若いのに老けている・・メイエー | ワインな日々~ブルゴーニュの魅力~

ワインな日々~ブルゴーニュの魅力~

テロワールにより造り手により 変幻の妙を見せるピノ・ノワールの神秘を探る


ジュリアン・メイエー ピノ・ノワール「ハイセンシュタイン」アルザス VV 2002
購入日    2007年4月
開栓日    2008年1月5日
購入先    Alcoholic Armadillo
インポーター コスモ・ジュン
購入価格   4800円

4月に2年に一度の医療費改定が行われるが、今回は本体部分で0.38%の引き上げに
なることがすでに決まっている。
具体的な内容は今後中医協などで詰められるが、病院の再診料の引き上げと
診療所の再診料の引き下げが検討されている。

中医協の日本医師会の委員が、診療所の再診料引き下げに絶対反対を表明した
らしいが、わたしの勝手な予想では、結局押し切られて引き下げられてしまうだろう
と思っている。

わたしは日本医師会の末端の会員でしかないが、今や現場の医師の多くは
日本医師会に期待などしていないし、4月以降に再診料が引き下げられれば、
ますます医師会は求心力を失うだろう。
そうした中で、現状を嘆く一部の医師たちが、全国医師連盟の立ち上げに
動いているのは、心情としてはまったく理解できる。

2年前、小泉首相の官邸主導で医療費が3.16%引き下げられた結果、
病院の採算悪化に拍車がかかり、多くの中小病院が倒産し、大病院から医師の逃散が
相次ぐ結果となった。

この2年間で医療崩壊へのスパイラルが非可逆的なのは明らかになってきたが、
2年前に医療費値下げを決定した責任者への非難は聞こえてこない。
それどころか、今回たった0.38%の引き上げしかなされないから、いくら産科、小児科、
救急に手厚くしたとしても、医療崩壊への行進の速度を緩めることは困難と考える。

勤務医が減っているということは、とりもなおさず医師全体で見たモチベーションが
下がっていることを意味する。
自分も含めて、わたしの周りには、人の命を助けるより、まず自分が被告席に
立たないようにする方を優先する、と考える医師の方が圧倒的に多い。

厚労省が何か方針を明らかにするごとに、医師のモチベーションは下がっていく。
厚労省も何とかしなければ、と思っていると信じたいが、現場の医師からは
支持されず、モチベーションを下げる結果になっているようだ。
働く気を無くした医師を大量生産してどうするんだ、と思うのだが、
彼ら(厚労省)はそのことに気付いているのだろうか。

大量の医療難民が出現し、治安悪化も含めた社会問題になるのは自明だと思うのだが、
ほんとうにこの国で安心して老後を送れるのか、医師のわたしでも不安に思う。
これが取り越し苦労であることを祈る。


さてさて、年始ということもあって忙しく、例によってワインのアップが遅れている。
このワインの2001は3本開けた。うち1本は状態が本来のものではないということで、
追加で送っていただいたものである。
2001の記事はこちら

典型的なブルゴーニュのピノ・ノワールとはかなり違う出汁系や紅茶の香りがするし、
果実そのものも独特なのは、テロワールによるものだろう。
Alcoholic Armadilloのいのまたせんむが「哲学的」と書かれているように、
通常のブルゴーニュの常識では測れないところがある。

だが、黙って飲んだらこれが2002だとはとても思えない老け方だ。
しかし単純な古酒かというとそうではない。
若い頃から老けているが、年を取ってもそう変わらない人、というのはいるものだ。
初日の印象からは、このワインもそうだと思った。
実際せんむも「ワインとしては全く落ちていない」と書かれているし、きっと2日目も
初日とそう変わらないだろうなと。

2001は枯れていって1つの完成形に落ち着いた記憶もあるのだが、残念ながら
この2002は、2日目には下支えのないところまですっかり落ちてしまっていて、
「あ~、やっぱり婆さんだったんだ」
と、ちょっとガックリ来た。
古木だそうだが、何なんだ、このブドウは。

しかし、この薄さの中に一種独特、摩訶不思議な魅力のあるのは事実だ。
枯れいくのを楽しむ、という美学があるとしたら、なるほど哲学的なワインと
言えるかも知れない。
濃くて重いワインが好きな向きには、きっと何のことか分からない。

老ピアニストが弾く、ヤナーチェクの草陰の小径。
う~ん、深いのか何なのか、自分でもさっぱり分からない。