GTBコンサルティング 平賀 正志(中小企業診断士) -17ページ目



「そんなことは、業界の常識なんだよ。そんなのも知らないで、よくコンサルティングなんてやってるよな」




と、とある経営者様に言われたことがあります。




しかし、その会社(製造小売業態の会社でした。仮に「A社」としましょう)は3期連続赤字経営。売上が完全に頭打ちで、不況分を差し引いても毎期目減りしてきていました。


その改善案として、他業界で行われているマーケティング手法を取り入れて、新規顧客開拓を行い、目減り分を取り戻すようにしてみてはどうかと経営者様に提案しましたら、




「そんなやり方は、我々の業界ではやらない。やり方は業界では既に固まっている」




とおっしゃり、冒頭の言葉が私に発せられたのです。


いろいろデータを揃えて、提案を繰り返しましたが、結局A社様に納得していただくことはできず、前に進むことは叶いませんでした。







その「業界のやり方」が誰もに対して等しく利益をもたらしているなら、私は反論しません。

しかし、A社は赤字なのです。ついでに言えば、業界全体でも利益を多く出していらっしゃるところは少ない。




だとしたら、その「常識」とされるやり方とやらを変えるしか、道はないのでは?と誰しも考えるのではないでしょうか。自分の会社が儲からない「常識」を、一生懸命守っていて、何の役に立つのでしょう?




もちろん、長らく守られてきた伝統を大切になさるお気持ちは理解しますし、理解すべきです。

しかし、それが利益をもたらさなくなったら、もうそのやり方は時代にそぐわなくなっている可能性が高いのです。それは、真正面から受け止めなくてはなりません。




「利益を生まない」とはどういうことなのか、経営者様がお困りになるだけではないはずです。会社が成り立っていることで、並列している全てのことに困難をもたらすのです。従業員の方々の生活を脅かし、取引先に不安を与え、取引金融機関の不信を招きもします。




「自分で作った会社だ、どうなろうと自分の勝手だ」




とおっしゃっても、もちろん構いません。それでご自身が不幸になられるだけならば。

しかし、大抵の場合は、それだけで留まることはありません。




ですので、何かがうまく走っていない時は、「常識だ」「当たり前だ」と思っていることを、少し斜めから見るなどして、疑ってかかってみてはいかがでしょうか。


案外、あっさりと問題解決の筋道が見えたりするものです。




経営者の皆様は、確固たる信念でもってして、現在の会社や事業をお始めになったはずです。そしてそこに大きな社会的責任が伴うことをよく理解された上で、その事業を続けてこられたに違いありません。私はそういう経営者様の心意気に大いなる敬意を払っております。




ですが、それ故に、「世の中の全てのものは、必ず変わっていくのだ」という原理原則を受け入れて、長らく繁栄をしていただきたいと強く願い、その支援をさせていただいています。


その心意気を無為にしていただきたくありませんから。





迷いやお困りごとなどありましたら、是非ご相談いただきたいと思います「常識」にとらわれることなく、「合理的に」問題解決への道を一緒に探っていきませんか?








今回のコラムは、経営改善のためのヒントというよりは、コンサルティングの領域ではほとんど見過ごされているけれど、私自身が提言していきたいと考えていることを書いてみます。








一般的に経営者様や我々コンサルタントは、経営そのものやそれが行われる職場環境・心理的要因、そしてそれらが発揮される市場などについては大変な関心を持ち、日々考察と研究を繰り返しています。




しかし、そこで働く従業員の方々の生活環境(もちろんそれには経営者様ご自身の生活環境も含めます)のことは、なかなか頭が回らない、もしくは完全に考慮の外、であるのが現状でしょう。




ですが、従業員の方々の生活環境を経営者が気に掛けることで、企業(事業所)全体の業績向上につながるのなら、「ちょっと見直してみようか」と思われるのではないでしょうか。






従業員の方々の業務パフォーマンスが上がらない時、経営者の皆様は、その原因をどこに求められるでしょうか?




「当人の意欲のなさ」と簡単に決め付けてはいませんか?




確かにそれが直接の原因かも知れません。しかし、根本的な原因が別にあって、それが「意欲のなさ」につながっていることも大いにある、ということも考慮すべきです。


例としては、「家庭で何らかのトラブルを抱えている」といったようなことが挙げられます。


そういう状態で「仕事の時間帯にはそれを全く頭から消し去って良い仕事をしろ」と言われて出来る方はどのくらいいるでしょうか。もし経営者ご自身が、私的なトラブルに悩んでいらしたとしたら、社業に100パーセント打ち込めますか?私はきっと無理だろうと思います。


家庭内でうまくいかないことがあってそれに腹を立て、仕事場で八つ当たりしたり、そこまで行かないにせよ、従業員の方をぞんざいに扱ったり、取引先との商談が上の空で行われたり、などということがきっと起こるのではないでしょうか。

いや、既に起こっていたかも知れません。




そのくらい日常の生活環境というものは大切であり、仕事と切り離しては考えられないものであるはずです。




このことについて統計資料が存在するかどうかわかりませんが(多分ないと思われる)、家庭や私生活の充実が好成績に結びつくスポーツ選手の数多の例や、子供の学校生活の充実度も家庭での生活環境の充実度に左右されることが多いといった例を見れば、かなりの確立で当たっていると言って差し支えないと考えます。




もちろん、従業員の方々は自立した個人であるのだから、そんなことを考える必要はないだろう、というご意見もあるかもしれません。自己責任であるとしても差し支えはもちろんありません。


しかし、そのために会社が不利益を被っているのだとしたら、何らかの手は打たなければなりません。それを当人任せにしていて必ず解決するなら、それでも結構でしょう。ですが、経営者の皆様の側から改善を促すほうがきっと解決にかかる時間ははるかに短くなると思われます。


よって、何か従業員の方々のことで気にかかることがあることがあれば、興味本位ではなく、真摯な態度で相談を持ちかけられてみてはいかがでしょうか。



私的なことは誰にとっても大変デリケートなことです。触れられたくない部分もたくさんあることは間違いありません。よって、従業員の方々の私的なことをあれこれと詮索するのは、憚られることではあります。


しかし、問題を抱えている時には何らかの兆候があるものです。

それを見抜く目敏さや仲間を大事にしたいと思う大きな心が経営者の皆様にあるのかどうか。これも企業(事業所)発展のための大切な一部分であると私は思います。






経営者の皆様には、単に商売や事業展開が上手であるだけでなく、人を育て見守ることのできる「師」のような方々であっていただきたいと切に願っております。そうであれば、そこに働く従業員の方々は、「師」である経営者の皆様に見守られていることに安心し、生き生きと動き、会社(事業所)に活気をもたらしてくれるでしょう。



また経営者の方々がそのような態度であれば、従業員の方々の側で仮に何かしら不都合なことが起こった時にでも、すぐに相談して「会社やお店には迷惑をかけまい」と彼ら自身も問題解決のために努力する姿勢が身に付くはずです。




もし、従業員の方々のことを十分に気にかけられていない、というのであれば、今日からでも結構ですから、少しじっくりと様子を窺ってみられることをおすすめします。何かしら徐々に掴めていきます。





もちろん私も従業員の方々の「兆候」を見つけるポイントやコミュニケーションのポイントなどのご提案はさせていただけますので、ぜひご相談ください。






今日は、個人事業の方ですと「上半期末」、3月末決算の会社の方ですと「第一四半期末」ということで、在庫や資産の棚卸をされたところも多かったのではないかと思います。


結果は如何だったでしょうか。



「貸借対照表上の在庫や資産の数値」と「現物残高」は合っていましたか?


合う合わないだけでなく、たくさん不要なものを抱えてしまっている、もしくは全然持つべき在庫残高よりもちょっとしか在庫として準備できてにいない、ということもあったのではないでしょうか。


ともかく、そうやって過不足を把握はされていることでしょう。





では、「会社(事業所)の業務そのものの過不足」を考えてみたことはおありでしょうか。




「何だかよくわからないけれど、ある業務にとても時間や人手を費やしているような気がする」


「いつも忙しいという思うばかりで、機械やパソコンを導入しても楽になった気がしない」




などと思うことはありませんか。



そのような場合、すぐに解決策に至るわけではありませんが、「業務の棚卸」をなさってみることをおすすめします。




 「誰が」


 「何の業務を」


 「いつ」


 「どこで」


 「何分くらいかけて」


 「何を使って(道具)」行っているのか





を逐一調べ出してみるわけです。


「経営者が全く把握していない作業を従業員の方々が行っている」なんてこともあるかもしれません。その反対に、「この作業はAさんがやっていると思っていたが、実際はBさんがやっていたのか」なんてこともあるでしょう。




そうやって見ると、




 「重複する作業」


 「二度手間」


 「使われていない機材」


 「動きの少ない時間帯」


 「仕事の割り当ての多い人・少ない人」





などの「ムダやムラ」が見えてきます。これを減らしていくのが、「業務の効率化」であり、それが目に見えてわかるようになれば「業務改善がなされた」ということになります。




効率化のポイントは次の4つがあり、その4つのアクションを英語で表した頭文字から、ECRS」と言っています。




 E=Eliminate (イリミネイト:排除する=無くせないか)


 C=Combine (コンバイン:結合する/統合する=一緒にできないか、まとめられないか)


 R=Rearrange (リアレンジ:再配置する/交換する=順番を変えられないか、置き換えられないか)


 S=Simplify (シンプリファイ:簡素にする=単純にできないか、簡単にできないか)




棚卸した業務をこれらの4つの視点を見直してみるのです。E→C→R→Sの順で見てみましょう。


そうすると、日々当たり前のように行っている作業でも、

 

 ・やらなくていいこと


 ・まとめてやったほうが早いこと


 ・別の方法で早く終わらせられること


 ・もっと簡便な方法で済ませて問題ないこと




などに気づくでしょう。それを徹底することで、会社(事業所)の中でもっと注力すべきところに時間・労力・機材を集中させることが可能になり、業績向上につながっていきます。




業務の棚卸は、決して楽な作業ではないかもしれません。「そんな余裕ないよ」という経営者の方も実際多いです。しかし、これを行うことが「業務改善の第一歩」になります。あとは、「ECRS」を用いて、それを目に見える成果にしていくのです。従業員の方と一緒に、半ばゲーム感覚でやってみてもよいでしょう。きっと従業員の方々の意識改革にもつながっていくはずです。



是非、気が付いた部分から「業務の棚卸」と「ECRS」、行ってみられることをおすすめします。