地味で実直・・コンタ・グランジュ | ワインな日々~ブルゴーニュの魅力~

ワインな日々~ブルゴーニュの魅力~

テロワールにより造り手により 変幻の妙を見せるピノ・ノワールの神秘を探る

ワインな日々~ブルゴーニュの魅力~
イヴォン・エ・シャンタル・コンタ・グランジュ マランジュ 2005
購入日    2007年6月
開栓日    2010年8月7日
購入先    Alcoholic Armadillo
インポーター ヌーヴェル・セレクション
購入価格    3000円

クンタ・キンテ(古い)ならぬコンタ・グランシュである。
いわゆる「新ブルゴーニュ」の造り手として、3年ほど前にリアルワインガイド誌や
堀昌子さんの著書などで紹介されていた。

その際購入した人の多くは、この2005などとっくに開栓されてしまっていると思うが、
周回遅れで開栓するのがわたしの常である。
けっこうマイナー造り手のようで、現時点でもネット上には村名マランジュと
ACブルの2種しかオンリストされていない。

暑いこの季節では、室温(20℃以上)まで温度を上げてしまうと締まりがないと感じる
ワインが多いが、このワインも15℃くらいから開栓した方が締まって新鮮である。
黒系果実の香りと適度なタンニンがありながら、けっこうスリムなボディに好感が持てる。

ただしそれは初日だけの感想で、意外と落ちが早く、2日目には輪郭が茫洋とした
老ワインと化していた。
インポーターはしきりにCPの高さをアピールしたいようだが、
購入時(ユーロ160円以上)ならいざ知らず、現時点(120円以下)なら
そんなに安いとは思えない。

マランジュといえばコート・ドールの一番南で、1989年にアペラシオンとして認められたそうである。
一部の畑は県外にはみ出しているから、コート・ドールに含めるのはおかしい、
とセレナ・サトクリフの著書「ブルゴーニュワイン」に書かれている。

同書によると1級畑もあるようだが、このマイナーな地域のワインがわが国の
市場に上ってくることはほとんどない。
当地の事情はまったく知らないが、おそらく地産地消されている地酒的なワインは
多く存在するだろうと思う。
それをわざわざわが国まで運んで販売するからには、一定量の市場が必要で、
雑誌や書籍などを巻き込んだ宣伝も必要だろう。

どうしてもヴォーヌ・ロマネでなければ、という向きはたいがいお金に無頓着で、
少々高くてもブランドもので安心感のあるものしか買わないし、
さしてワインに拘らない人は、3000円もするブルゴーニュの村名ワインをわざわざ買う理由はない。

ということを考えながらこのワインの立ち位置に思いを巡らすと、
良い造り手だが、わが国で大ブレイクするまでの突出した特徴があるとは思えず、
2000円程度で買えなければリピートする人も少ないだろうし、
そもそも流通量が少なすぎるから安定供給も難しかろう。

「新ブルゴーニュ」とは言っても新進気鋭の若手ではなく、けっこう老練な造り手のようで、
わが国では知られていなかった、という意味での「新」のように思える。

わが国で大量消費させるモデルケースとして、
ボージョレの広大な不人気畑しか持たないデュブッフのような大実業家が、
大企業サントリーと結託して流通経路を確保し、
粗製濫造したワインを毎年大量に売りさばく、という例を思い浮かべる。

デュブッフにはカラヤンのイメージを重ね合わせるが、
コンタ・グランジュには、ルイ・オーリアコンブのイメージがある。
同じパッヘルベルのカノンを演奏させても、洗練度が違う代わりに、
一音一音の深みははるかに違うのである。

話がそれてしまったが、毎年11月に、くだらないワインに3000円も出すくらいなら、
こちらのクンタ・キンテ、じゃなかったコンタ・グランジュの方がはるかにお値打ちではある。