こんにちは。
そろそろ「穴埋め問題」も終わりです。
今日は、民法の組合せ問題を「穴埋め」でやってみます。
冷静に考えれば問題はありませんよ。
今日の過去問は、平成21年度問33の問題をやりたいと思います。
次の文章は、最高裁判所の判決文の一節です。文中の空欄[ ア ]~[ ウ ]に入る語句を検討してみましょう。
それでは、早速。
問題
「賃貸人の承諾のある転貸借においては、転借人が目的物の使用収益につき賃貸人に対抗し得る権原(転借権)を有することが重要であり、転貸人が、自らの債務不履行により賃貸借契約を解除され、転借人が転借権を賃貸人に対抗し得ない事態を招くことは、転借人に対して目的物を使用収益させる債務の履行を怠るものにほかならない。
そして、賃貸借契約が転貸人の債務不履行を理由とする解除により終了した場合において、賃貸人が転借人に対して直接目的物の返還を請求したときは、転借人は賃貸人に対し、目的物の返還義務を負うとともに、遅くとも右返還請求を受けた時点から返還義務を履行するまでの間の目的物の使用収益について、不法行為による損害賠償義務又は不当利得返還義務を免れないこととなる。
他方、賃貸人が転借人に直接目的物の返還を請求するに至った以上、転貸人が賃貸人との間で再び賃貸借契約を締結するなどして、転借人が賃貸人に転借権を対抗し得る状態を回復することは、もはや期待し得ないものというほかなく、[ ア ]の[ イ ]に対する債務は、社会通念及び取引通念に照らして[ ウ ]というべきである。
したがって、賃貸借契約が転貸人の債務不履行を理由とする解除により終了した場合、賃貸人の承諾のある転貸借は、原則として、賃貸人が転借人に対して目的物の返還を請求した時に、[ ア ]の[ イ ]に対する債務の[ ウ ]により終了すると解するのが相当である。」
(最三小判平成9年2月25日民集51巻2号398頁以下)
いつものごとくサラッと目を通しましょう。
今日は、判例の「穴埋め」問題です。
珍しく、「民法」の語句の組合せ問題からです。
まぁ、そう難しいものではありません。
人間関係が読み取れれば、すぐに全部が結びつきますから。(笑)
早速、見ていきましょう。。。
今日の問題は、「賃貸人の承諾のある転貸借」に関する問題です。
[ ア ]~[ ウ ]の語句は、すべて関連しているので、解答は最後に回します。(笑)
最初に、人間関係を確認しておきます。
転貸借ですから、登場人物は3人ですね。
賃貸人、そして賃借人であり転貸人、それと転借人です。
つまり、転貸借は、簡単に言うと「又貸し」です。
今日の問題は、「賃貸人の承諾のある転貸借」ですから、賃借人と賃貸借契約をしている賃貸人が、その「又貸し」を承諾しているってことです。
解りやすいように、それぞれにイニシャルを振ってみます。
賃貸人:Hさん
賃借人兼転貸人:Aさん
転借人:Yさん
こんな感じで、、、
それでは最初に条文を確認しておきます。
(賃借権の譲渡及び転貸の制限)
第六百十二条 賃借人は、賃貸人の承諾を得なければ、その賃借権を譲り渡し、又は賃借物を転貸することができない。
2 賃借人が前項の規定に違反して第三者に賃借物の使用又は収益をさせたときは、賃貸人は、契約の解除をすることができる。
1項に、「賃借人は、賃貸人の承諾を得なければ、賃借物を転貸することができない。」とあります。
と言うことは、今日のこの問題は、きちんとした手続に基づいて転貸していると言うのが解ります。
引き続き、、、
(転貸の効果)
第六百十三条 賃借人が適法に賃借物を転貸したときは、転借人は、賃貸人に対して直接に義務を負う。この場合においては、賃料の前払をもって賃貸人に対抗することができない。
2 前項の規定は、賃貸人が賃借人に対してその権利を行使することを妨げない。
転貸に関する条文は、見たところこの2つです。
第六百十三条前段に、「賃借人が適法に賃借物を転貸したときは、転借人は、賃貸人に対して直接に義務を負う。」と規定しています。
「転借人は、賃貸人に対して直接に義務を負う。」とはありますが、反対の規定はありません。
つまり、転借人が転貸借上の権利、地位を賃貸人に対して主張することはできないと言うことです。☚ここポイント
転借人Yさんは、賃借人兼転貸人のAさんにしか主張することができないと言うことですね。
ここをちょっと砕いて見ますね。
今日の問題は、転貸借、「又貸し」です。
つまり、「賃借人兼転貸人のAさんが賃貸人のHさんから借りている」=「賃貸借契約」
だから「賃借人兼転貸人のAさんは、転借人のYさんに又貸しができる」=「転貸借契約」。
ここ大原則なんですが、「賃貸借契約」がある、、、だから、「転貸借契約」を結べる訳です。
と言うことは、「賃貸借契約」がこけたらどうなるのか ってところが今日の判例の内容です。
これは、考えれば解りますよね。。。
大元の賃貸借が賃借人(転貸人)Aさんの債務不履行により解除された場合、転貸借は、契約そのものの根拠を失いますよね。
賃貸人Hさんと賃借人Aさんの賃貸借契約には、
それぞれに、
Hさんは、Aさんに目的物を使用収益させる義務があり、逆に、Aさんは、Hさんに賃料を支払義務を負う訳です。
Aさんの債務不履行=賃料の不払い
Aさんが賃料の不払いをしてしまうと大元の「賃貸借契約」が成り立ちません。
「賃貸借契約」が成り立たなくなると、「転貸借」は根拠を失うってのは当然のことです。
つまり、転借人Yさんは、目的物を占有する権原を失うと言うことになる訳です。
転借人Yさんは、賃貸人のHさんに直接義務を負いますが、転貸借上の権利、地位を賃貸人Hさんに対して主張することはできませんから。
ここまで理解で来たら問題の空欄を確認してみます。
2ヶ所ずつですね。
「他方、賃貸人(Hさん)が転借人(Yさん)に直接目的物の返還を請求するに至った以上、転貸人(Aさん)が賃貸人(Hさん)との間で再び賃貸借契約を締結するなどして、転借人(Yさん)が賃貸人(Hさん)に転借権を対抗し得る状態を回復することは、もはや期待し得ないものというほかなく、[ ア ]の[ イ ]に対する債務は、社会通念及び取引通念に照らして[ ウ ]というべきである。」
「したがって、賃貸借契約が転貸人(Aさん)の債務不履行を理由とする解除により終了した場合、賃貸人(Hさん)の承諾のある転貸借は、原則として、賃貸人(Hさん)が転借人(Yさん)に対して目的物の返還を請求した時に、[ ア ]の[ イ ]に対する債務の[ ウ ]により終了すると解するのが相当である。」
解りやすいようにイニシャルを入れてみました。
どうですか
大ヒントです。
どちらの空欄にも「賃貸人(Hさん)が転借人(Yさん)に直接目的物の返還を請求」ってのが書かれています。
すでに、賃料の不払いを起こしたAさんは、いません。
と言うことは、前半の空欄も後半の空欄もAさんの起こしたことに起因することが解ります。
それでは、解答をどうぞ~~~。
[ ア ]は?
転貸人
[ イ ]は?
転借人
[ ウ ]は?
履行不能
参照
「賃貸人の承諾のある転貸借においては、転借人が目的物の使用収益につき賃貸人に対抗し得る権原(転借権)を有することが重要であり、転貸人が、自らの債務不履行により賃貸借契約を解除され、転借人が転借権を賃貸人に対抗し得ない事態を招くことは、転借人に対して目的物を使用収益させる債務の履行を怠るものにほかならない。そして、賃貸借契約が転貸人の債務不履行を理由とする解除により終了した場合において、賃貸人が転借人に対して直接目的物の返還を請求したときは、転借人は賃貸人に対し、目的物の返還義務を負うとともに、遅くとも右返還請求を受けた時点から返還義務を履行するまでの間の目的物の使用収益について、不法行為による損害賠償義務又は不当利得返還義務を免れないこととなる。他方、賃貸人が転借人に直接目的物の返還を請求するに至った以上、転貸人が賃貸人との間で再び賃貸借契約を締結するなどして、転借人が賃貸人に転借権を対抗し得る状態を回復することは、もはや期待し得ないものというほかなく、[ア:転貸人]の[イ:転借人]に対する債務は、社会通念及び取引通念に照らして[ウ:履行不能]というべきである。したがって、賃貸借契約が転貸人の債務不履行を理由とする解除により終了した場合、賃貸人の承諾のある転貸借は、原則として、賃貸人が転借人に対して目的物の返還を請求した時に、[ア:転貸人]の[イ:転借人]に対する債務の[ウ:履行不能]により終了すると解するのが相当である。」
(最三小判平成9年2月25日民集51巻2号398頁以下)
** *ア***イ*** *ウ
1*転貸人*転借人*不完全履行
2*転貸人*賃貸人*履行不能
3*賃貸人*転貸人*履行遅滞
4*賃貸人*転借人*履行遅滞
5*転貸人*転借人*履行不能 ○
最後に問題を簡単に説明します。
賃借人(転貸人)Aさんが賃料を滞納して、賃貸人のHさんが転借人のYさんに目的物の返還を請求した場合、Yさんは、Hさんに目的物を返還する義務が生じます。
裏を返せば、賃借人(転貸人)Aさんが転借人Yさんへ目的物を又貸しするって言う債務を履行できなくなる訳です。
つまり、転貸借契約は、
賃貸人Hさんが転借人Yさんに対して目的物の返還を請求した時に、
「転貸人Aさんの転借人Yさんに対する債務の履行不能」により終了することになります。
今日のところはここまでです。
今日も最後まで有難うございました。
んでまずまた。
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