こんばんは。
平日お仕事の方は、今日は、ゆっくり、休めましたか
お休みだった方もお仕事帰りの方も、これからの時間、少しでも勉強しましょうね。
「絶対、合格する」って強い意志をもって、30分でも1時間でも継続して学習することを心掛けましょう。
「継続は力なり」です。
今日の過去問は、平成19年度問34の問題をやりたいと思います。
民法715条1項の適用が争点となった最高裁判所判決の一節です。
本試験では、組合せ問題でしたが、ここでは、空欄[ ア ]~[ エ ]に当てはまる適当な語句を検討してみましょう。尚、文章中のYは上告人(被告)を指します。
それでは、早速。
問題
① 甲組は、その威力をその暴力団員に利用させ、又はその威力をその暴力団員が利用することを容認することを実質上の目的とし、下部組織の構成員に対しても、甲組の名称、代紋を使用するなど、その威力を利用して資金獲得活動をすることを容認していたこと、② Yは、甲組の1次組織の構成員から、また、甲組の2次組織以下の組長は、それぞれその所属組員から、毎月上納金を受け取り、上記資金獲得活動による収益がYに取り込まれる体制が採られていたこと、③ Yは、ピラミッド型の階層的組織を形成する甲組の項点に立ち、構成員を擬制的血縁関係に基づく服従統制下に置き、Yの意向が末端組織の構成員に至るまで伝達徹底される体制が採られていたことが明らかである。
以上の諸点に照らすと、Yは、甲組の下部組織の構成員を、その直接間接の[ ア ]の下、甲組の威力を利用しての資金獲得活動に係る事業に従事させていたということができるから、Yと甲組の下部組織の構成員との間には、同事業につき、民法715条1項所定の[ イ ]と[ ウ ]の関係が成立していたと解するのが相当である。
また、上記の諸点及び① 暴力団にとって、縄張や威力、威信の維持は、その資金獲得活動に不可欠のものであるから、他の暴力団との間に緊張対立が生じたときには、これに対する組織的対応として暴力行為を伴った対立抗争が生ずることが不可避であること、② 甲組においては、下部組織を含む甲組の構成員全体を対象とする慶弔規定を設け、他の暴力団との対立抗争に参加して服役した者のうち功績のあった者を表彰するなど、その資金獲得活動に伴い発生する対立抗争における暴力行為を賞揚していたことに照らすと、甲組の下部組織における対立抗争においてその構成員がした殺傷行為は、甲組の威力を利用しての資金獲得活動に係る[ エ ]と密接に関連する行為というべきであり、甲組の下部組織の構成員がした殺傷行為について、Yは、民法715条1項による[ イ ]責任を負うものと解するのが相当である。
(最二小判平成16年11月12日民集58巻8号2078頁以下)
いつものごとくサラッと目を通しましょう。
問題の柱書に「民法715条1項の適用が争点となった最高裁判所判決の一節」とあります。
民法715条1項って
最初に確認しておきますね。
グッと考えやすくなるはずです。
(使用者等の責任)
第七百十五条 ある事業のために他人を使用する者は、被用者がその事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし、使用者が被用者の選任及びその事業の監督について相当の注意をしたとき、又は相当の注意をしても損害が生ずべきであったときは、この限りでない。
2、3 略。
この規定、「使用者等の責任」とありますので、俗に言う「使用者責任」の規定です。
まぁ、そのままです。(笑)
この条文の内容を踏まえて、順に確認していきましょう。
[ ア ]は?
指揮監督
[ ア ]から順に確認して行きます。
[ ア ]は、1ヶ所です。
[ ア ]の前後を確認してみましょう。
「Yは、甲組の下部組織の構成員を、その直接間接の[ ア ]の下、甲組の威力を利用しての資金獲得活動に係る事業に従事させていた」
このYと言う人物は
「 Yは、ピラミッド型の階層的組織を形成する甲組の項点に立ち、」とありますから、甲組と言う暴力団の組長ってことですね。
トップ、いや、ヘッドですね。
とすると例えは悪いかも知れませんが、内閣のヘッドである内閣総理大臣と同じ権限がある訳です。
これ、例えが悪いって言われそうですが、条文に答えが書かれているもんで、、、m(__)m
日本国憲法
第七十二条 内閣総理大臣は、内閣を代表して議案を国会に提出し、一般国務及び外交関係について国会に報告し、並びに行政各部を指揮監督する。
この条文ですね。
Y=内閣総理大臣と例える
行政各部=下部組織の構成員と例える
とすると、「甲組の威力を利用しての資金獲得活動に係る事業に従事させていた」は、Yの「指揮監督」の下と言うことになりますよね。
と言うことで、[ ア ]は、「指揮監督」です。
「指揮監督」の良い例が、これしか思いうかびませんでした。
「良い例」
あぁ~、どんどん深みにハマってく。。。
あくまで、語句を導くためだけの例です。。。
なんの意図も深い関係もありません。m(__)m
[ イ ]と[ ウ ]は?
[ イ ]は、使用者、[ ウ ]は、被用者
次に、[ イ ]と[ ウ ]を確認してみます。
[ イ ]は、全部で2ヶ所、[ ウ ]は、1ヵ所です。
「Yと甲組の下部組織の構成員との間には、同事業につき、民法715条1項所定の[ イ ]と[ ウ ]の関係が成立していたと解するのが相当である。」
「甲組の下部組織の構成員がした殺傷行為について、Yは、民法715条1項による[ イ ]責任を負うものと解するのが相当である。」
グッと考えやすいと言うか、既に答えは出ていますね。(笑)
[ ア ]で内閣総理大臣と行政各部の間には「指揮監督」する関係がある、そして、暴力団の甲組組長Yと下部組織の構成員との間にも「指揮監督」する関係があるってのを確認しました。
これは、今日の問題になっている第七百十五条1項の内容そのものです。
と言うことは、[ イ ]は、「使用者」、[ ウ ]は、「被用者」です。
[ エ ]は?
事業の執行
次に、[ エ ]を見てみます。
[ エ ]は、1か所です。
「甲組の下部組織における対立抗争においてその構成員がした殺傷行為は、甲組の威力を利用しての資金獲得活動に係る[ エ ]と密接に関連する行為というべきであり、」
この一文ですが、ポイントは、「甲組の威力を利用しての資金獲得活動」です。
これ、内容をよく読むと
「甲組の下部組織の構成員を、その直接間接の[ア:指揮監督]の下、甲組の威力を利用しての資金獲得活動に係る事業に従事させていたということができる」
と書かれています。
つまり、「資金獲得活動」=「事業」です。
そして、下部組織の構成員がやらかした「殺傷行為」は、その活動に関連して起きたものですので、「事業の執行」に関するものと言えますよね。
ですので、[ エ ]は、「事業の執行」です。
参照
「① 甲組は、その威力をその暴力団員に利用させ、又はその威力をその暴力団員が利用することを容認することを実質上の目的とし、下部組織の構成員に対しても、甲組の名称、代紋を使用するなど、その威力を利用して資金獲得活動をすることを容認していたこと、② Yは、甲組の1次組織の構成員から、また、甲組の2次組織以下の組長は、それぞれその所属組員から、毎月上納金を受け取り、上記資金獲得活動による収益がYに取り込まれる体制が採られていたこと、③ Yは、ピラミッド型の階層的組織を形成する甲組の項点に立ち、構成員を擬制的血縁関係に基づく服従統制下に置き、Yの意向が末端組織の構成員に至るまで伝達徹底される体制が採られていたことが明らかである。以上の諸点に照らすと、Yは、甲組の下部組織の構成員を、その直接間接の[ア:指揮監督]の下、甲組の威力を利用しての資金獲得活動に係る事業に従事させていたということができるから、Yと甲組の下部組織の構成員との間には、同事業につき、民法715条1項所定の[イ:使用者]と[ウ:被用者]の関係が成立していたと解するのが相当である。
また、上記の諸点及び① 暴力団にとって、縄張や威力、威信の維持は、その資金獲得活動に不可欠のものであるから、他の暴力団との間に緊張対立が生じたときには、これに対する組織的対応として暴力行為を伴った対立抗争が生ずることが不可避であること、② 甲組においては、下部組織を含む甲組の構成員全体を対象とする慶弔規定を設け、他の暴力団との対立抗争に参加して服役した者のうち功績のあった者を表彰するなど、その資金獲得活動に伴い発生する対立抗争における暴力行為を賞揚していたことに照らすと、甲組の下部組織における対立抗争においてその構成員がした殺傷行為は、甲組の威力を利用しての資金獲得活動に係る[エ:事業の執行]と密接に関連する行為というべきであり、甲組の下部組織の構成員がした殺傷行為について、Yは、民法715条1項による[イ:使用者]責任を負うものと解するのが相当である。」
(最二小判平成16年11月12日民集58巻8号2078頁以下)
ア イ ウ エ
1 指揮監督 使用者 被 用 者 代理権の範囲
2 代理関係 本 人 履行補助者 事業の執行
3 代理関係 本 人 代 理 人 代理権の範囲
4 指揮監督 使用者 被 用 者 事業の執行
5 代理関係 使用者 履行補助者 代理権の範囲
(使用者等の責任)
第七百十五条 ある事業のために他人を使用する者(Y)は、被用者(下部組織の構成員)がその事業の執行(甲組の威力を利用しての資金獲得活動及びその活動に伴う殺傷行為)について第三者(他の暴力団)に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし、使用者が被用者の選任及びその事業の監督について相当の注意をしたとき、又は相当の注意をしても損害が生ずべきであったときは、この限りでない。
2、3 略。
問題は、1項の前段部分です。
この判例で、
甲組組長Yと下部組織を含む甲組の構成員全体の間に民法七百十五条1項所定の「使用者」と「被用者」の関係が認められました。
そして、暴力団の下部組織における対立抗争において、その構成員がした「殺傷行為」が民法七百十五条1項にいう「事業の執行について」の行為にあたると認められています。
なんかの記事で「暴力団の組長」は、日本国憲法や六法全書を熟読してるってのを見ました。
凄いですね。
その頭を別な方に使えば良いと思うんですけどね。。。
ある意味、感心します。
今日も最後まで有難うございました。
今日のところはここまでです。
んでまずまた。
縦社会は同じってことで。。。
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