先日、印旛沼近くの「甚兵衛茶屋」に初めて行った。
最近しつこいほどに訪れているエリアにある店の一つである。
その日はJR成田線の木下(きおろし)駅周辺をあてもなくフラついた後だった。
昼吞みとしては蕎麦屋で瓶ビール1本を吞んだだけであったし、まだまだ吞みたりない気分だった。
成田駅の1つ前の駅、下総松崎で下車した。
風情のある駅舎だった。
クルマではこの周辺を訪れてはいたが、電車で下り立つのは初めてだった。
ここから印旛沼まで歩いた。
歩けばどこへでも行ける。
今さらながら、最近悟ったことである。
5kmあまり歩けば、めざす「甚兵衛渡し」なのだ。
「甚兵衛茶屋」は、まさしくその辺りに在る。
道標があるので安心だ。
40分ほど歩けば着いた。
14時半過ぎだった。
中途半端な時間ということもあってか、客は誰もいなかった。
ここでも瓶ビールから始める。
レアなコラボか。
鯉のあらい。
味噌だれでいただく。
鰻の肝焼き。
「そば・うどん・国産うなぎを中心とした和食のお店」という売り文句だけあり、メニューが豊富だった。
接客も良い感じで、居心地が良い。
鰻専門店とは違って居酒屋感覚でゆっくり味わえそうなので、あらためてゆっくり訪れたいと思った。
コミュニティバスで公津の杜駅へ行き、京成電車で成田へ戻る。
この日の〆もやはり大衆酒場の看板を掲げる「虎屋本店」にした。
木下、印旛沼とそれぞれ瓶ビール1本しか呑まなかった。
しかし、ここでは瓶ビール(しかも大瓶)の後に熱燗4合を吞んだ。
気が緩んだか、手元が狂って酒をこぼした。
隣客の靴に少しだけ酒がかかってしまった。
きちんとした格好ながら、ちょいと強面のお兄さんだった。
謝ると、
「全然大丈夫っすよ。むしろ、酒の香りがした方が嬉しいっす」
などと粋なコトバで平然と返してくれた。
平日の夕方に独り酒場で吞む客は「ホンモノ」である。
救われた気がした。
退店時にあらためてお詫びを告げても同様だった。
会計を済ませた後、レジを担当した店員さんに事情を告げた。
わずかながら千円札を託した後、逃げるように店を去った。