新年も10日あまりが過ぎてしまいました。
年末年始の雰囲気もすっかり遠くに去ってしまいましたが、いくつかの出来事は記しておきたいと思います。
12月20日、墓参りに行きました。
実は、自ら墓参りを欲するタイミングというものが2つ存在します。
ひとつは、クルマを購入したとき。
人生で、そう何度もあるものではありません。
もうひとつは、年末。
節目として、行かねばならぬ、といった思いにかられるのです。
その両方が重なるタイミング到来だったわけです。
幼少時から墓参りはクルマで行く、というのが我が家の伝統行事でありました。
永くクルマを所有することなどできない貧乏な家庭だったので、クルマはレンタカー。
大抵は10月10日の体育の日あたりのイベントでした。
両親と姉、それに祖母の5人が小さなスターレットか、せいぜいカローラに乗り込んでの墓参り。
東京都下の霊園まで片道1時間程度のドライブは、子ども心に楽しいものでした。
あまり仲良くなかった伯父とおばも加わった7人のときは、ワゴン車を借りたこともありました。
しばし休戦?のひと時は、それはそれで楽しかったものです。
キンモクセイの香りが漂う季節になると、今でも墓参りの思い出がよみがえってきます。
熱海に移住してまもなく3年になります。
今では墓参りは、高速道路を使っても片道3時間近くかかることとなり、1日がかりのイベントとなってしまいました。
当日は、天気良好。
10月に買った車は走行距離が10万キロオーバーという中古車ではありますが、無駄にスタッドレスタイヤに履き替え済みです。
かつては賑やかだった墓参りも、今では独りドライブ。
祖母、おば、父、伯父の順に鬼籍に入りました。
隣り町に住む母と姉は遠距離の行程が面倒らしく、「よろしくね」の言葉のみ預かりました。
この時期としてはそれほど寒くもなく、黙々と草をむしり、枝を切る作業を続けました。
傍らにはカマキリがジッと佇み、動きません。
死んでいるのかと突っつけばゆっくりと動いたので、レプリカでもなく確かに生きているようです。
ひと通りきれいになったところで線香に火を点け、手を合わせます。
報告したいことは数知れず、いろいろなことが浮かんでは消えていきました。
しばらくの間佇んだ後に、帰る決心をしました。
墓を離れる際に傍らを見ると、先ほどの不動のカマキリもまた動き出して、ゆっくり歩き始めているところでした。
こちらについてくるような気がして、足を止めました。
あたかも、一緒に墓参りをしてくれたよう、そんな気がしてなりません。
カマキリは、その格好から「おがみ虫」と呼ばれることもあるそうです。
英語でもPraying mantis(祈り虫)だとか。
そんなこともあってか、なぜだか独りでの墓参りだったとは思えないような不思議なひと時だったのでした。
街に漂うのはキンモクセイの香りではなく、年末の忙しさというやつだったように思われます。
随分と昔の出来事だった感じがしてなりません。