大当たり~ | ワインな日々~ブルゴーニュの魅力~

ワインな日々~ブルゴーニュの魅力~

テロワールにより造り手により 変幻の妙を見せるピノ・ノワールの神秘を探る

盆休みは1週間もあったのだが、原稿書きと掃除に明け暮れ、今日も積み残した仕事が
残っている。町医者のくせに毎月平均2回もしゃべっているからこうなるのだが、
9月初めには企画責任者になっている市民公開講座もあり、休日も酔っている暇がない。
が、やっぱり酔っている。

なぜかブログはスイスイ書けるのだが、医師会から頼まれた講演会レポートとか、
学会抄録は遅々として筆が進まない。趣味と仕事の違いなのか?

そんな中、昨晩は、東京からワインの師匠がセミナーのため大阪にやって来たのをいいことに、
ワイン業界にいる大阪在住の友人も招いて、ワイン飲みばかりの3人でワイン会となった。


シャトー・スミス・オー・ラフィット(白) ペサック・レオニャン 1997
購入日    ?
開栓日    2006年8月19日
購入先    ?
インポーター サントリー
購入価格   ?(ネットでは5000円くらい)

ある友人から2年ほど前に頂いたワインである。
夏だから白からいこうか、と思って開栓したが、これは夏向きの白ではなかった。
これぞ黄金色。見るからに濃厚な白ワインで、清澄で伸びやかなアンヌ・グロの対極をいく。

ブドウ品種はソーヴィニオン・ブラン90%、ソーヴィニオン・グリ5%、セミヨン5%だそうである。
当初は硬く閉じこもっていたようで、アロマは控えめだが、エステルのような香りがする。
なぜかフルーツやハーブなどを連想させず、ちっとも甘くなくてドライである。

酸味も甘みも乏しいが、蜜のように濃厚な白ワイン。
何とも矛盾した表現だが、これが3人の一致した意見である。

数時間後に初めてほどけた印象を感じたが、その時点でもうほとんどワインは残っていなかった。
これほど重い白はちょっと記憶にない。
カリフォルニアの樽香を効かせたシャルドネとはまったく次元の違う濃厚さで、
こちらはブドウの果実そのものを感じる。
ボルドーの白としてはおそらく最高のレベルにあるのだろうが、夏にはちと暑苦しい。


ヴァンサン・ジラルダン シャンボール・ミュジニー レ・ザムルース 2000
購入日    2006年4月
開栓日    2006年8月19日
購入先    いなげや
インポーター フィラディス
購入価格   9500円

先日からAlcoholic Armadilloで購入した、この造り手のグラン・クル1998を3本開けたが、
それらから判断するに、この造り手の実力はさほどのものではない、と思っていた。
(いのまたせんむ、ごめんなさい)
このワインはその印象を完璧にひっくり返す、見事なブルゴーニュである。
六覚燈や弘屋で飲んだワインを除き、自分で購入したワインでは、今年の最上の1本かも知れない。

ヴィンテージが2000だから、ちょっと若いのではないかと思って開けたが、やはり当たっていて、
あと1年半すればピークが訪れると思われるのだが、今でも魅力十分である。
グラスに注いで、1滴も飲まなくてもこれが大当たりだとすぐ分かった。
一点の濁りもないアロマが、惜しげもなく湧き上がってくる。

ちょっと暗めの森の中を、下草の香りを感じつつ歩を進めると、清らかな水を湛えた泉に出合う。
これこそザムルースのイメージ通りである。
行ったことはないけれど、あまり日当たりが良くなくて、繊細なブドウができる畑が目に浮かぶ。
華美に走らない、実に落ち着いた陰性のピノ・ノワールである。
いかにもシャンボール・ミュジニーだなあ、と師匠と相づちを打つ。

この夜は、重い白に繊細な赤、という逆説的な組合せになった。
濃厚なスミス・オー・ラフィットと比べても、ザムルースの懐の深さ、複雑さは比較にならず、
極上のワインは決して重いワインではない、という当たり前の事実を再確認した。

実はこのあと、ちょっと味を確かめたくなって、サンテミリオンの
シャトー・クロワ・ド・ヴェルサン2002を開栓してみたのだが、これはまったくの蛇足であった。
このワインだけ飲めば常識的なサン・テミリオンだが、極上のザムルースの前では
大陽と月ほどの違いがあり、一口味見しただけになった。
ワインに気の毒なことをした。

最後に、師匠がメールで流した感想を併記しておく。
 Pinot noirの香りや甘みが出ているワインというのはある程度のレベルの Bourgogneを
 買えば飲めるのですが、熟成が甘みにならない、もっと凝縮した、派手さのないBourgogne
 というのは、なかなか飲めません。まさにブドウから作り出された雫ですね。
 A(ワイン業界の友人)も、後に残る味が素晴らしくいい、小さいときに干しぶどうをたく
 さん食べて、暫くした後、喉に香りが出てくるような味だ、と言っていましたが、
 言い得て妙でしたね。

これだけワインを開けていても、こういういいブルゴーニュに遭遇するのは年に数回しかない。
同じワインはもう1本あるが、わたしはブルゴーニュ飲みだから、
当然同じ結果になることなど期待していない。