さらばホテルアートランド蓼科 | ワインな日々~ブルゴーニュの魅力~

ワインな日々~ブルゴーニュの魅力~

テロワールにより造り手により 変幻の妙を見せるピノ・ノワールの神秘を探る

高校時代の同期生5人とその家族総勢19名で,毎年夏に2泊ずつ滞在していた
ホテルアートランド蓼科は、本当に思い出深いホテルである。

ホテルから直結の建物にマリーローランサン美術館を併設し、
彫刻の大家、北村西望の作品などをあまた配置してある、手入れの行き届いた彫刻公園が
ホテルの庭である、というまさにアーティスティックなホテルである。

実はここの総支配人のY氏が、同期生の義弟にあたるため、
毎年格安で利用させていただいていたのである。
数多くの美術品の蒐集は、このY氏とその実家のT家によるものであり、
高級レストランのプロデュースは、まさにこの若き実業家個人の采配によるものであった。

残念ながらわれわれゲストの中にはそんなにセレブな人間はおらず、
町医者のわたし以外は、フランス語研究者や数学教師、大手銀行員にコンピューター技術者
という、堅いメンバーばかりであって、「わ~すごいホテルやなあ」と
言いながら毎年美味しいものを食べていた。

最初に訪れたのが阪神大震災の年である1995年の夏で、それ以降毎年夏に行っていた。
もう10回以上も訪れたと思うが、小学生またはそれ以下だった子供たちが
みんな成人し、メンバーの1人であるコンピューター技術者が6年前に胃癌で急逝したこともあって、
ここ数年は訪れていなかった。

かつては最上階に本格的なフレンチ・レストランを備え、
別棟にはこれまた本格的な中華レストランがあった。
前者では、都会のレストランにも劣らないワインリストを備えていたし、
後者の中華レストランのレベルの高さは、ちょっと都会でも珍しいくらいであった。

そのホテルアートランド蓼科が、9月末をもって閉館するという。

そこで今回の盆休みを利用して、家内と2人で訪れることにした。
ここのホテルには思い出がいっぱい詰まっているのだ。

リーマンショック以来の不況のせいか、今では高級フレンチも高級中華も姿を消し、
夕食も朝食もバイキング形式の料理に変わっている。

もちろん品数も多く美味しいのだが、かつてのように盛装で背筋を伸ばして訪れる
高級レストランを知るわれわれにとっては、浴衣姿にスリッパで夕食を摂ることに
一抹の寂しさを覚える。

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ホテルアートランド蓼科 彫刻公園から

しかし、庭の美しさは相変わらずだ。
山の手の道までゆっくり散策すれば、1時間や2時間はすぐに経ってしまう。

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客室から南側の彫刻公園を望む

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ホテルから車で5分ほど下ったところにある、バラクライングリッシュガーデンの入り口

ここができたのが10年ほど前だそうで、来るのは3回目である。
いつも夏にしか来ないが、バラの季節に来ればもっと違う表情が楽しめるだろうと思う。

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バラクライングリッシュガーデンの庭園


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ドメーヌ・ルフレーヴ マコン・ヴェルゼ 2009

部屋飲みしたワイン。
ラブワインさんを真似て、白のフレッシュなものを、と思ったのだが、
リースリングと比べると、まったりして酸味だけが浮いてしまう。
やはりこのワインは、食中酒としての方が向いているのかも。

今回は5年ぶりくらいだったが、温泉の硫黄の香りも懐かしい。
もうここに来ることもないのだな、と思うと、とても寂しい。
何らかの形で復活してくれればいいのだが。