開栓後の変貌・・・デュガ・ピィ | ワインな日々~ブルゴーニュの魅力~

ワインな日々~ブルゴーニュの魅力~

テロワールにより造り手により 変幻の妙を見せるピノ・ノワールの神秘を探る

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ベルナール・デュガ・ピィ ジュブレ・シャンベルタン クール・デ・ロワ 2002
購入日    2005年11月
開栓日    2009年9月16日
購入先    キタザワ
インポーター ヴィノラム
購入価格   12900円

昨日午後は、市の医師会の学術勉強会があり、新型インフルエンザをテーマに
大阪府立公衆衛生研究所の先生と市の保険所長の先生、市内各病院の担当の先生方に
講演して頂いた。

「頂いた」と書いたのは、名前だけだが一応学術委員長がわたしだからである。
それにしても、開業医である医師会員の先生方はよく勉強しておられる。
マニアックな質問が飛び交うし、予定時間を大幅にオーバーしてしまい、
午後2時に始まった勉強会が終わったら5時半を回っていた。

実は昨日大阪に来られている帝京大学教授の講演を聴きに、リーガロイヤルホテルまで
駆けつけたかったのだが、間に合わなくなって断念した。
この教授とは昨年東京でのプレスセミナーでいっしょに講演したのでよく存じ上げているが、
東大出身のものすごい秀才で、いつもお見事な講演をされるので、
今回出席できなかったのは残念だ。

で、医師会の会合を終えてリーガロイヤルホテルを飛ばしてヒルトンホテルに行き、
北摂の同業者の集まりに参加した。
こちらも演者を招いていて、今回は大学の後輩の市立池田病院の部長の話を聴いたが、
臨床実績の素晴らしさに感心した。
まだまだわが国の第一線の勤務医には、できる人物が存在する。
ここまでできる医師は、決して多くはないのは事実ではあるが。

ヒルトンホテルの食事はまあまあで、リーガロイヤルほど惨憺たるものは出してこないが、
添えられるワインは不味くて飲めなかった。
こちらの舌が肥えすぎた結果かも知れないが、やはりワインは持ち込めないと、
満足のいくものを現場で開栓してもらうのは難しい。


さて、記録目的の旅行記ばかり書いていたので、宙ぶらりんになっているワインの記事を
遅ればせながらアップしておく。

ビゾのヴォーヌ・ロマネ、ローランのニュイ・サン・ジョルジュに続いて、これで3本続けての
2002である。
3本通しての大まかなインプレッションでは、まん中のローランが最も印象が薄くて、
このデュガ・ピィが間違いなく最も「優れた」ワインである、と迷わず断言しておこう。
やはり値段は正直だ。

きちんと保管された良いワインに限ったことなのかも知れないが、ワインは開栓してから
酸化して変貌していくものだと思っている。
変貌というのは単に枯れて落ちていくものでは当然なくて、開栓後ある程度の時間までは
昇りつめていってくれなくては困る。
とても良くできたワインでは、30年ものの古酒でも開栓後1時間以上してから
本領を発揮するのはときどき体験する。

で、このワインだが、開栓すぐはちょっと細身で頼りなくて、ありゃりゃと思ったのだが、
10分もしないうちにそれが杞憂であることに気付いた。
最初は舌を刺した酸味も徐々にて丸みを増し、1~2時間かけてふっくらとなってきて、
しまいにはとてもクリーミーでシルキーな舌触りになってしまう。

良くできたワインは開栓時期を選ばず、開栓後も変貌してその時点での本来の姿に収束する、
というストーリーを文法通り示しているワインであった。
ただし、翌日にはきっちりピークを過ぎていて、若き日の美貌を回想することしか
できなくなっていた。

デュガ・ピィは大御所でオーソドックスな造り手だが、新ブルゴーニュの造り手で
ここまで安定感があって感心する造り手に出会った記憶がない。
ブルゴーニュワインも伝統芸能みたいなもので、ちょっと注目を集めることはあっても
ちょい出の造り手が末永く生き残ることができるほど、甘くはないのではないか。

こんなワインを飲むと、そこそこ金のある飲み手が、大枚をはたいても浮気せずに
大御所に固執するのも分かるような気がする。