アナタはなぜチェックリストを使わないのか? | 後藤組社長 後藤茂之のブログ

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アトゥール・ガワンデ著「アナタはなぜチェックリストを使わないのか?」
 
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仲間の経営者が読んでいるのをFacebookで知って、自分も購入して読んでみました。
この筆者は外科医であり、自分の手術や、自分が関わったWHOの手術関連の死や害を減らすための世界的なプログラムを通して医療の現場でチェックリストが、先進国か途上国に関わらず、どんなに効果があるのか、そしてそれだけ効果があるのになぜチェックリストが普及しないのか考察が書かれてあります。
特には、ヴァン・ヘイレンのM&M’sチョコレートの逸話は興味深かったです。
これを読んで、社内でもっとチェックリストが必要だということを実感しました。
幹部の課題図書として必須です。
 
以下抜粋
 

改めて周りを見渡してみると、アメフトの戦略や劇場のセットなど、ありとあらゆるところにチェックリストがあることに気づいた。ある日のラジオで、ロックミュージシャンのデイビッド・リー・ロスの逸話を聞いた。ヴァン・ヘイレンのボーカルを務める彼は、コンサートの契約書に「楽屋にボウルいっぱいのM&M’sチョコレートを用意すること。ただし、茶色のM&M’sは全て取り除いておくこと。もし違反があった場合はコンサートを中止し、バンドには報酬を満額支払うこと」という事項を必ず含めるそうだ。実際、ロスが茶色のM&M’sを見つけてコロラド州でのイベントを中止したこともある。一見、有名人にありがちな理不尽なわがままに聞こえるが、詳しく聞いてみると見事な方策だということがわかった。<中略> 「もし楽屋で茶色いM&M’sを見つけたら、全てを点検しなおすんだ。すると必ず問題が見つかる」それが命に関わることだってある。コロラド州のイベントでは、興行主が重量制限を確認しておらず、セットは会場の床を突き破って落ちてしまうところだった。

 

チームメンバーが毎回のように替わってしまうのでは、チームワークの良し悪しが運任せになってしまうのも仕方がないように思える。だが、そんな状況でもチームワークを良くする方法というのが、実はあるのかもしれない。トロント、ジョンズ・ホプキンズ、カイザーのチェックリストには、チームワークを向上させるためのチェック項目がいくつか含まれていた。

 

ブアマン氏いわく、チェックリストを作るにあたって決めなければならないポイントがいくつかある。まず、いつチェックを行うか、つまり一時停止点をはっきりと決めないといけない。警告灯の点灯やエンジンの停止などのように、それが明らかな場合もあるが、そうでない場合ははっきりさせておく必要がある。また、「行動のち確認」のチェックリストにするか、「読むのち行動」のチェックリストにするかも決めなければならない。前者では、まず各自に知識と経験を元に仕事をしてもらう。そして一時停止点に到達したら、なすべきことが全てなされたかをチェックする。後者では、確認しながら順番に手順をこなしていく。料理のレシピなどは後者に当たる。

チェックリストは長すぎてはいけない。原則として項目の数は五個から九個にしておくと良い。人間の脳が一度に保持できるのもそれくらいだと言われている。

 

私たちの作った手術用チェックリストは、これらの条件を多少は満たしていた。確かにもっと項目を削り、不明瞭な箇所をわかりやすくする必要はあるが、改善するのは難しくないだろう。だが、もう一つ、とても重要な条件があるとブアマン氏は言う。必ず実世界で試用する必要があるというのだ。たとえどれだけ慎重に設計し、どれだけ検討を重ねても、現実は絶対に思った以上にややこしい。ブアマン氏の初稿も、実践でテストするといつもボロボロにされてしまうそうだ。なぜそうなったのかを調べ、改良し、チェックリストが安定して機能するまでテストを重ねる必要がある。

 

誤解されがちだが、チェックリストはマニュアルではない。高層ビルの建設用であれ、飛行機のトラブル解決用であれ、すべての手順を詳細に説明するものではない。チェックリストは、熟練者を助けるためのシンプルで使いやすい道具なのだ。素早く使えて、実用的で、用途を絞ってあるという特性ことが肝要だ。だからこそ有効で、だからこそ何千人もの乗客の命を救えたのだ。

 

必須ではない項目は徹底的に取り除く必要があった。

これが1番難しかった。簡潔さと有効性はどうしても背反することが多い。項目を削りすぎると効果はないが、長すぎても使ってもらえない。ある人が必須と考えるものも、他の人から見たら不要かもしれない。

 

チェックリストは手間がかかるし、面白くない。怠慢な私たちはチェックリストが嫌いなのだ。だが、いくらチェックリストが面倒でも、それだけの理由で命を救うこと、さらにお金を儲けることまで放棄してしまうだろうか。原因はもっと根深いように思う。私たちは、チェックリストを使うのは恥ずかしいことだと心の奥底で思っているのだ。本当に優秀な人はマニュアルやチェックリストなんて使わない、複雑で危険な状況も度胸と工夫で乗り切ってしまう、と思い込んでいるのだ。

「優秀」と言う概念自体を変えていく必要があるのかもしれない。