あさのあつこ『バッテリー』を読んだ後、『武士道シックスティーン』のレビューを書いていないことに気づいた。この本は、真の青春・スポーツものと言えるでしょう。読み捨ての本が多いなか、ときどき読み返してもいいかな……と、思えた本です。性格が真逆二人の16歳女子が、剣道を通じて出会い、反発しあい、ひかれあい、競い合う――まさにこれ青春、ですねー。
主人公のひとり、磯山香織。こいつのキャラがめちゃくちゃいいです。昼休みはひとり握り飯を食べながら、宮本武蔵『五輪書』を読み、さらに空いた手にバーベルを持って筋トレに励むという、剣に生きる剣道バカ。般若のついた竹刀袋をひっさげた、過激でストイックな一匹狼です。ゆえに、協調性ゼロ、自信家であることも手伝って、友達なんているわけないです。
もうひとりの主人公は甲本早苗。もとは日本舞踊をやっていたおっとりタイプの女の子。人あたりが良く、お嬢さんっぽいクセに、なぜか磯山から一本取って勝ってしまった。そのため磯山から目の敵にされる。
この二人が交互に、一人称で物語を語っていく――というのが、本書の構成です。それぞれのお互いへの思い、家族とのやりとり、剣道部での出来事、もめ事、試合の緊迫感などなど、それぞれの視点から見ながら事態が進展していくわけです。物語は山あり谷あり、最後までおもしろく読めます。ひとりが語っているあいだはもう一人の考えてることはわからない。また、ひとりが単独で語っていることは、もう一人は知らないこと。これが二人の場面とうまくからみあって、物語の陰影をより深めています。
この作者、男の人なんですよねー。性格の違うふたりの女子の視点を、よくここまで書けるものだと感心しました。過度に盛られたキャラながら、それぞれの気持ちや出来事に対する反応がとても納得できる。説得力のあるものになっていて、こまやかさを感じました。香織は、愛想ゼロ友達ゼロだけど、心が歪んでいるわけではない。一本気なだけで、曲がることができないだけなのだ。対する早苗は、おっとりしているけど弱い女の子ではない。こちらも本当は筋は通さないと気の済まないガンコものだったりする。
こんな二人がぶつかれば、そりゃもう、青春です。読んでるあいだはおもしろく、せつないところもあり、読後感も良し。元気がないときに読み返したい一冊です。青春、心が洗われますねぇ。。。青少年にも安心してオススメできます。
続編、セブンティーン、エイティーンも期待を裏切らないデキです。
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