偏愛映画音楽秘宝館 その2『トミー』 | 空閨残夢録

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デカダンよりデラシネの戯言











 モッズ・カルチャーを代表する英国のロック・バンドのザ・フー(The Who)は、当初はスモール・フェィセズのちにフェィセズと改名して1964年から活動しているグループ。1969年に発表した4枚目のアルバムの『ロック・オペラ/“トミー”』でロック・オペラというジャンルを確立する。




『ロック・オペラ/“トミー”』は、オーケストラとの共演による映像化、さらにブロードウェイでのミュージカル化と形を変えながら発表されていくが、1975年にケン・ラッセル監督が映画化してカンヌ国際映画祭に出品するや一大センセーションを巻き起こす。ザ・フーのピート・タウンゼンはアカデミー賞の音楽賞にノミネートされ、主演のアン=マーグレットがゴールデン・グローブ賞主演女優賞を受賞した。



 主人公のトミー役をザ・フーのロジャー・ダルトリーが演じ、トミーの母親役にアン=マーグレット、義父役にオリバー・リード、ピンボールの魔術師をエルトン・ジョン、マリリン・モンローを崇拝するカルト教団伝道師にエリック・クラプトン、麻薬の女王にティナターナー、心理学専門医にジャック・ニコルソンなどの豪華キャストを配している。




 ケン・ラッセルは監督と脚本も手がけ、ピート・タウンゼンは原案はもとより音楽監督としてスタッフに加わる。さて、物語は、冒頭で、多分、ロンドンの街にドイツ軍のロケット弾の空襲下、主人公トミーの父と母が逃げ惑う場面から始まる。父はやがて飛行機に乗り戦争に行くが戦死してしまう。母は軍事工場で働きながら、終戦の日にトミーを出産する。




 やがて母は再婚するのだが、間が悪く戦死した筈の旦那が帰って来てしまい、トミーの義父が本当の父親を殺す場面を目撃してしまうことで、トミーはこの衝撃から心を閉ざしてしまい、見えない、聞こえない、話せない、の三重苦の少年となり、やがて成人となり心と精神を回復していくお話なのだが、母と義父はトミーを治すために新興宗教とか、妖しい妖術使いみたいな麻薬の魔女みたいな人物にも接近してトミーの回復を願う。










http://youtu.be/CfqmLj5tC0g



 ボクは個人的にエリック・クラプトンのカルト新興宗教の伝道師が登場する場面が好きである。崇拝するのはマリリン・モンローで、信者たちはモンローの仮面をかぶり、神輿のようにモンローの偶像を担ぐシーンがとても面白い演出である。



 天才ピンボール使いのトミーと対決するピンボールの魔術師を演じるエルトン・ジョンの登場する場面では、エルトンの歌唱が今ひとつ響いていこないなのがチョイト不満もあるが、奇妙奇天烈ながら壮大なロック・オペラに誰もが魅了されるエンターテイメントであることは間違いない作品。









http://youtu.be/ikNM-khrGsM