観戦だけでは終わらなかった古巣「アレナ・グアテマラ・メヒコ」のルチャリブレ | プリンシペ・オリエンタルのブログ

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誰も知らない元覆面ルチャドール(プロレスラー)“プリンシペ・オリエンタル”のブログです。リングネームだったプリンシペ・オリエンタル=東洋の王子様。しかし、素顔は王子とはかけ離れた男であります。今はプロレスとはまったく関係ない毎日を送っています。

おとといの日曜日、ルチャリブレ観戦のため「アレナ・グアテマラ・メヒコ」に行った。


この会場を訪れたのは2006年に観戦して以来、8年ぶりである。


覆面選手のプリンシペ・オリエンタルとして試合していたのは1998年。


その後、素顔で2002年と2004年にそれぞれ1試合リングに上がった。


自分にとっては忘れられない場所である。

このポスターは古いままだった。




ホテルからUberで車を手配してやって来た。


観光客などいない、どちらかといえば荒んだ雰囲気の町に会場はある。


それでも四半世紀以上前よりはきれいになったものだ。


入場料の25ケツァル、500円弱を支払って中に入る。


8年前と同じように、この会場の主宰であるヴォルトロン選手の奥様が入口担当だ。




「以前ここで戦っていました」


「わかるわ」


成田空港で買っていたいくつかのお土産と手書きのメッセージを入れた袋を奥様に差し出す。


ヴォルトロン選手に渡してください、と託した。




20ケツァルのセルベッサを買って観戦に備える。


試合開始の17時まで30分もないのに、観客は10人もいない。


営業面も心配になる。




少しすると奥様がやって来た。


お土産は直接本人に渡せと言う。


控室に行くよう言われた。




あまり迷惑をかけたくないし困ったな、と躊躇していたところ、控室からヴォルトロン選手本人が半分顔を出し、こっちに来い、と言ってきた。


お邪魔する。


試合前の控室、多くの選手がおり緊張感も漂っている。


昔ここで戦っていた、などと皆に紹介される。


最後に試合をしてから20年。


ほとんど知らない選手ばかりだったが、その20年前にタッグを組んだサイクロン・ネグロ選手がいたのでおもわず歩み寄ってしまった。


向こうも憶えてくれていた。


「老けましたね、お互いに」

と、挑発しておいた。




全試合が終わったらまた控室に来るようヴォルトロン選手に言われた。


サラッと観戦して去るつもりだったのだが、こうして温かく迎え入れてくれるのは嬉しいものだ。




客席に戻る。


試合開始前、会場内のアナウンスで、

「日本から◯◯(自分の名前)が来ています!」

みたいなことも言ってくれていた。


観客30人程度で第1試合が始まる。


予定の17時より15分ほど過ぎていた。




少しずつ客も増えていった。






観客のヤジに応戦したり、なにかと会場内を巻き込むのがルチャリブレ。


控室で旧交を確認したサイクロン・ネグロ選手など、試合中にやたらとこちらを指を指してちょっかいを出してきた。


もちろん、客席から自分もブーイングや空手ポーズで対抗しておいた。




この日ひときわ大きな声援を受けていたのは画像右のZombie Boy選手。


まだ新人らしいが、アクロバティックな動きでファンを魅了していた。





会場は家族連れの姿も多い。


写真撮影などのファンサービスにも応じ、アットホームな雰囲気である。




セミファイナルの試合が終わった後、驚きの展開になった。


試合を終えた面識のないラヨ・デ・オロ選手から、リングに上がるよう促されたのだ。


状況がつかめなかったのだが、とりあえず恥ずかしながらリングに上がる。


会場内のアナウンスであらためて紹介された。


ラヨ・デ・オロ選手が自分の手を上げて観客にアピールしてくれた。


それなりの拍手も受けた。


わずかの期間お世話になっただけなのに、なんとも粋な計らいである。


きっとヴォルトロン選手から命を受けたのだろう。


嬉しかった。




リングを下りる。


何人かの観客から、一緒に写真を撮らせてください、と言われた。


52歳、ただの冴えない日本人。


そんなおっさんも、ここでは魔法をかけられるらしい。




そして、メインの試合。


ヴォルトロン選手とその息子がタッグを結成しての戦いだった。


試合は荒れ、乱入による新たな抗争が生まれる結果となった。


この続きはまた来週の日曜日以降に、というわけだが、Facebookで今後も追っていきたいと思う。




全試合が終わると、リング上はしばし子どもたちの遊び場となる。


おとなたちはリングサイドでそれを見守る。


この光景はとても好きだ。




控室から選手が一人またひとりと出てきて会場を後にしていく。


ヴォルトロン選手からギャラが支給され、受け取った選手から帰って行くのだ。


そろそろ控室に挨拶に行こうかな、と思っていたところで控室から声がかかった。


ヴォルトロン選手の息子から「中に来て」と言われた。




ほとんどの選手は帰っていた。


ほどなくして、ヴォルトロン選手親子とラヨ・デ・オロ選手だけになった。




「昔はこの辺りに座っていました」

と言って感慨深く座っていたら記念に、と撮影してくれた。


選手の格によって、なんとなく席位置が決まっているのだ。




チョップ合戦で胸が真っ赤のヴォルトロン選手親子。


控室に入ると当時の緊張感や充実感や悔しさなど、いろいろな感情を思い出す。




「今度はいつ戻る?」


「ここはお前のcasa(家)だ」




以前も言われた言葉をこの日もかけてもらった。




しばらく話をした後、再会を誓って会場を去った。





自分の人生でほんのひと時ながら夢をみることができた場所。


この日は、夢の続きだったのかもしれない。






(お土産にいただいたTシャツ)