マックス・ブルッフ(2) | 緑の錨

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歴史家の山本尚志のブログです。日本で活躍したピアニストのレオ・シロタ、レオニード・クロイツァー、日本の歴史的ピアニスト、太平洋戦争時代の日本のユダヤ人政策を扱っています。

現在でもブルッフはまったく無名というわけではありません。ただ、彼の知名度はきわめて人気のあるいくつかの作品にささえられているようです。

しかし、この作曲家の他の作品も、もっと顧みられていいように思われます。

マックス・ブルッフの著名な作品は、なんといってもヴァイオリン協奏曲第1番であるだろうと思います。美しい、叙情的な音楽で、古今のヴァイオリン協奏曲のなかで傑作の一つに数えられます。

もうひとつの著名な作品はチェロの名曲『コル・ニドライ』(本来はチェロと管弦楽のための)です。ユダヤの祈りの歌に題材をとった沈痛な音楽であり、やはりチェロのための作品中でも屈指の名品とされます。

ユダヤ音楽への関心のために、ブルッフが、ナチ時代にきわめてロマン的で伝統的な作風にもかかわらず禁圧されて、その後も人気がドイツ語圏では復活することがなかったのは、この作曲家にまつわる不運の一つということができます。

私はヴァイオリンの協奏的作品である『スコットランド幻想曲』が好きです。

今回のケルン市立歴史文書館の崩壊で、ブルッフのナハラスが打撃を受けることになりました。いま、史料のために、ケルンでは消防隊員と文書館員たちが戦っています。

私たちのできることのひとつに、この不運な作曲家のことを思い、その作品を聴いて、ケルンの史料の運命について思いを馳せるということがあるように思います。

CDを何か挙げておこうと思ったのですが、あまり詳しくはないのです。
とりあえず、ハイフェッツとジャックリーヌ・デュ・プレの定番名盤を挙げておきます。
サン=サーンス:白鳥(チェロ名作集)/デュ・プレ(ジャクリーヌ)
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ブルッフ:ヴァイオリン協奏曲第1番&スコットランド幻想曲/ハイフェッツ(ヤッシャ)
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