中東現代文学のたくさんの抄訳が詰め込まれた分厚い大判の一冊。
扱う地域/言語はイラン、クルドからイスラエルも含めて北アフリカのマグレブと続いて、西サハラに至る。
現代の新しい小説がたっぷりと読めて満足した。
ここには旧宗主国との複雑な関係や、家族のあり方、伝統文化への思いなど、現地語読者に向けて書かれている。欧米語で書かれると薄められてしまう、今の生の感情が頻々と伝わってくる。
もとより採算を考えた出版ではなく、科研費を利用した中東文学研究会紀要のような冊子である。
中東はややこしくて大変だ。だからこそもっと読みたい、知りたい。独自の味わいと魅力があることが、広く知られるべきなのにと思う。