6日前の木曜日、
台湾の蘇澳(スーアオ)駅に下り立ったのは14時半前だった。
めざす宿は、歩いて2、3分ほど。
信号を一つ渡るだけで、すぐに着いた。
こちらの「金華冷泉旅館」(ジンファコールドスプリングホテル)だ。
出発前にエクスペディアから予約済みだった。
ダブルベッド1台の部屋の事前決済金額は、
1泊8,303円だった。
駅から近く、
部屋で冷泉に入れるというのが選択の理由である。
館内に入る。
すぐ左手に帳場があり、
30歳くらいの恰幅の良い男性が座っていた。
旅館の「若旦那」の雰囲気が漂っていた。
実際のところは不明である。
若旦那は、じつに親切だった。
こちらは持参したポケトークを使う。
若旦那はスマホの翻訳アプリを使う。
カタコトの英語と日本語も使えるらしいが、
耳にする日本語はもっぱら
「イイヨ、イイヨ」
くらいだった。
おだててくれているのではなく
「わかった」
「OK」
という意味らしいことはすぐに解した。
パスポートを渡して、手続きはすぐに済んだ。
その後、若旦那はいろいろと案内をしてくれた。
玄関脇には、
蛇口をひねれば冷泉が出るエリアがあった。
コップに冷泉を注いで渡された。
口にすると、甘味がまったくない温いソーダのような味がした。
ロビーの一角には、何種類かの菓子が籠に入っていた。
自由に食べてよいらしい。
その後、階段を上がって3階の部屋へと導かれた。
こちらが客室。
狭いながらも清潔で、悪くない。
エアコンはあり、
快適に過ごせそうだ。
唯一、
冷蔵庫がないのは残念ではある。
こちらが浴室。
冷泉に浸かる前にシャワーを浴びろ、
といったような注意もひととおり伝えられた。
日本の温泉と同じような入浴の手引きも
現地語で記されて扉に貼られていた。
窓からの眺め。
目の前は公園。
その奥の小高い山は1時間ほどで往復できるという。
眺めが良いが、
水を持参するように、と言われた。
若旦那が部屋を出る。
旅の気分が高まってきた。
いい町、いい宿に来た気がした。
この宿は1泊で予約していた。
翌日の行動は決めていなかったので、
翌日の宿も予約せずに日本を発った。
しかし、ここに連泊しようと迷わず決めた。
駅に下り立ったときから、
なんとなくこの町の居心地の良さを感じたのである。
すぐにスマホを手にし、
エクスペディアから予約した。
割引きのポイントなどは使い果たしていたようで、
1泊10,515円だった。
直接申し出れば、あるいは値引きなどがあったかもしれない。
しかし、そのまま予約を完了させた。
出かける。
帳場で部屋の鍵を預け、外に出た。
強烈な夏の日差しだ。
部屋からも見えた公園に行ってみる。
日帰り冷泉施設や土産物店などがあり、
この日は金曜日ながら地元客で賑わっていた。
施設でライブ中の女性歌手が歌う哀愁漂う曲が
周辺に響いていた。
若旦那も勧める、
眺めがよいと言う七星嶺歩道を登ることにした。
すぐに急な階段から始まった。
息を切らし、何度も休みながら歩いた。
高度を上げながら、
少しずつ変わる眼下の景色が慰めだった。
往復する中、何組もの人たちとすれ違った。
半べそをかきながら父親と登る子ども。
まるで修行かのように、杖を巧みに使いながら黙々と歩く老人。
サンダル履きの若い外国人女性(多分、途中で挫折しているはず)。
再び町に下りたのは16時頃だった。
8時過ぎに台北の大衆食堂で朝食を食べてから、
口にしたのは水だけだ。
さすがにお腹もすいた。
飲食店はいくつもあったが、
こちらの店に入ってみた。
(翌日に撮影した画像。
営業しておらず、シャッターが閉じられていた。)
スマホで見れば「ステーキハウス」とある。
ファストフード店に近いカンジの店だった。
ビールを呑めるか、入店時に訊いておいた。
ポケトークがここでも役立つ。
コンビニで買って持ち込んでよいと知らされる。
台湾の大衆食堂においては、
それが当たり前のようである。
言われたようにコンビニで買った後、再訪した。
堂々と、呑む。
1本目。
ビーフ&チキンステーキメインのプレートを
2本目のビールと共に味わう。
ガッツリと、肉。
台湾らしい食事ではなかったかもしれないが、
とても美味しく感じられた。
ごちそうさまでした。
宿に戻る。
若旦那に、宿泊を延長した旨伝えた。
パソコンで予約確認をした後、
「イイヨ、イイヨ」
と言われた。
宿への帰りがけにコンビニで買ったビールを呑む。
旨い。
そして、部屋のシャワーを浴びてから冷泉に浸かってみる。
源泉は22℃くらいらしい。
最初は冷たく感じられるも、
ずっと浴槽内に身を置いていると冷たさはない。
炭酸の小さな泡が肌に付くのが見える。
それを手に取り、肌に押し当ててみる。
シュワッ、としたわずかな音と感覚がする。
身体に良い気がする。
少なくとも、
落ち着いた心持ちになるだけでも、
健康にはプラスだろう。
サッパリしたところで、
また酒を欲する。
コンビニに向かった。
セブンもファミマもすぐ近くで、便利だ。
買ったのは、ウイスキーのミニボトル。
玄関脇の冷泉を空きペットボトルに入れてから部屋に戻った。
作りたかった「ウイスキーの冷泉割り」を部屋で作り、口にしてみた。
生ぬるい。
そして、炭酸力も弱い。
せめて氷を買うべきだったか。
しかし、これも旅先での忘れられぬ味である。
酒のつまみに、とロビーで手にした菓子。
若旦那にいろいろと勧められ、
棚の奥から取り出してくれた菓子まで部屋に持ち帰った。
完食などできるはずもないままに、
その夜は深い眠りに落ちた。






















