作者が言うように、この小説は人の一生につきあうように、国の一生、つまり生まれてから死ぬまでを通じて描いたものだ。
だから、最後までつきあう… その気持ちで読んだ。
日本史でも戦国時代の小説はおもしろい。だけど徳川15代すべてを小説にしたら、と考えてみてください。やっぱし、中だるみするし、個性のない将軍もいるし、事件の少ない時代もあるし、読み続けるのは苦痛でしょう。
でも、読み終わって、やっぱり読んでよかったと思う。
辺境の日本史と違って、ローマ帝国の歴史のうえに現代世界は成り立っているのだから、世界を理解するうえで 重要な知識をいろいろと得た… と思います。
たとえば
・ローマはいかに地中海を庭のようにしていたか そして 現イスラム世界との関係
・ローマの共和制は なぜ どのように 帝政へうつったのか。
・ローマはおおらかな多神教を捨てて、なぜキリスト教を採ったのか
(なぜテルマエを捨てたのか!も)
・ローマはどのように、なぜ滅びたか
どれも、学者さんに説明を求めれば 整理された答えが出てくるのでしょうが、いちいち政治のやり方、その時々の人々の暮らしのありようなどを追っていくことによって、体感的にわかる、というのが作者のねらいだったでしょう。
資料の少ない時代ももちろんあるにもかかわらず、塩野氏が「……と私ならば思う」と憶測を断定口調で連発するあたり、「ほんとにそうなの?」と思うところも なきにしもあらず だったのですが、一応の流れがわかったことは収穫でした。
(正直、塩野氏の翻訳調の文章に辟易して 読み流した部分もありますケド…それはそれ。)
最終巻の図版はある意味衝撃です。文庫の表紙に使われていたコインを年代別にした写真、美術品の出来具合の巧拙をみれば、「文明は進化するものではない」と、ハッキリわかります。
初期のころのコインはやや雑ながら、ヘレニズム文明の美しさを受け継いでいます。
ローマ帝国が勢いのあった時代、コインの鋳造技術、レリーフの精緻さなど、素人目にもすばらしいです。
それが衰退期に入ると、「子供の絵か?」と思うような稚拙なレリーフ、コインは粗悪で、写真でみてもハンマーでたたけば簡単に割れたりしそう。見るも無残なものです。
ローマに現存するコンスタンティウスの(だっけ)凱旋門は、技術不足のため、最盛期のレリーフなどを引っぺがしてきて貼ったりしているのだそうな……。もう暗黒の中世、ローマ人にかわって蛮族(ガリア人、ゲルマン人など)がヨーロッパの主役になる時代は そこまで来ているとわかります。
●文化・文明は常に発達するのではなく、後退して滅亡することもある。
●現ヨーロッパ人たちは ギリシャ・ローマ文明の後継者ではない。 西ローマは滅び、東ローマは東方色の強い別物になった
これが私的まとめです。塩野氏はローマはローマが首都でないとローマではない。ゆえに東ローマは認めない。ということを書いてますが、私はローマのよさはキリスト教化した時点で崩壊したのだと感じました。やっぱりローマ人はおおらかに、風呂好きでないとねぇ
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