医師会フィルの第9 | ワインな日々~ブルゴーニュの魅力~

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テロワールにより造り手により 変幻の妙を見せるピノ・ノワールの神秘を探る

ワイン仲間の同業者の親友が世話人代表を務める、大阪府医師会フィルハーモニーの
第36回定期演奏会が、17日の日曜日にいずみホールで開かれた。
医師はじめ、医療関係者が趣味でやっているオケだが、定演が36回とは立派なものだ。

最近はアマチュアオケのレベルもずいぶん上がっており、大学のオケなど、
ヘタなプロ顔負けのレベルになっている。
先日家内が京都大学交響楽団の演奏会を聴いてきたが、技術的にとても上手かった、
と言っていた。

さて、今年の大阪府医師会フィルの演目は、ベートーヴェンの第9だった。
ソロの歌手はもちろんプロで、合唱は大阪ゲファントハウス合唱団という、アマの団体である。
この合唱団の創始者である声楽家の林達次さんが、2~3年前に亡くなられたあと、
波多野均さんという、ドイツ在住が長かった声楽家の方が率いておられる。

この方は、バッハのマタイ受難曲の語り部の役であるエヴァンゲリス(福音史家)を
やらせれば天下一品で、4~5年前に2回聴いたが、日本にもこんなにうまい
エヴァンゲリストがいるのかと、舌を巻いた。

オケでヴァイオリンを弾いているその友人も、猛練習をしているが緊張する、と語っていたし、
楽曲の難易度からも多少手に余るのではないか、と開演前は思っていた。
しかしそれは杞憂で、ベートーヴェンの醍醐味を聴かせるのに、多少のミスタッチなど、
気になるほどのものでもなかった。

指揮は、昨年と同じくプロの奥村哲也さんだったが、音楽に流れがあり、
コーダまで一気呵成に聴かせる腕前はさすがである。

ベートーヴェンのこの作品が、評論家宇野功芳が言うように、最高の交響曲(の1つ)である、
とはわたしは実は思っていない。
ベートーヴェンは元来室内楽作曲家であり、オーケストラ作品は得意としていないし、
まして声楽作品はまるで書けない、というのが、わたしのこの作曲家への評価である。

この第9は、第1楽章が彼のシンフォニーとしては珍しく、深い内容を湛えていると思うが、
あくまで起承転結の「起」にすぎない。
また第4楽章には、何らかの社会性やメッセージ性が見て取れるた。
そんなこんなで、同じ第9でも、わたしはシューベルトの大ハ長調(最近は第8と呼ばれる)や、
ブルックナーやマーラーの方が、はるかに好きである。

ベートーヴェンが大衆に迎合した妥協の産物である、という意地悪い見方をしながら、
この演奏会で全曲を通して聴くと、音楽に流れがあり、特に終楽章の後半など、
不覚にも引き込まれてしまった。
やはり、ここまで多くの人々から支持される音楽には、抗しがたい魅力がある。

先日サイトウキネン・オーケストラをいっしょに聴きに行ったのが、このオケの代表者の
ヴァイオリニストである。
松本に行ったもう1人は、大先輩の敬愛する副院長で、今回はステージの上で
コーラスのバスのパートに参加しておられた。

さらに、わたしの旧友である眼科の女医さんも、ソプラノのパートを歌っていた。
彼女はマタイのコーラスにも参加しているし、ソロコンサートもする美声の持ち主だ。
ただし、とんでもない酒乱なので、酔っているときには、半径2メートル以内には
近づかないようにしている。

わたしだけが、いつまでたっても評論家から卒業できないようだ。