こんにちは。
今週は、G20。。。
ありがたいことに暴(笑)団体さんも「出勤」自粛とか。。。
何事もなく、実りのあるサミットになることを祈るばかりです。
今日の過去問は、平成25年度問32の問題を○×式でやりたいと思います。
Aは、B所有の甲土地上に乙建物を建てて保存登記をし、乙建物をCが使用している。この場合に関する記述について、民法の規定及び判例に照らして、正誤判定をしてみましょう。
それでは、早速。
問題
Aが、甲土地についての正当な権原に基づかないで乙建物を建て、Cとの間の建物賃貸借契約に基づいて乙建物をCに使用させている場合に、乙建物建築後20年が経過したときには、Cは、Bに対して甲土地にかかるAの取得時効を援用することができる。
正解は?
×
今日も早速始めましょう。
今日の1問目なんですが、、、と、その前に、、、登場人物です。
甲土地所有者 Bさん
甲土地上の乙建物所有者 Aさん(保存登記済)
その乙建物使用者 Cさん
以上、3名がキャストです。(笑)
最初の問題を確認してみます。
・Aさんが、甲土地に建てた乙建物は「正当な権原に基づかない」ものである
・Aさんは、Cさんとの間で建物賃貸借契約を締結し、乙建物をCさんが使用している
この状況下で、問題では、乙建物が建築後20年経過したとき、
「Cさんは、Bさんに対して甲土地にかかるAさんの取得時効を援用することができる」
こう言っている訳ですね。
この内容、ちょっと記憶がありますね。
覚えてますか
時効に関する相談に、アパートの「賃借人」さんがやってきたって問題です。
築25年のアパート。
「賃貸人の先代が、誤って、甲氏の所有地を自己所有地と認識して建ててしまったもの=正当な権原に基づかないもの」
所有者である甲さんが亡くなり、乙さんがそれを相続。。。
ある日、相続人である乙さんがやってきて、、、、、、
こんな問題でしたね。
再度、時効の援用について確認しておきます。
(時効の援用)
第百四十五条 時効は、当事者が援用しなければ、裁判所がこれによって裁判をすることができない。
時効を主張できるのは、「当事者」です。
つまり、今日の問題では、「Aさん」ですね。
Cさんは、「賃借人」で、Aさんと違って取得時効を援用できる当事者ではありません。
つまり、Aさんのように、土地について利害関係を有していれば、「直接的」、
Cさんは、土地ではなく、建物ですので、「間接的」に利害関係を有しているってことです。
判例の結論もその辺を言ってましたよね。
賃借人は、土地の取得時効の完成によつて直接利益を受ける者ではない
↓
土地の所有権の取得時効を援用することはできない
問題
Aが、Bとの間の土地賃貸借契約に基づいて乙建物を建て、Cとの間の建物賃貸借契約に基づいてCに乙建物を使用させている場合、A・B間で当該土地賃貸借契約を合意解除したとしても、特段の事情のない限り、Bは、Cに対して建物の明渡しを求めることはできない。
正解は?
○
今日の2問目です。
・Aさんが、Bさんとの間の土地賃貸借契約に基づいて乙建物を建てている
・Aさんは、Cさんとの間の建物賃貸借契約に基づいて乙建物を使用させている
この場合に、問題では、
「AさんとBさんの間で、土地賃貸借契約を合意解除したとしても、特段の事情のない限り、Bさんは、Cさんに対して建物の明渡しを求めることはできない。」と言っています。
え~、、、この内容、、、記憶ありますね。
ん、ないですか
問題は、「A(賃貸人)・B(賃借人・転貸人)が賃貸借契約を合意解除した場合には、AはそれをC(転借人)に対抗することができる。」って内容でした。
復活の呪文のような判例をご紹介したんですが、、、(笑)
その時は、「建物」でしたが、今回は、「土地」です。
違いはあるのか
昭和35(オ)893 建物退去土地明渡請求 昭和38年2月21日 最高裁判所第一小法廷 判決 棄却 高松高等裁判所
本件借地契約は、右の如く、調停により地主たる上告人と借地人たる訴外Dとの合意によつて解除され、消滅に至つたものではあるが、原判決によれば、前叙の如く、右Dは、右借地の上に建物を所有しており、昭和三〇年三月からは、被上告人がこれを賃借して同建物に居住し、家具製造業を営んで今日に至つているというのであるから、かかる場合においては、たとえ上告人と訴外Dとの間で、右借地契約を合意解除し、これを消滅せしめても、特段の事情がない限りは、上告人は、右合意解除の効果を、被上告人に対抗し得ないものと解するのが相当である。
地主たる上告人=問題では、Bさん
借地人たる訴外D=問題では、Aさん
被上告人=問題では、Cさん
結論としては、正しい肢と言うことになります。
そして、理由なんですが、、、
過去記事に書いてある判例を引っ張り出してきています。
問題に照らしてみます。
転貸人のAさんは、其の転貸借契約の内容に従いて右物件の使用収益を為す権利を有する
其の使用収益は、Bさんに於ても之を認容せさるべからざる
判例の結論では、合意解除することは自由、ただ、他人(転借人)の権利を害する場合には制限される場合があるってことでした。
そして結論、、、
信義則に反するので、Bさんは、合意解除したことを主張して、「Cさんに明渡しを求めることはできない」。
判例では、条文も書かれています。
そちらの方が解りやすいと思います。
(第三者の権利の確定)
第五百三十八条 前条の規定により第三者の権利(Cさん)が発生した後は、当事者(AさんとBさん)は、これを変更し、又は消滅させることができない。
前条の規定
(第三者のためにする契約)
第五百三十七条 契約により当事者の一方(Aさん)が第三者(Cさん)に対してある給付(乙建物の使用)をすることを約したときは、その第三者(Cさん)は、債務者(Aさん)に対して直接にその給付を請求する権利を有する。
2 前項の場合において、第三者の権利は、その第三者が債務者に対して同項の契約の利益を享受する意思を表示した時に発生する。
この2つの条文は、初めて紹介したものです。。。
問題
Aが、Bとの間の土地賃貸借契約に基づいて乙建物を建てている場合、Aが、Cに対して乙建物を売却するためには、特段の事情のない限り、甲土地にかかる賃借権を譲渡することについてBの承諾を得る必要がある。
正解は?
○
今日の3問目です。
・Aさんが、Bさんとの間の土地賃貸借契約に基づいて乙建物を建てている
・そして、Aさんが、Cさんに対して乙建物を売却する
問題では、「売却するためには、特段の事情のない限り、甲土地にかかる賃借権を譲渡することについてBさんの承諾を得る必要がある。」と言っています。
これ、Aさんの乙建物は、Bさんの甲土地の上に建てているものです。
Aさんは、賃貸借契約に基づいて、甲土地を借りている訳ですね。
と言うことは、その甲土地上の乙建物を売るってことは、建物だけ売るってことは出来ませんよね。
「賃借権は別売り」ってことはありませんから。
と言うことは、甲土地はAさんだから貸したのかも知れません。
Bさんとしては、Cさんの素性なんか知る訳はないので、Aさんが説明して「承諾を得る」ってのは、当たり前だと思いませんか
「承諾は不要」って場合、ある日突然、乙建物にヤ○ザさんが住んでいるってことになるかも知れません。
「反社会的勢力には、土地は貸さん。」
そんな貸主さんもいるはずです。
賃貸借契約は、売買契約と違い1回限りものではありません。
契約が継続する限りは、ずっと賃貸人と賃借人の関係をもってお付き合いする関係にあります。
そのため、契約をする上での基本的な関係として、賃貸人と賃借人との間に信頼関係がなければなりません。
ですから、「賃貸人の承諾」は、必要ってことです。
(賃借権の譲渡及び転貸の制限)
第六百十二条 賃借人は、賃貸人の承諾を得なければ、その賃借権を譲り渡し、又は賃借物を転貸することができない。
2 賃借人が前項の規定に違反して第三者に賃借物の使用又は収益をさせたときは、賃貸人は、契約の解除をすることができる。
昭和45(オ)803 建物所有権確認等請求 昭和47年3月9日 最高裁判所第一小法廷 判決 破棄差戻 東京高等裁判所
賃借地上にある建物の売買契約が締結された場合においては、特別の事情のないかぎり、その売主は買主に対し建物の所有権とともにその敷地の賃借権をも譲渡したものと解すべきであり、そして、それに伴い、右のような特約または慣行がなくても、特別の事情のないかぎり、建物の売主は買主に対しその敷地の賃借権譲渡につき賃貸人の承諾を得る義務を負うものと解すべきである。
けだし、建物の所有権は、その敷地の利用権を伴わなければ、その効力を全うすることができないものであるから、賃借地上にある建物の所有権が譲渡された場合には、特別の事情のないかぎり、それと同時にその敷地の賃借権も譲渡されたものと推定するのが相当であるし、また、賃借権の譲渡は賃貸人の承諾を得なければ賃貸人に対抗することができないのが原則であるから、建物の所有権とともにその敷地の賃借権を譲渡する契約を締結した者が右賃借権譲渡につき賃貸人の承諾を得ることは、その者の右譲渡契約にもとづく当然の義務であると解するのが合理的であるからである。
問題
Aが、Bとの間の土地賃貸借契約に基づいて乙建物を建て、Cとの間の建物賃貸借契約に基づいてCに乙建物を使用させている場合、乙建物の所有権をAから譲り受けたBは、乙建物についての移転登記をしないときは、Cに対して乙建物の賃料を請求することはできない。
正解は?
○
今日の4問目です。
・Aさんが、Bさんとの間の土地賃貸借契約に基づいて乙建物を建てている
・Aさんは、Cさんとの間の建物賃貸借契約に基づいて乙建物を使用させている
ここまでは、2問目と同じですね。
続きです。
・乙建物の所有権をAさんから譲り受けたBさん とあります。
と言うことは、土地と建物は同一の所有者Bさんのものになったと言うことです。
この場合に、「Bさんは、乙建物についての移転登記をしないときは、Cさんに対して乙建物の賃料を請求することはできない。」と問題では言っている訳です。
どうですか ってのがこの問題。。。
この問題は、「賃貸人の地位の移転」が論点です。
建物を売買すると必然的に賃貸人の地位は移転します。
ですが、それを賃借人であるCさんに対抗するには、「登記」が必要です。
これは、家賃の「二重支払い」の危険が伴うからですね。
判例を確認してみます。
昭和47(オ)1121 所有権移転登記手続等請求 昭和49年3月19日 最高裁判所第三小法廷 判決 その他 大阪高等裁判所
本件宅地の賃借人としてその賃借地上に登記ある建物を所有する上告人(問題では、Aさん)は本件宅地の所有権の得喪につき利害関係を有する第三者であるから、民法一七七条の規定上、被上告人(問題では、Bさん)としては上告人(Aさん)に対し本件宅地の所有権の移転につきその登記を経由しなければこれを上告人(Aさん)に対抗することができず、したがつてまた、賃貸人たる地位を主張することができないものと解するのが、相当である。
ところで、原判文によると、上告人(Aさん)が被上告人(Bさん)の本件宅地の所有権の取得を争つていること、また、被上告人(Bさん)が本件宅地につき所有権移転登記を経由していないことを自陳していることは、明らかである。
それゆえ、被上告人(Bさん)は本件宅地につき所有権移転登記を経由したうえではじめて、上告人(Aさん)に対し本件宅地の所有権者であることを対抗でき、また、本件宅地の賃貸人たる地位を主張し得ることとなるわけである。
読んで頂くと解るんですが、問題とは若干のニュアンスの違いはあります。
問題では、建物であり、3者間の話、、、
判例では、宅地を譲り受けた被上告人とその宅地上に所有権移転登記を経由した建物を持っている上告人の2者間での話、、、
まぁ、いずれにしても問題のCさんも判例の上告人も賃借しているのは、間違いはありません。
と言うことで、Bさんが、Cさんに家賃を請求するためには、「登記」が必要です。
問題
Aが、Bとの間の土地賃貸借契約に基づいて乙建物を建て、Cとの間の建物賃貸借契約に基づいてCに乙建物を使用させている場合、Cは、Aに無断で甲土地の賃料をBに対して支払うことはできない。
正解は?
×
本日、最後の問題です。
早速、見てみましょう。
・Aさんが、Bさんとの間の土地賃貸借契約に基づいて乙建物を建てている
・Aさんは、Cさんとの間の建物賃貸借契約に基づいて乙建物を使用させている
問題では、この場合に「Cさんは、Aさんに無断で甲土地の賃料をBさんに対して支払うことはできない。」と言っています。
この問題の言わんとしているところなんですが、
借地上の建物の賃借人であるCさんが、土地の所有者であるBさんに土地の賃料を第三者弁済ができるかって問題です。
条文を確認してみましょう。
(第三者の弁済)
第四百七十四条 債務の弁済は、第三者もすることができる。ただし、その債務の性質がこれを許さないとき、又は当事者が反対の意思を表示したときは、この限りでない。
2 利害関係を有しない第三者は、債務者の意思に反して弁済をすることができない。
1項で、「ただし、」と条件があるようですが、第三者もすることができると規定しています。
問題を順に見てみましょう。
AさんとBさんの間の契約は、「土地賃貸借契約」です。
AさんとBさんとの間の契約ですので、建物賃借人のCさんには土地についての賃料についての支払い義務はありません。
この場合にCさんがする弁済、、、つまり、「第三者弁済」と言うことです。
この問題のポイントは、2項に書かれた「利害関係」です。
「利害関係を有しない第三者は、債務者の意思に反して弁済することが出来ません」
と言うことは、反対に解釈すれば、利害関係があれば、債務者の意思に反して弁済することができると言うことになります。
ここで言う「利害関係」とは、債務を弁済する上で、「法律上の利害関係」があるかどうかってことです。
判例を確認してみます。
昭和62(オ)1577 執行文付与に対する異議事件 昭和63年7月1日 最高裁判所第二小法廷 判決 棄却 広島高等裁判所
借地上の建物の賃借人はその敷地の地代の弁済について法律上の利害関係を有すると解するのが相当である。
けだし、建物賃借人と土地賃貸人との間には直接の契約関係はないが、土地賃借権が消滅するときは、建物賃借人は土地賃貸人に対して、賃借建物から退去して土地を明け渡すべき義務を負う法律関係にあり、建物賃借人は、敷地の地代を弁済し、敷地の賃借権が消滅することを防止することに法律上の利益を有するものと解されるからである。
と言うことで、Cさんは、Aさんの承諾等を得ることなく、甲土地の賃料をBさんに対して支払うことができると言うことになります。
今日も最後までありがとうございました。
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