こんにちは。
陸上・世界選手権、ラグビーワールドカップ、そして、1日にはWBA世界ライトフライ級タイトルマッチ、、、
スポーツの秋ですね。
とくに、ラグビーは、ドラマで見た「ノーサイド・ゲーム」の後だけに、興奮しながら「ニュース」を見ています。(笑)
残念ながら、リアルタイムで観ることができないのがつらいところです。
今日の過去問は、平成25年度問28の問題を○×式でやりたいと思います。
不動産の取得時効と登記に関する記述について、民法の規定及び判例に照らし、正誤判定をしてみましょう。
それでは、早速。
問題
不動産を時効により取得した占有者は、取得時効が完成する前に当該不動産を譲り受けた者に対して、登記がなければ時効取得をもって対抗することができない。
正解は?
×
今日の問題は、「不動産の取得時効と登記」に関する問題です。
1問目は、この問題なんですが、、、
「不動産の時効取得者」VS「時効完成前の譲受者」
問題では、時効取得者は、「登記がなければ時効取得をもって対抗することができない。」と言っています。
どうですか って問題ですね。
この問題のポイントは、「取得時効が完成する前に当該不動産を譲り受けた者に対して、」です。
「取得時効が完成する前」ってことは、譲渡人=譲受人ってことになります。
つまり、取得時効完成時には、譲受人は、元の所有者扱いってことです。
元の所有者ってことは、時効取得者との関係では、当事者同士ってことです。
と言うことは、、、
昭和32(オ)344 土地所有権確認等請求昭和35年7月27日 最高裁判所第一小法廷 判決 棄却 東京高等裁判所
時効による権利の取得の有無を考察するにあたつては、単に当事者間のみならず、第三者に対する関係も同時に考慮しなければならぬのであつて、この関係においては、結局当該不動産についていかなる時期に何人によつて登記がなされたかが問題となるのである。
そして時効が完成しても、その登記がなければ、その後に登記を経由した第三者に対しては時効による権利の取得を対抗しえない(民法一七七条)のに反し、第三者のなした登記後に時効が完成した場合においてはその第三者に対しては、登記を経由しなくとも時効取得をもつてこれに対抗しうることとなると解すべきである。
時効取得者は、「登記がなければ時効取得をもって対抗することができない。」と言っている点で間違いってことです。
問題
不動産を時効により取得した占有者は、取得時効が完成した後に当該不動産を譲り受けた者に対して、登記がなければ時効取得をもって対抗することができず、このことは、その占有者が、その後さらに時効取得に必要な期間、占有を継続したとしても、特段の事情がない限り、異ならない。
正解は?
×
2問目は、この問題です。
この問題は、
「不動産の時効取得者」VS「時効完成後の譲受者」
問題前半部分は、良いですよね。
1問目の判例にも出ていましたので。。。
問題
「不動産を時効により取得した占有者は、取得時効が完成した後に当該不動産を譲り受けた者に対して、登記がなければ時効取得をもって対抗することができず、」
↓
判例
「そして時効が完成しても、その登記がなければ、その後に登記を経由した第三者に対しては時効による権利の取得を対抗しえない(民法一七七条)」
民法
(不動産に関する物権の変動の対抗要件)
第百七十七条 不動産に関する物権の得喪及び変更は、不動産登記法その他の登記に関する法律の定めるところに従いその登記をしなければ、第三者に対抗することができない。
と言うことで、2問目の問題点は、
「このことは、その占有者が、その後さらに時効取得に必要な期間、占有を継続したと しても、特段の事情がない限り、異ならない。」
この部分ですね。
気になるところは、「その占有者が、その後さらに時効取得に必要な期間、占有を継続した」場合はどうなのか ってところです。
1問目の考え方で行けば、「時効完成後の譲受者」ではあるけれども、「その占有者が、その後さらに時効取得に必要な期間、占有を継続した」って考えれば、、、
「時効完成後の譲受者」=当事者、そうなりませんか
と言うことは、、、
昭和34(オ)779 所有権移転登記手続履行請求昭和36年7月20日 最高裁判所第一小法廷 判決 棄却 仙台高等裁判所
原判決の確定した事実関係によれば、本件山林は、もとa部落の所有するところであつたが、被上告人(控訴人、原告)の被承継人第一次D神社は明治三八年五月二九日より大正四年五月二九日まで一〇年間これを所有の意思をもつて平穏、公然、善意、無過失に占有を継続し、ために大正四年五月二九日に取得時効が完成したもののその登記を経ることなく経過するうち、同一五年八月二六日上告人(被控訴人、被告)がa部落より右山林の寄附をうけてその旨の登記を経由するに至つたところ、第一次D神社はさらに右登記の日より昭和一一年八月二六日まで一〇年間引き続き所有の意思をもつて平穏、公然、善意、無過失に占有を継続したというのである。
されば、前記第一次D神社は右時効による所有権の取得をその旨の登記を経由することなくても上告人に対抗することができること前示当裁判所の判例に照し明らかであり、従つて、右第一次D神社の包括承継人である被上告人もまた同一の主張をなしうること論を待たない。
前示当裁判所の判例は、1問目で見た判例です。
問題後半の「その占有者が、その後さらに時効取得に必要な期間、占有を継続したとしても、特段の事情のない限り、異ならない」って記述は、間違いってことですね。
問題
不動産を時効により取得した占有者は、取得時効が完成した後にその不動産を譲り受けて登記をした者に対して、その譲受人が背信的悪意者であるときには、登記がなくても時効取得をもって対抗することができるが、その譲受人が背信的悪意者であると認められるためには、同人が当該不動産を譲り受けた時点において、少なくとも、その占有者が取得時効の成立に必要な要件を充足していることについて認識していたことを要する。
正解は?
×
3問目は、この問題ですが、、、いや、長い(笑)
この問題は、
「不動産の時効取得者」VS「時効完成後の譲受者」
ただ、「時効完成後の譲受者」が「背信的悪意者」ってことのようで、、、
問題前半では、「背信的悪意者」に対しては、「登記がなくても時効取得をもって対抗することができる」と言っています。
ここは正しい記述です。
不動産の二重譲渡のような対抗関係が生じる場合は、公平の観点から、譲受人の「善意・悪意」にかかわらず、先に登記を備えた方が優先されます。
つまり、登記の有無で画一的に処理されるのが原則です。
背信的悪意者は、単に事情を知っているだけではなく、相手方を困らせる目的で譲渡を受けている者ってことですから、悪意性が強い人ってことになります。
このような人を保護する必要はありませんよね。
ですので、「背信的悪意者」に対しては、登記なくして対抗することができるってことです。
問題は、後半です。
「その譲受人が背信的悪意者であると認められるためには、同人が当該不動産を譲り受けた時点において、少なくとも、その占有者が取得時効の成立に必要な要件を充足していることについて認識していたことを要する。」
背信的悪意者と認められるための要件ですね。
早速、確認してみます。
平成17(受)144 所有権確認請求本訴,所有権確認等請求反訴,土地所有権確認等請求事件平成18年1月17日 最高裁判所第三小法廷 判決 その他 高松高等裁判所
甲が時効取得した不動産について、その取得時効完成後に乙が当該不動産の譲渡を受けて所有権移転登記を了した場合において、乙が、当該不動産の譲渡を受けた時点において、甲が多年にわたり当該不動産を占有している事実を認識しており、甲の登記の欠缺を主張することが信義に反するものと認められる事情が存在するときは、乙は背信的悪意者に当たるというべきである。
取得時効の成否については、その要件の充足の有無が容易に認識・判断することができないものであることにかんがみると、乙において、甲が取得時効の成立要件を充足していることをすべて具体的に認識していなくても、背信的悪意者と認められる場合があるというべきであるが、その場合であっても、少なくとも、乙が甲による多年にわたる占有継続の事実を認識している必要があると解すべきであるからである。
後半の「少なくとも、その占有者が取得時効の成立に必要な要件を充足していることについて認識していたことを要する。」って記述は間違いってことになります。
譲受人が「背信的悪意者」と認められるには、少なくとも、占有者が多年にわたる占有継続の事実を認識している必要があると言っています。
問題
不動産の取得時効の完成後、占有者が、その時効が完成した後に当該不動産を譲り受けた者に対して時効を主張するにあたり、起算点を自由に選択して取得時効を援用することは妨げられない。
正解は?
×
4問目は、この問題。。。
取得時効の完成後の話です。
問題では、「占有者が、時効完成後に不動産を譲り受けた者に対して時効を主張するにあたり、起算点を自由に選択して取得時効を援用することは妨げられない。」と言っています。
起算点を自由に選択して
援用することは妨げられない
良いのか
まぁ、ダメでしょうね。(笑)
判例は、1問目と同じものです。
しからば、結局取得時効完成の時期を定めるにあたつては、取得時効の基礎たる事実が法律に定めた時効期間以上に継続した場合においても、必らず時効の基礎たる事実の開始した時を起算点として時効完成の時期を決定すべきものであつて、取得時効を援用する者において任意にその起算点を選択し、時効完成の時期を或いは早め或いは遅らせることはできないものと解すべきである。
まぁ、当然と言えば当然なんですが、「起算点を自由に選択して取得時効を援用することを妨げない」って記述は間違いってことです。(笑)
問題
不動産の取得時効の完成後、占有者が登記をしないうちに、その不動産につき第三者のために抵当権設定登記がなされた場合であっても、その占有者が、その後さらに時効取得に必要な期間、占有を継続したときは、特段の事情がない限り、占有者はその不動産を時効により取得し、その結果、抵当権は消滅する。
正解は?
○
本日、最後の問題です。
この問題も「取得時効の完成後」の話です。
問題を確認してみましょう。
占有者が登記をしないうちに、
その不動産につき第三者のために抵当権設定登記がなされた場合
「その占有者が、その後さらに時効取得に必要な期間、占有を継続したときは、特段の事情がない限り、占有者はその不動産を時効により取得し、その結果、抵当権は消滅する。」
何やら先ほど見た内容に近いですね。
前に見たのは、「譲渡」、今回は、占有者が登記を経由しないうちに第三者に「抵当権設定登記」がなされています。
そして、「その占有者が、その後さらに時効取得に必要な期間、占有を継続したときは、」
この結論は、、、
譲渡の場合は、「時効取得」出来ました。
抵当権の場合はどうか
これ、問題に答えが書かれてますね。
譲渡と同じように「時効取得」できます。
と言うことは、必然的に「抵当権は消滅する。」って結果になりますよね。
平成22(受)336 第三者異議事件平成24年3月16日 最高裁判所第二小法廷 判決 棄却 福岡高等裁判所 宮崎支部
不動産の取得時効の完成後、所有権移転登記がされることのないまま、第三者が原所有者から抵当権の設定を受けて抵当権設定登記を了した場合において、上記不動産の時効取得者である占有者が、その後引き続き時効取得に必要な期間占有を継続したときは、上記占有者が上記抵当権の存在を容認していたなど抵当権の消滅を妨げる特段の事情がない限り、上記占有者は、上記不動産を時効取得し、その結果、上記抵当権は消滅すると解するのが相当である。
重要なのは、「不動産の時効取得者である占有者が、その後引き続き時効取得に必要な期間占有を継続」するってことです。
時系列で、、、
不動産の取得時効の完成後→登記=時効取得
所有権移転登記がされることのないまま、
第三者が原所有者から抵当権設定登記→抵当権が優先
そして、不動産の時効取得者である占有者が、
その後引き続き時効取得に必要な期間占有を継続→抵当権消滅
それぞれに取得できるタイミングはあるんですね。
なかなか面白かったとは思いますが、基本をきちんと覚えとけば本試験でも対処できるんじゃないかと思います。
今日も最後までありがとうございました。
んでねぃ。
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