北野武が暴力について語ったこと。2000年の『バトル・ロワイアル』のときだったと思う。
--俺の暴力は痛いんだよ。最近は、痛くねえような暴力シーンが多いでしょ。
つまり、ゲーム感覚で、暴力の痛さをわかってないんじゃないかってことだ。
自分の暴力シーンは、あまりに過激だと批判されるけれど、やった方もやられた方も「痛い」ってことがわかるからいいんだ。…というような趣旨だったと思う。
※ネタバレ注意
『その男、凶暴につき』は、1989年、北野武初監督作品。主人公:我妻(たけし)は過激な仕事ぶりで札付きの暴力刑事だが、心根は真面目で孤独な男だ。だが、親しかった上司の裏切り、唯一の家族が精神病・・・我妻は次第に追い詰められ、覚醒剤の売人とのやりとりのうち、暴走していく。最後は刑事の職を追われ、違法に銃を買い、破滅するまで究極の暴力は止まらない。
冒頭から暴力シーン連続。殴る、倒れたところを何度も蹴り続ける、頭突き、ナイフでめった刺し、バットで頭をかち割る・・・などなど。昭和の映画ならこれくらいは、当たり前だったよなあ、と思いつつ、ホントに容赦なくぶつかり合って血を見る場面には ひえー、もういいでしょ、、、勘弁してよ、と見てる方も思ってしまう。
しかし、その暴力には理由がある。最近の通り魔犯罪にありがちな「誰でも良かった」とか、「キレて衝動的にやった」などという暴力とは異質だ。我妻のやるせない思い、湧き上がる怒りといったものが暴力として現れているのだ。
この映画は非常にテンポが速い。状況説明も省略が多く、主人公の内面を見せるシーンはほんの一瞬の表情であったり、それすらなく想像するしかないまま、話が展開していく。まったりと情緒的なシーンの多い邦画の中では異色だろう。
そこは北野武の才能だと思う。そのクールな手法がより我妻のやるせない暴走を説得力あるものにしていて、心に残った。
ついでに言えば、若い頃のたけしは男前である。ハードボイルドをやる資格は十分以上にあった。