まるで水墨画・・・ジュリアン・メイエー | ワインな日々~ブルゴーニュの魅力~

ワインな日々~ブルゴーニュの魅力~

テロワールにより造り手により 変幻の妙を見せるピノ・ノワールの神秘を探る


ジュリアン・メイエー ピノ・ノワール「ハイセンシュタイン」アルザス VV 2001
購入日    2006年8月
開栓日    2007年4月2日
購入先    Alcoholic Armadillo
インポーター コスモ・ジュン
購入価格   4700円

昨年3月に、澱の混じった1本目を開栓して、美味しいながらもグラスの中で
みるみる枯れていくさまに感心した。これは決して悪い意味ではない。

そして、代替え品としてAlcoholic Armadilloから送られてきた2本目を開けて
その見事さに一層感心したのである。
このヴィンテージには状態が不安定なボトルも含まれる、ということを覚悟しながら
どうしてももう1本飲みたくなって、昨夏に追加注文したのが、今回の1本である。

他にも飲みたいワインが沢山あるので、今の今まで置いておいたのだが、
気がつくと昨年の2本目を開けてから、もはや1年近くが経っているのに気付いた。
毎日仕事(外来診察)に忙殺されているせいか、時の経つのがやけに速い。

すでにこのワインの色は薄いエンジ色と化しており、澱は2本目と同じように非常に少ない。
絶賛ものだった2本目から1年近く経過しているせいか、この3本目の方が
熟成が進んでいる、というか枯れのフェーズに入りかけている。

香りから華やいだ果実香が失せ、だし昆布香が支配的となっている。
そしてグラスに注ぐと、緩やかだが枯れが進んでいく。これが絶妙だ・・・

Alcoholic ArmadilloのHPを覗くと、いのまたせんむは次のようにコメントされている。
 「グラスに入れておくと、しっとりと「枯れていきます」。この枯れ方が素晴らしい・・・
  アフターに感じる旨味はいつになく洗練され繊細・・・ジャスミンティーの薫る
  エキゾティックな午睡。イメージは水墨画に描かれた「桂林」かな・・・?」

これは2002に対するコメントだが、今わたしが飲んでいる2001にもそのまま当てはまる。
あかん、こんな見事なコメントを読んでしまったら、もう形容詞が浮かんでこない。
このワインを、単色で描かれながらも無限の奥行きを表現している水墨画に例えるとは、
大した表現力だと感心してしまう。

枯れていって不味くなるかというと、そうではない。
翌日には1つの安定した完成形となっていて、いかにも自然なワインの姿がそこにある。
元のブドウがピノ・ノワールだったか、山田錦だったかなど、もはやどうでもよい。
これは実に不思議な現象だ。

本家ブルゴーニュでこんなワインを探すのは難しい。
うまく造られて、きちんと保管され、そこに天の恵みが加わって熟成した古酒しか
こんな姿にはならないのではないか。
音楽では、ベートーヴェンの弦楽四重奏曲第15番作品132を思い浮かべるが、いかがだろうか。