は深夜に男女入れ替えになるので、
翌日はもう一つのほうに入る楽しみがある。
母は部屋の露天風呂に入ったという。
熱くてすぐに出たらしい。
自分も入ってみた。
やはり、相当に熱い。
給湯量を減らしておいた。
せっかくの温泉に加水はしたくないので、
外の冷気とうまく合わせたいものである。
冷蔵庫に入っていた無料の缶ビール2本を3人で分け、
風呂上がりの乾杯。
テレビでは大相撲。
二人は古い人間ゆえ、テレビっ子なのだ。
朝はドジャース大谷、夕方は相撲、
というのがお気に入りの過ごし方だとか。
好きなようにしてもらう。
やがて、夕食の準備が始まり、
17時半には食事を始めた。
部屋食である。
プラン特典というスパークリングワインで乾杯。
前菜
焼秋鯖オレンジ味噌風味
炙り帆立卸し生姜掛け
銀杏豆腐
吸物と造里
煮物
金目鯛姿煮
替り鉢
秋野菜盛り
ローストビーフ
合肴
あわび踊り蒸し
止肴、食事、香の物
このわたの玉地蒸し
舞茸御飯
この後、
明るく元気な仲居さんが、
「Happy birthday to you~」
と歌いながら、
水菓子と共にケーキを運んできてくれた。
事前に注文しておいたバースデーケーキだ。
仲居さんが折り紙で富士山も作ってくれた。
86歳とは無縁の5本のローソクで祝う。
生クリームたっぷりのケーキは、
とても美味しかった。
ちなみに、
ケーキにナイフを入れて取り分ける作業などは、
いつも自分のシゴトである。
ゆっくりと2時間あまりもかけての夕食を終えた。
ごちそうさまでした。
秋の夜長。
館内にバーがあるので、
行かないわけにはいかない。
母は部屋でテレビを見ると言うので、
姉と二人で出向いた。
20時半頃だった。
20時から営業しているらしいが、
店内に客は誰もいなかった。
カウンターの席でウイスキーとサイドカーの2杯、呑んだ。
一時期は、
同じ家に住みながらほとんど口もきかなかったような関係だった姉と、
こうして温泉宿のバーで二人で呑んでいるのが不思議でもある。
2月に腎臓ガンの手術をしたときにはどうなるかと心配したが、
すっかり元気になったようで、本当によかった。
心地良く酔った。
けっきょく、客はその後も誰も来なかった。
ごちそうさまでした。
その夜はぐっすり、
を期待したのだが、
暑さで深夜に寝覚めてしまい、
その後はほとんど眠れずに朝を迎えた。
温泉宿のよくあるパターンだ。
掛け布団が厚くて暑い。
温泉で身体がポカポカしているのも理由だろう。
7時頃に布団を出た。
ベッドルームに二人の気配はなく、
大浴場に行っているようだった。
こちらは、
部屋の露天風呂に入る。
朝の風はさわやかだ。
期待どおりに湯温もかなり下がっており、
ゆっくり浸かれる。
8時から朝食をいただく。
「夕食と比べると、朝はシンプルね」
などと、いつものように母は言う。
そのくせ、
食べきれない、と残す。
これも、温泉宿での朝の定番である。
食後にはコーヒー。
ごちそうさまでした。
その後、大浴場に行った。
二つの露天風呂もある広い浴室だったが、
前夕と同じく、誰もいなかった。
脱衣場に置かれたいくつかの籠には服が入っていたが、
それらは温泉プールに入っている客のものらしい。
静かに、のんびりと寛げる一夜だった。
11時発の送迎車で、
別の二組の客と共に伊豆急下田駅まで送ってもらう。
欧米系の女性二人組もいた。
日本の温泉宿でどんな感想を持ったか聞いてみたいものである。
駅のコインロッカーに荷物を預ける。
その後、
歩いて向かった先はこちらの「道の駅 開国下田みなと」。
駅から10分あまり歩いた。
86歳の母も、
病み上がりの姉も、
フツーに歩けるのである。
今回の旅が決まって旅行ガイドブックを買い、
読み込んだうえでここに行きたい、と思ったらしい。
店を見て回る。
二人はいろいろとお土産を買っていた。
自分は何も買わなかった。
遊覧船の乗り場がすぐ近くにあり、
乗船を促すアナウンスが聞こえてくる。
30分くらいなら乗ってもいいかとも思ったが、
90分は長いので港を出入りする船を眺めるにとどめた。
海風を感じつつ、
外のベンチでアイスクリームを食べて一服。
駅への戻りは、
時刻を調べておいた路線バスに乗って楽をした。
乗車したのは12時22分発のバス。
昼食(昼呑み)の時間である。
駅近くにあるこちらのお店「めん処 玄」に入った。
ビールで乾杯。
壁にかけられた「感謝」。
よく見れば、
「ありがとうございます」でもある。
おつまみの5点盛りは、
想像以上の豪華版だった。
餃子。
これで充分にお腹が充たされたのだが、
最初にまとめて注文してしまっていたので麺もいただく。
名物らしい塩磯辺ラーメン。
普段は口にすることのない海辺らしい味は新鮮だった。
ビールの後にはハイボールを2杯。
姉も同様。
母は水。
これもいつもの光景。
ごちそうさまでした。
その後、
マクドナルドで時間調整も兼ねてコーヒーを飲んだ。
旅が終わる。
15時08分発の特急「踊り子10号」に乗車。
帰りは座席を回転させなかった。
呑む気満々。
前席の姉も同様である。
前から手が出てきて、
この後も菓子やつまみがいろいろと供給された。
大島と利島を眺め、伊豆の旅をあらためて実感。
湯河原には16時34分に到着した。
下車した二人の背中を車内から眺め、別れた。
そして、
いつものような独り旅と化し、東京へ。
18時03分発の特急「成田エクスプレス47号」に乗り換えた。
前日は運休だったが、
この日は通常どおり運行されていた。
成田駅までは50分弱。
これで本当の呑み納め、と誓いつつ、呑む。
旅が終わった。
皆にとって、良い時間を過ごせたと思う。
いつものような時間が、
やがて、いつの日にかは、
なくなってしまうことは分かってはいるつもりだ。
年齢を重ねるごとに、
それを真剣に考え出すと、
重い気分に陥りそうにもなる。
しかし、
未来に怯えていては今を愉しめない。
大切なのは、今。
そう思えば、
あれこれ考えるより行動することに意義があると思える。
ずっと雨続きだったのに、
今回の旅の2日間だけはなぜか青空が広がり、
傘の出番もなかった。
昔から「晴れ女」だと自慢したがる母の力だったと、
素直に認めておこうと思う。
















































