重厚・・ゼクトのロゼ | ワインな日々~ブルゴーニュの魅力~

ワインな日々~ブルゴーニュの魅力~

テロワールにより造り手により 変幻の妙を見せるピノ・ノワールの神秘を探る

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フィルスト・フォン・メッテルニヒ ロゼ・ゼクト・トロッケン NV
購入日    2012年10月
開栓日    2012年10月30日
購入先    ピーロート
インポーター ピーロート
購入価格   2919円

最近泡ものに対する感知能力が向上してきたと勝手に自負しているが、
やっぱり行き着くところはシャンパーニュ、と簡単に結論づけるのはあまりに面白くない。

広い世界にはシャンパーニュ以外にもっと素晴らしい泡があるのではないか、
と考えたくもなるが、実際にそんなものなど存在しない、とうすうす気付いてはいる。
しかし、知らずに語るのは信義に反する。
そこでゼクトを購入して早速1本開けてみた。

同じ造り手の普通のトロッケンには武勇伝がある。
小ボトルを台所のガスコンロの側の調味料の瓶に紛れて数年間放置し、
油まみれになっているのを発見して開栓した前科がある。

それでもまったく熱入りであることを感じさせなかったので、
これは明らかにシャンパーニュとは別物であると感嘆した。
果たしてそれは賛辞なのかどうか、自分でも分からない。

そこでこのロゼであるが、門前の小僧おばさんの家内に言わせるととても美味しいという。
わたしも同感である。

ならば、シャンパーニュとどう違うのか述べよと言われると言葉に詰まる。
シャンパーニュもピンキリだが、10,000円以上の高級なもの(でまともなもの)は、
開けた瞬間からの香りが違う。

3,000円のこのゼクトをそれと比較するのは、いくら何でも酷である。
だったら、5,000円クラスの普及品シャンパーニュと比べて、香りが劣っているかというと、
やっっぱりちょっと負けている。

しかし果実味の多さ、どっしりとしたボディでは圧勝である。
これは健康優良児で男性的な泡もので、これに比べるとシャンパーニュは
日陰の植物みたいに思えてしまう。

断っておくが、これは必ずしも賛辞ではない。
しかし、若干糖度も高そうで、普段飲んでいる酸が強烈なシャンパーニュより
明らかに一般受けするだろう。

最近ティントナーの振ったブルックナーの3番の第2楽章を聴いていて、
あまりの楽譜の繊細さに改めて感嘆した。

演奏もさることながら、稿の問題があって、一般的なノヴァーク版や
初稿に近いエーザー版よりもっと初稿に近いものを使用している。
ノヴァーク版ではバッサリとカットされているフレーズが多々出てくるので面食らう。

個人的にはこの楽譜に惹かれるが,一般受けはしない。
こういう交響曲を聴いていると、ベートーヴェンのそれなどは
いかにも肉食系で細部に拘らない感じがする。

このゼクトは,良い意味でベートーヴェンの名作シンフォニーのようだ。
いつ聴いても(飲んでも)、だれと聴いても(飲んでも)、受けが良いだろう。
1日であらかた飲んでしまって、2日目には足らなくなり、
2本目を開けたい誘惑に駆られた。

シャンパーニュと比べると価格も破格である。
何より安定感があるのがよい。
そう、まさにイッセルシュテットとウィーン・フィルのベートーヴェンのようである。

ブルックナーの初稿の演奏など、ナーバスな聴き手だけにしか存在価値はない。
そんな音楽や酒は、知らない方が幸せなのだろう。