もう半月以上前の話になってしまいますが、湯河原温泉の「伊藤屋」に泊まりました。
1月末まで有効の1万円分の「湯河原温泉宿泊補助券」が手元にあったことから行く運びとなりました。
熱海に住んでいながら隣町の湯河原温泉に泊まるのはいかがなものか?と思われるかもしれませんが、湯河原は昔から大好きな温泉場です。
いつもは奥湯河原の加満田に宿泊することがほとんどなのですが、たまには「冒険」も悪くなかろう、と今回は迷った末に伊藤屋を選びました。
呑み仲間であり旅仲間でもある友人のYが誘いに乗ってくれたので、小さな旅が実現しました。
東京の会社で用事を済ませたYと湯河原駅前で会ったのは14時頃でした。
熱海の自宅マンションから湯河原駅前までは車で20分ちょっとという近さです。
チェックインの15時までは時間があったため車で熱海方面へと戻り、山の中の小さなカフェ「やまぼうし」に行きました。
屋根裏部屋か秘密基地かのような空間でコーヒーを味わいました。
あいにくの曇天ではありましたが、山越しに海も一望出来る絶好のロケーションで、落ち着きます。
軽食メニューもあるので、いつかいただきたいと思います。
伊藤屋に着いたのは15時過ぎでした。
迎えてくれた番頭さん、フロントの男性、仲居さん、いずれもとても感じが良く、第一印象は申し分ありません。
通されたのは「十七番」の部屋。
大正時代に建てられたという歴史ある本館の建物の2階にあり、登録有形文化財でもあるようです。
趣きがあって、これぞ旅館!という気がします。
広縁からは、玄関脇の手入れされた庭も眺められます。
早速、自由に入れる貸し切り風呂や大浴場でゆっくり温泉を楽しみました。
もちろん、風呂上がりには部屋の冷蔵庫のビールを呑みます。
エアコンをつけていても、なんとなく肌寒いのは純和風建築だからでしょうか。
暑がりの自分には、むしろちょうどよいくらいです。
食事は夕食、朝食共に部屋食というのも嬉しいものです。
派手ではないものの、上品な料理が次々と並べられる夕食。
和食にはやはり日本酒、となります。
質量共に想像以上で、相当に満腹となってしまいました。
それでも、酒は呑みます。
部屋の冷蔵庫に入っていた伊藤屋ラベルの酒です。
温泉旅館に泊まるととかく身体が熱すぎて安眠出来ないことが多いのですが、その夜はかなりよく眠れました。
翌朝、朝食前には朝風呂にも入ります。
こちらの岩風呂が大浴場です。
朝食もとても美味でした。
夕食時もそうだったのですが、白飯の炊き具合も絶妙です。
普段はほとんどご飯を食べないというYもおかわりをしていたほどです。
食後にはコーヒーを注文して、部屋に運んでもらいました。
ロビー脇にあるラウンジでもいただけるようです。
充分に満足し、部屋を出ます。
不満を感じることが一つもない、という、珍しい一夜でもありました。
玄関でにこやかなご夫婦と思しき男女に見送られましたが、おそらくはご主人と女将さんではないかと推測します。
古くても手入れをして清潔な部屋、過剰な演出など一切なくても心地良い接客、手抜きのない料理、と、いずれも申し分ありません。
宿泊客は何組もいるのに、他の客の気配がまったくしないのも不思議でした。
入りまわったりバカ騒ぎするような連中がいない、というのはありがたいものです。
もっとも、そういった輩が好むような宿ではないことは確かです。
また、島崎藤村ゆかりの宿、二・二六事件の舞台ともなった宿、といった歴史を持つ老舗ながら、それに甘んじているところが一切感じられないのも素晴らしいと思いました。
唯一、温泉が源泉掛け流しではなく、消毒を使った循環というのは残念ですが、衛生維持のためにはそれなりの事情もあるのでしょう。
玄関前での記念撮影。
相当にモザイクを濃くしております!
あれから半月あまり。
まったく咲いていなかった庭の梅も今では三分咲きくらいになっているのでしょうか。
また訪れてみたいと思える宿が出来ました。