リキュール四方山話 その2『ガリアーノ』 | 空閨残夢録

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 イタリアのトスカーナ州リヴォルノ市に、薬草や香草を主体にした酒、つまりハーブ系リキュールの「ガリアーノ」がある。このお酒は1897年にアルトゥーロ・ヴァッカリによって開発された。



 今ではこのリキュールは世界のバーやレストランでどこでもおかれている。酒瓶が極端に長くて、タワーみたいな形状も特徴的で、色はサフランのような黄金色に輝き美しい。



 ガリアーノの香味成分は、アニス(西洋茴香)、ジュニパーベリー(杜松の実)、ヤロー(西洋のこぎり草)に、特筆すべきはバニラの風味が特に強いことにある。



 ほかにベリー類の花や果実のエッセンスもあるがレシピは秘伝で推察するしかない。西洋のリキュールのほとんど全てはレシピは秘伝であり秘匿されているのが実情である。



 ガリアーノの酒名は、1895-96年のイタリアとエチオピアの戦争で活躍した英雄ジュゼッペ・ガリアーノ少佐からとられたと伝わる。美しいボトルのデザインは、ローマなどの寺院などでみられるコリント式の円柱から創作されたようだ。


 酒の風味には、まずバニラの香り、微かなミント香、チョコレート、キュンメル、キュラソー、アニスなどの香りが含まれている。芳香の奥行は香水の如き製品でもある。



 バニラ風味のルキュールでほかにも有名なのが、同じイタリア産の「ストレガ」である。こちらはナポリの北にあるベネヴェント町の酒で、ストレガとは魔女を意味している言葉。この薬草酒にはふさわしいネーミングでもあろう。







 イタリアの詩人や芸術家たちは、これらの酒を“太陽の光の溶液”と讃えた。これらバニラ香のリキュールはイタリアの独擅場といった感があるハーブ・リキュールでもある。



 ボクもこのガリアーノは好きな酒で、主にオレンジ・ジュースなどに風味付けして飲んでいる。カクテルでは「スクリュー・ドライバー」というのがあるが、これにガリアーノをエッセンスしたのが「ハーヴェイ・ウォールバンガー」というカクテルである。



 このハーヴェイ・ウォールバンガーを和訳すると“壁たたきのハーヴェイ”というネーミングであるけれども、伝説的にもおもしろいエピソードでもある。それは、サーファーのハーヴェイが好きなカクテルで、ついつい飲み過ぎて壁にぶつかりながらバーから帰ったのでネーミングされたらしい。





 デザートならば、フルーツのマセドワーヌにエッセンスにすると大人の味わいになる。バニラの風味が誘惑的に香るオリエンタルな味わいだ。フルーツのマセドワーヌとは、日本でいえば、いわゆるフルーツポンチであり、マケドニア風のデザートのことである。