ちゃんと熟した1本 | ワインな日々~ブルゴーニュの魅力~

ワインな日々~ブルゴーニュの魅力~

テロワールにより造り手により 変幻の妙を見せるピノ・ノワールの神秘を探る


ヴァンサン・ジラルダン ラトリシエール・シャンベルタン 1998 
購入日    2006年5月
開栓日    2006年8月5日
購入先    Alcoholic Armadillo
インポーター 稲葉
購入価格   52600円(グラン・クル 6本セット)
(グラン・クル 6本セット:エシェゾー、ラトリシエール・シャンベルタン、
 クロ・ド・ラ・ロッシュ、クロ・サン・ドニ、クロ・ド・ヴージョ、ボンヌ・マール)

Alcoholic Armadilloで購入した、ニュイのグラン・クル6本セットの3本目。
3本目にして、ようやくちょっとまともな1本に出会えたことに、まず少し胸をなでおろす。
1本目のエシェゾーは論外として、2本目のクロ・サン・ドニも、グラン・クルとして
納得いくレベルであったとは言い難かった。

さて今回のラトリシエール、クロ・サン・ドニと比しても熟成が進んでいるようだ。
開栓早々からけっこうな酸味があり、イガ味や角は取れている。しかし、複雑味はあまりない。

3本開けての印象だが、これらに共通するのは、酸味にわずかだが品のないイガ味を
感じてしまう点である。
今回の1本も、かなりレベルの高いブルゴーニュに違いないが、
残念ながら「幸せワイン」からは遠い。
酸味の微妙な品のなさが、脳の片隅のどこかに、心底酔わせない「何か」を感じさせてしまう。
これは造り手の特徴なのか、98という年の特徴なのか分からない。

クロ・サン・ドニと大きく異なる点は、このワインは開栓後ほとんど変化しない、ということだ。
5~6時間経っても最初の新鮮さは失われず、品位も失わない。
開栓翌日も、それは同じである。
重量級のボトルで、細かい澱がかなり多い。これもこれまでの2本にはなかった点である。

一般論として、なぜブルゴーニュでは、格下のワインより格上の方が安定性を欠くのであろうか。
ボルドーの1級ワイン(要するに5大シャトーなど)は、当然生産量も多く、1級に値しないものは
格下げされたりして、その名に恥じないワインしか市場に出ない。

生産量の少ないブルゴーニュを、それと比較するのは暴論であると分かっている。
しかし、同じネゴシアン、同じミレジムであって、同じインポーター、同じショップから購入した
3本が、こうも1本1本違っていると、もう何を頼りにブルゴーニュを語ったらいいか分からない。

なにせこれはグラン・クルである。だからしてやや厳しい評価になってしまうのはお許し頂きたい。
ooisotaroさんが紹介下さっているように、世の中にはすごい飲み手がおられる。
わたしなど、魑魅魍魎たるブルゴーニュの入り口から3歩くらい歩いて、すでに落とし穴に
何回も落ちている心境だが、これ以上進んで貴重な資金と肝臓を、
どこまでブルゴーニュに割くべきか悩ましい。

このシリーズ、まだ残り3本ある。
お得な買い物をしたな、とはまったく思えないが、面白い買い物をしたな、と思っている。
さて、次の1本もまたびっくり箱なのだろうか。