ドメーヌ・ボワ・ルカ キュヴェ KUNIKO 2004
購入日 2006年4月
開栓日 2014年1月17日
購入先 Alcoholic Armadillo
インポーター コスモ・ジュン
購入価格 3000円
わたしはガメイが大嫌いだ。
今後一生飲まなくてもいいと思っている。
もはや脳の柔軟性が失われているので、誰が何と言おうとこの信念は変わることはない。
とりわけボージョレ・ヌーボーなど唾棄すべき飲み物だと思っている。
あんなものを飲んで翌日朝に咽頭の奥底から不快な臭気を感じるくらいなら、
大阪の水道水を飲んだ方がはるかにましだ。
熟成させたボージョレが流通しないように、ガメイは熟成に向かない
という思い込みがあるので、若飲みもダメ、熟成させてもダメ、
従って救いようのない品種だ、と信じ込んでいる。
当然わたし個人の非常識な嗜好にに基づいた偏見である。
他人に同意を求めるつもりは全くない。
こう書くと、どこかの達人の飲み手から
「2年前に飲んだ1955年のボージョレは、品種とテロワールを越えた
素晴らしいワインだった」
というコメントが来そうだ。
しかしそんな夢物語のようなガメイは、非常に限られた趣味人の愛玩物でしかない。
40年物のボージョレを議論の対象にすることは、
「1945年9月にフルトヴェングラーがベルリンフィルハーモニーでベルリンフィルと演奏した
ラフマニノフの交響曲第2番(あり得ないものの1例)」
について議論することに近い。
さて、今回開栓したワインである。
ワインのインポーターでもある新井順子が、トゥレーヌの畑で植えられていた
ガメイから丹精込めて造ったワインである。
一時期のビオワインブームに乗って、かつて一部の愛好家の間ではずいぶん話題に上った。
他にもソーヴィニオン・ブランやカベルネ・フランなどのワインもあるが、
同じガメイで造った「キュヴェ OTOSAN(お父さん)」というのもあった。
もうあれから8年も経つ。
この「OTOSAN」2004も3年ほど前に開けたが、力のないカベルネ・フランみたいな代物で、
とても楽しめるレベルのものではなく、やっぱり酸化防止剤を含まない・または少ない
ビオワインは、保存に適さないのでは、と思った。
ところが今回の「KUNIKO」はまったく違う。
ガメイでここまで上品なワインを経験したのは記憶にない。
もっともわたしのガメイ経験なんて、乏しいものだけれども。
タンニンはすでに柔らかく、果実をふわりと包み込んで、例のいやらしいイチゴ香も
気にならないくらい抑制されている。
酸化防止剤は最小限のはずだが、果実は見事に健在で、まだまだ早開けだったとすら思う。
しかも数日経ってもほとんど落ちない。
これならあと数年後の姿が楽しみだ、とさえ言える。
間違えて大量の酸化防止剤を入れたなどとは考えにくいから、
改めてSO2の存在意義が問われそうだ。
少なくともこのワインは、ボージョレ・ヌーボーのおかげで評価を貶めている
ガメイの可能性を再認識させるには十分な存在である。
ここまで華麗に洗練されたワインが、ガメイから造れることを知ると、
驚く人が多いに違いない。
価格は3000円だから、安くはないが中級品のヌーボーと変わらない。
これならお買い得なワインと言っても良いと思うが、
結局ワインの価格なんていい加減なものだとも思う。
新井順子という造り手は、昨年の衆議院議員選挙に立候補していたそうだから、
その後このキュヴェがどうなっているのか分からない。
一時の趣味で造られたものか、それとも今後も誰かが継続してこの畑を育てるのか、
よく知らないが、興味もない。
なぜなら、今後造り続けられようともわたしは購入するつもりは無いからである。
誰が何と言っても、わたしはガメイが嫌いなのだ。