個性無き個性か・・・ ダモアのシャンベルタン | ワインな日々~ブルゴーニュの魅力~

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テロワールにより造り手により 変幻の妙を見せるピノ・ノワールの神秘を探る


ドメーヌ・ピエール・ダモア  シャンベルタン 2000
購入日    2006年1月
開栓日    2007年1月4日
購入先    ウメムラ
インポーター サントリー
購入価格   7980円

新春早々から、やや遅開けワインが続いていたので、まあシャンベルタンなら
ちょっと早いかも知れないが、枯れていることはなかろう、と思って開栓。

この造り手のワインは、2年ほど前に六覚燈でシャペル・シャンベルタン99を飲んで感心して以来、
いくつか蒐集している。
インポーターは大手のサントリーであるが、現在ネットで検索してもほとんど見かけないので、
日本ではあまり大きな市場は無いのかも知れない。

このワインの欠点を指摘するのは難しい。
過不足無いブーケ、そこそこ力があって、奥行きもある。
ジュブレ・シャンベルタン村を代表する特級畑、シャンベルタンにしては価格も非常に安い。
今は消えているが、ウメムラさんはHPで、こんな安い価格ではワインに申し訳ない、
年が明けたら値上げします、と一昨年暮れに書かれていた。

だがしかし、何か重要なものが足りない。
あくまでブルゴーニュを代表するような、有名畑であるが故の高いレベルでの話で、
凡百のブルゴーニュ・ワインのレベルを軽くクリアしているのは間違いないのだが、
何かが足りない、と感じる。
それが何かと言われても上手く説明できないが、一言で言えば官能的な魅力だろうか。

コルクなどには何の問題もないし、ワイン自体の状態にも問題はない、と思う。
しかし、何か失われたものがあるのでは、という猜疑心がつきまとう。
ひょっとすると万全な1本ではないのかも知れないが、明らかに万全ではない、
と言えるほどのことはない。

実は、同じような物足りなさは、同じ造り手の98のシャンベルタンにも感じたことがある。
この造り手の特徴なのか、それともテロワールの特徴なのかはよく分からないが。

往年の名指揮者カール・ベームは、晩年に何度か来日し、そのたびに日本の聴衆から
大喝采を浴びていた。
わたしもウィーン・フィルと来日した公演を生で聴いたり、テレビやFMでもで見たり聴いたり
したが、オーケストラが勝手気ままにやっていて、指揮者がただの飾り物になっている
演奏が多かったように思う。

1973年頃のウィーン・フィルとの録音で、ブルックナーの交響曲第4番「ロマンティック」
を遺しているが、これは1974年の日本レコード・アカデミー賞の大賞を獲得した。
こんなつまらないブルックナーを、評論家がこぞって絶賛したことに驚いた、という点で、
これはわたしにとっても記憶に残る録音である。
(宇野功芳という評論家ただ1人が、つまらない演奏だと書いていた)
当時わたしは当然若かったが、評論家より自分の耳の方がよっぽど確かだ、と確信した。

この演奏、ウィーン・フィルの美しい響きが堪能できるが、魂の抜けたダルな演奏で、
指揮者の個性などどこにも感じられない、と今でも思っている。

脱線したが、このダモアという造り手、その晩年のベームの演奏に通じるものがある。
香り以外の点ではもちろんこちらの方が格上だが、香りだけを比較しすると、
先日のミノさんのヴォーヌ・ロマネ・シャン・ペルドリにまるでかなわない。
ジュブレ・シャンベルタンとヴォーヌ・ロマネの違いだからどうしようもないのかも
知れないが、あっちは村名でこっちは特級だし、何か1つ際立った個性が欠けているように思う。

こんな良いワインをつかまえて厳しい感想を感じてしまうのは、わたしがワインにも
音楽と同じように個性的な作品を求めているのか、それともこの造り手の個性無き個性を
好まないのか、今のところ何とも言えない。
残るあと1本のボトルを開栓すれば、また違う感想を感じるかも知れないところが、
音楽とは違うブルゴーニュのいい加減さではある。