「矢指ヶ浦温泉館」(千葉県旭市) | プリンシペ・オリエンタルのブログ

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誰も知らない元覆面ルチャドール(プロレスラー)“プリンシペ・オリエンタル”のブログです。リングネームだったプリンシペ・オリエンタル=東洋の王子様。しかし、素顔は王子とはかけ離れた男であります。今はプロレスとはまったく関係ない毎日を送っています。

先日、千葉県旭市の「矢指ヶ浦温泉館」で一夜を過ごした。
 
ちなみに、「矢指ヶ浦」は「やさしがうら」と読む。
 
 
 
この温泉宿の存在を知ったのは熱海から成田へ引っ越したばかりの昨年2月のことである。
 
たまたま用事があってこの近くを訪れた際、カーナビで表示されて気になった。
 
後で調べてみると、千葉県の温泉第1号でもあるという歴史ある宿だと知った。
 
いつか訪れようと思いながら、1年以上の月日が流れた。
 
 
 
それは、千葉県野田市の「割烹旅館 水明荘」から帰ってきた日だった。
 
帰宅したのは11時前だった。
 
翌日は一応9時からシゴトが入ってはいたが近場ならどこかへ行けるな、と思った。
 
旅気分を継続させたかったのである。
 
そこで、行こうと決めたのが「矢指ヶ浦温泉館」だったのだ。
 
すぐに楽天トラベルから予約する。
 
1泊2食付きで9,196円。
 
9,100円分は楽天スーパーポイントを使い、96円のみカード決済した。
 
 
 
クルマで直行すれば1時間たらずという距離にある。
 
途中で昼食をとったりコーヒーを飲んだりと時間調整をした。
 
宿の駐車場に着いたのは15時を15分ほど回った頃だった。
 
 
 
使わなくなった送迎車がオブジェかのごとく放置されていた。
 
なかなか良い雰囲気である。
 
その横に、自分のクルマを停める。
 
 
 
少し広い通りに出ると、宿の看板があった。

 

 

この建物は宿ではなく、路地へと入る。

 

突き当たりに、めざす「矢指ヶ浦温泉館」はあった。

 

中へ入って声をかけると、奥から70がらみの婦人が現れた。

 

「宿泊ですか?あら、お早い」

などと言われ、とりあえず謝る。

 

チェックインは15時からで、予定到着時刻は16時と入力していた。

 

「お仕事の方は、だいたい予定より遅くなるんですけどね」

などとも言われたので、仕事ではないと弁解し、再度謝る。

 

 

 

階段を上がってすぐの部屋に通された。

 

夕食の希望時刻は18時と伝え、了承される。

 

朝食は7時半から、と言われ、シゴトで間に合わないので不要と伝えた。

 

返金などはできない、と言われる。

 

当然、そんなことは求めていないので、結構です、と言う。

 

そのかわり、6時半頃には風呂に入れるようにしておく、と言ってくれた。

 

通常は風呂は7時から、朝食は7時半かららしい。

 

温泉といっても源泉の温度が低いために加温なので、24時間入浴できるわけではないことは事前学習済みだった。

 

 

 

とりあえずドタバタとした手続きが終わったので、まずは温泉に入ることにする。

 

 

 

部屋を出た窓際にはいくつもの壺?が置かれていた。

 

1階奥の浴室に行く。

 

先客が一人、いた。

 

「こんにちは、失礼します」

と挨拶して入る。

 

無視される。

 

日帰り客らしい。

 

比較的若いと思しき巨体の輩で、浴槽の縁に座ってずっとスマホを眺めている。

 

肥満体ゆえ鼻息が荒く、浴室内に響き渡る。

 

広くない空間で、なんとなく居心地が悪い。

 

落ち着かないので、数分だけ温泉に身を浸した上で、早々に風呂を出た。

 

この画像は、夜あらためて入ったときに撮影したもの。

 

年季の入った温泉分析書は脱衣場ではなく、浴室内に掲げられていた。

 

「冷鉱泉」とある。

 

ここは、イメージとしては「鉱泉宿」と呼ぶ方がふさわしい気がする。

 

なお、温泉と鉱泉の違いなどは、専門筋に任せることにしよう。

 

 

 

18時に夕食が運ばれてきた。

 

あのご婦人は女将のようだ。

 

ひとりで切り盛りしているのだろうか。

 

瓶ビールと冷酒も頼んだのだが、瓶ビールは部屋へ入るなりひっくり返して、再度運んできた。

 

いろいろと、落ち着かない。

 

 

 

気を取り直して、いただく。

 

金目鯛の煮付けは一尾丸々だった。

 

天ぷらの量も多い。

 

山形の酒だという純米酒の「雪むかえ」は食事に合う。

 

いろいろあっても、良いことがあれば気分はどうにでもなる。

 

 

 

酒が終わろうかという頃に、ご飯をいただく。

 

運ばれてきたのはご飯だけではなく、こちらの「若女将」も。

 

何の許可を得るでもなく、胡坐をかいている自分の膝の上に乗ってきた。

 

ある日突然、この宿に現れた猫だという。

 

失礼なことはしないと思うが、もし何か悪いことをしたら叱ってください、などというコトバを残して、本当の女将は部屋を出て行った。

 

そんなわけで、しばし猫と戯れながら酒を呑み、ご飯を食べる。

 

動物と関わる機会がほとんどないのだが、なかなかかわいい。

 

ほど良い重みと、生きている温かさが伝わってくる。

 

 

 

いったいいつまでここにいるのだろうか、と思っていたが、そんな気持ちを察したのだろうか。

 

20分あまりした後、急に眼を見開くとスタスタと扉の方に歩き始めた。

 

お勤め終了、ということなのだろうか。

 

扉を開くと、何事もなかったかのように階下へと去って行った。

 

 

 

食後、休憩の後に風呂に入る。

 

今度は独り、静かにゆっくりと浸かれた。

 

身体の中からポカポカする。

 

部屋に戻ると、布団が敷かれていた。

 

タオルケットは外してから、就寝した。

 

暑くて眠れないのは、温泉宿ではよくあることだからだ。

 

正解だった。

 

心地よい眠りの後、朝を迎えた。

 

 

 

6時半過ぎに風呂に入りに行く。

 

女将は起きていて、テレビを見ていた。

 

ゆっくりと朝風呂に入れるのは嬉しい。

 

朝食以上の価値がある。

 

 

 

身支度を整えた後、7時を回って宿を発つ。

 

前夜の瓶ビールと冷酒代は1,420円と言われる。

 

2千円を渡す。

 

「ありがとうございました」と、520円を返される。

 

え???

 

「あの、580円ではないですか?」

 

「は?」

 

2,000-1,420は、自分の計算では580である。

 

 

 

女将は、

「どうすればいいのかしら?」

と、慌て始めた。

 

100円硬貨を何枚か用意してくれようとしていた。

 

面倒なので、500円だけいただいて靴を履いた。

 

「なんか、バタバタしてすみませんでしたね」

と、去り際に声をかけられた。

 

たしかに、最初から最後まで、なんとなく落ち着かなかった。

 

 

 

「千葉県温泉第一号」の宿である。

 

 

おおらかな気持ちでいれば、きっと快適な宿のはずだ。

 

目標にすべきは、あの猫であろう。