『秘録第二次世界大戦』:WWⅡドキュメント第1位 | ぷぷぷ日記

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更新は思いついたとき。

今年を振り返ってみると、死体映像をたくさん見た年……という印象がある。
WWⅡ戦後70年にあたって戦争ドキュメンタリーが多かったせいですね。
そして、『秘録第二次世界大戦』という番組を見るために、ヒストリーチャンネルに一時加入したせい。夏のあいだ、忙しいときに放映期間が重なって凄惨でした。
毎夜帰宅後、遅い夕食の後、寝るまでの時間を惜しんで録画を見た。毎晩毎晩、ドンドンパチパチ、死体死体死体……。
   死体フェチではありません。戦争ものに興味があるだけです。

”World At War” 英テムズTVの番組(邦題:秘録第二次世界大戦)。
1973年制作。52分全26話、DVD10枚分です。

ほとんどが実際の、膨大な量の映像で構成されています。ナチスの台頭から日本の敗戦まで、地域ごとに時間を前後しながら、かなり詳細に描いています。今でも戦争ドキュメンタリーは数多く制作されていますが、こんなにまとまった量で、系統だてて戦局の流れが見られる番組はないでしょう。

もうひとつ、1973年という制作時期に生きていた関係者がインタビューに答えている点がすごいのです。この時点では、けっこう上位の将官が存命だったわけで、直接指揮した人などが当時のことを語っている。これはもう、現代では決して作れない内容です。

もちろん、現代よりも検証・研究が浅いため、偏った見方だと思わせる部分があり、映像も一部解説と内容が食い違っているという指摘もある……という点は割り引かないといけませんが、それでもWWⅡ全体を通してみたドキュメンタリーとしては第一級なんじゃないかと私は思います。

英国の制作なので、中心はヨーロッパ戦です。これを見ると、ヨーロッパは忙しくて日本にかかずらわる余裕がほとんどなかったということがわかります。ヨーロッパ戦緒戦は明るく( というと妙ですが)、簡単に大量投降が出て何百万人の捕虜が出て、というエピソードが続く。フランスの占領もあまりにも早い。初期は兵器も第一次大戦よりあまり進化しておらず、砲にしろ航空機にしろのんびりしています。この様子からすると、シンガポールが大量の将兵まるごと降伏したのも不思議はないとも思えます。

後半へ進むにつれ、映像は悲惨になっていきます。無差別爆撃が常態となり、虐殺があり、ゴロゴロと死体映像が続出。ゴロゴロというか……グチャグチャだったり、並べて吊るされていたり。近代化された戦争で大量に死者が出たという以上に、長く戦っていると人間性はどんどん荒廃していく現象でしょう。遺族が見れば絶対に誰の遺体かわかってしまうと思うんですが、1973年放映当時、問題なかったのでしょうか。戦争中は隠されていた真実を知らせるために、あえて全部見せているのか。

映像は淡々と続き、あまり感傷を挟まない構成で、かなりWWⅡを客観的に見ることができたと思います。
全26話、正直に言うと最後のほうは見るのがしんどかった。死屍累々。たとえば、米軍が日本軍トーチカに向けて改造砲塔から火炎放射するシーンなんて ウゲェです。しかし、ヨーロッパ戦線(だけでなくアフリカ・中東戦線も)で疲弊した米軍が早く戦争を終わらせたい感じも伝わってきます。

印象に残ったのはソビエト連邦です。ろくな軍備もなく工業も未発達でナチスにやられる一方のソ連の味方は、冬の厳しさのみ。こんなに軍備がお粗末だったのかと驚いた。工業も農産も貧しく、もうこれは負けるでしょう、というような状況でした。しかし、戦いが続く中、ソ連は力を盛り返します。というより、今まで低調だった生産性が戦争によって刺激され、飛躍的に国力が上ったのです。
日本人から見ると、なんでそんなことが可能???と思ってしまいますが、ソ連は懐が深いのですね。広大な国土、膨大な人口、豊富な資源。日本の事情とは全然違うんだと思い知りました。

大きな構図としては、すぐ終わるつもりで欧州戦が始まり、凄絶な総力戦になり、最後はアメリカの参戦で決着をつける……。第一次大戦と同じですね。このあと第一次のドキュメントも見たので、混乱してきました(汗) 各国は植民地から兵を動員していたし、占領地の国も戦っていたわけで、本当にたくさんの国の人々が関わったことも同様です。

第二次大戦は東西対立の始まりとなりましたが、東西の枠組みがなくなって中東問題が紛糾している今、第一次大戦の決着がまだついていないことが問題になってきました。こうしてみると、第二次大戦の時期だけを「この前の戦争」として特別に見るのでなく、前後の流れを考えるべきだなと改めて思います。

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「秘録・第二次世界大戦/THE WORLD AT WAR」
 第1話  新しいドイツ
 第2話  独軍ヨーロッパを蹂躙
 第3話  フランスの崩壊
 第4話  ロンドン大空襲
 第5話  独ソ全面戦争へ
 第6話  日米全面戦争へ
 第7話  太平洋戦争、アメリカ参戦
 第8話  砂漠の狐、ロンメル戦車隊
 第9話  スターリングラード攻防戦
 第10話 大西洋海域、Uボートの栄光と悲劇
 第11話 レニングラード攻防戦
 第12話 壮絶!ベルリン空爆
 第13話 シシリー島攻防戦
 第14話 ビルマ戦線、死のインパール作戦
 第15話 戦時下のイギリス
 第16話 暴露されたヒットラー暗殺計画
 第17話 史上最大の作戦、ノルマンディ上陸
 第18話 ドイツ占領下のオランダの惨状
 第19話 開放されるヨーロッパ
 第20話 死の収容所アウシュビッツの悲劇
 第21話 ヒットラーの最期
 第22話 一億玉砕、日本銃後の記録
 第23話 太平洋海域の戦い
 第24話 原爆投下
 第25話 総決算
 第26話 レクイエム

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