おばんです。
今日は無権代理と表見代理について条文を確認しながら見ていきたいと思います。
無権代理
代理権を有しない人が代理人と称して行った行為をいう。
この行った人を無権代理人と言います。
この無権代理行為は原則は無効です。
条文を確認しましょう。
(無権代理)
第百十三条 代理権を有しない者が他人の代理人としてした契約は、本人がその追認をしなければ、本人に対してその効力を生じない。
ここで辞書です。
追認=過去にさかのぼってその事実をみとめること。また、事後承諾。
なんとなく意味は理解していただけるんではないかと思います。
無権代理人Aさんが本人Cさんの代わりに代理権もないのに勝手に相手方Bさんと取引をしたとします。
本人Cさんにすれば勝手に取引されて取引を受け入れなければならないのでは納得がいかないでしょう。
もちろん、取引ですので良い結果になることもあるでしょうし、大損をすることもあるでしょうけど。
そこで追認です。
本人Cさんが追認しなければ、取引の効力は本人Cさんには帰属しない訳です。
最初に書きましたね。
無権代理は原則無効、この追認がなされると効力が本人に帰属するようになるためで、本人が追認しない限りは無効になるってことです。
2 追認又はその拒絶は、相手方に対してしなければ、その相手方に対抗することができない。ただし、相手方がその事実を知ったときは、この限りでない。
2項は当たり前ですね。
相手方Bさんに追認又は拒絶をしなければなりません。
仮に、無権代理人Aさんに追認の意思を伝えても相手方Bさんは知りませんからね。
但し書きの規定の相手方がその事実を知ったときってのは、なんらかの情報により相手方Bさんが本人Cさんが追認したことを知った時のことを規定しています。
この場合には本人Cさんは相手方Bさんに追認を主張できるようになります。
(無権代理の相手方の催告権)
第百十四条 前条の場合において、相手方は、本人に対し、相当の期間を定めて、その期間内に追認をするかどうかを確答すべき旨の催告をすることができる。この場合において、本人がその期間内に確答をしないときは、追認を拒絶したものとみなす。
この条文は無権代理行為の相手方の保護規定です。
催告権ですね。
本人Cさんに追認しますか、どうですかって聞けるってことですね。
ただ、定めた期間内に確答がないと拒絶したものとみなされます。
確答=はっきりした返事。諾否を明らかにした返事。
この催告権は、相手方Bさんが善意であろうが悪意であろうが行使できる権利です。
(無権代理の相手方の取消権)
第百十五条 代理権を有しない者がした契約は、本人が追認をしない間は、相手方が取り消すことができる。ただし、契約の時において代理権を有しないことを相手方が知っていたときは、この限りでない。
相手方Bさんが善意の場合に、無権代理人Aさんがした行為を本人Cさんが追認するまでの間は、相手方Bさんに取消権がありますよっていう規定です。
但し書きは、相手方Bさんが悪意の場合には取消権がないと定めております。
善意と悪意で規定が異なっておりますね。
(無権代理行為の追認)
第百十六条 追認は、別段の意思表示がないときは、契約の時にさかのぼってその効力を生ずる。ただし、第三者の権利を害することはできない。
辞書でも書いてありましたが、追認はさかのぼって効力を生じます。
但し書きの規定は、追認するまでの間に何らかの利害関係を有するに至った人がいる場合に、その利害を害する可能性がある場合にその権利を害することはできませんってことですね。
例えば、本人Cさんが追認するまでに相手方Bさんが第三者Dさんと取引をし、契約を結んでしまった場合とかをイメージすると分かりやすいんではないでしょうか。
(無権代理人の責任)
第百十七条 他人の代理人として契約をした者は、自己の代理権を証明することができず、かつ、本人の追認を得ることができなかったときは、相手方の選択に従い、相手方に対して履行又は損害賠償の責任を負う。
勝手にやることですから、責任はついてきますよね。
その規定です。
自己の代理権を証明することができない
+
本人の追認を得ることができない
↓
相手方の選択に従い、相手方に対し履行又は損害賠償の責任を負う
2 前項の規定は、他人の代理人として契約をした者が代理権を有しないことを相手方が知っていたとき、若しくは過失によって知らなかったとき、又は他人の代理人として契約をした者が行為能力を有しなかったときは、適用しない。
責任を追及する場合には、相手方Bさんは善意無過失でなければなりません。
悪意の場合、過失があった場合にも責任追及ができるとなると無権代理人Aさんも可哀想ですよね。
また、無権代理人Aさんが制限行為能力者でないことも責任追及の要件となっております。
(単独行為の無権代理)
第百十八条 単独行為については、その行為の時において、相手方が、代理人と称する者が代理権を有しないで行為をすることに同意し、又はその代理権を争わなかったときに限り、第百十三条から前条までの規定を準用する。代理権を有しない者に対しその同意を得て単独行為をしたときも、同様とする。
最初に辞書ですね。
単独行為=ある人の一方的な意思表示によって、その意思表示の内容どおりの法律効果が生じることになる法律行為をいう。
相手方のない単独行為と相手方のある単独行為とに分けられる。
単独行為は行為者ひとりの一方的な意思表示によって効果を生じるので、法律の許す一定の場合にしか認められない。
また単独行為に条件をつけることも他人の権利関係を不安定にするので認められない。
この単独行為を相手方が同意していたとき、代理権を争わなかったときに第百十三条から前条までの規定の準用をOKとしてます。
表見代理
無権代理であっても、本人と無権代理人との間になんらかの関係がある場合に、相手方が代理権有りと信じるにつき特別な事情が認められる場合、通常の代理行為と同様の効果を発生させて相手方を保護する規定が表見代理です。
代理について復習してみましょう。
(代理行為の要件及び効果)
第九十九条 代理人がその権限内において本人のためにすることを示してした意思表示は、本人に対して直接にその効力を生ずる。
2 前項の規定は、第三者が代理人に対してした意思表示について準用する。
三つの要件がありましたね。
1.代理人がその権限内において→代理人に代理権がある
2.本人のためにすることを示して→顕名
3.意思表示→法律行為を有効に行うこと
この要件がそろった時に本人に効果が帰属するようになります。
表見代理の規定はこの1.番が問題となる場合の規定です。
(代理権授与の表示による表見代理)
第百九条 第三者に対して他人に代理権を与えた旨を表示した者は、その代理権の範囲内においてその他人が第三者との間でした行為について、その責任を負う。ただし、第三者が、その他人が代理権を与えられていないことを知り、又は過失によって知らなかったときは、この限りでない。
具体例
本人Cさんが相手方Bさんに対して、「Aさんに代理権を与えました」ということを言った場合、それを相手方Bさんが善意・無過失で信用したときに代理権授与の表示による表見代理が成立し、契約は有効となり、その効果が本人Cさんに帰属することになります。
実際には代理権を与えていないのに代理権を与えたとの表示を相手方にしたような場合です。
具体例では代理権授与の表示をしていますね。
ただ代理権の権限内でしょうか?
代理の権限の範囲を伝えていません。
と言うことは、厳密には代理権の範囲内の行為とはいえませんので、無権代理となり、本人Cさんに効果は帰属しないのが原則ですが、それでは、取引の安全が害されてしまいますよね。
代理権を与えた旨を表示した者は、その責任を負いましょうってことですね。
(権限外の行為の表見代理)
第百十条 前条本文の規定は、代理人がその権限外の行為をした場合において、第三者が代理人の権限があると信ずべき正当な理由があるときについて準用する。
代理人がその権限外の行為をした場合からわかることは、権限外の行為って言うところから基本代理権があるってことと代理権の範囲を逸脱しているってことですね。
ようは、家を貸す代理権を与えたのに売却してしまった場合などです。
この場合に、相手方Bさんに代理人が代理の権限があると信ずべき正当な理由がある場合は、代理権授与の表示による表見代理の規定を準用すると規定しております。
(代理権消滅後の表見代理)
第百十二条 代理権の消滅は、善意の第三者に対抗することができない。ただし、第三者が過失によってその事実を知らなかったときは、この限りでない。
これは、代理権が消滅してしまった後に代理人Aさんと取引をした相手方Bさんを保護する規定です。
代理権の期限が切れたにもかかわらず代理行為をした場合ですね。
代理権の消滅を相手方Bさんが善意だった場合は表見代理が成立すると規定しております。
最後に代理権の消滅事由です。
(代理権の消滅事由)
一 本人の死亡
二 代理人の死亡又は代理人が破産手続開始の決定若しくは後見開始の審判を受けたこと。
2 委任による代理権は、前項各号に掲げる事由のほか、委任の終了によって消滅する。
この消滅事由も重要です。
代理も中身が濃いですね。
今日のところはここまでです。
んでまずまた。