宝の持ち腐れ | ワインな日々~ブルゴーニュの魅力~

ワインな日々~ブルゴーニュの魅力~

テロワールにより造り手により 変幻の妙を見せるピノ・ノワールの神秘を探る


フランソワ・ラマルシュ ヴォーヌ・ロマネ 1級畑 ラ・クロワ・ラモー 2000
購入日    2004年12月
開栓日    2006年1月31日
購入先    ヴェリタス
インポーター ヴェリタス
購入価格   5780円

ロマネ・コンティとラ・ターシュの間にある特級畑ラ・グランド・リュは、
このドメーヌの単独所有である。
ワインの神様が世界でただ1カ所特別に贔屓する場所、ヴォーヌ・ロマネの中でも
特に選ばれた場所にこのドメーヌの畑は点在している。

だが、なぜかこのドメーヌはあまり注目されていない。
それどころか市場ではあまり相手にすらされていないように思う。
例えばラ・グランド・リュの価格は、ヴォーヌ・ロマネの特級畑の中でも低めである
(ヴェリタスの価格で2002が14,280円)。
結局のところ、それがこのドメーヌに対する市場の評価なのだろう。

で、今日開けたワインだが、1級畑とはいえその場所は大したもので、
特級畑ロマネ・サン・ヴィヴァンに食い込んだ形になっている。
だが、このワインはそのテロワールをまるで想起させない代物である。

開栓してグラスに注ぐと、香りは拍子抜けするほどおとなしい、というか乏しい。
口に含んでも何とも軽々しく、酸味が心地よいがただそれだけで、
知らずに飲んだらこれが5000円以上もするワインだとは誰も思うまい。

ルーミエみたいにまったりとした深い味わいからは遠いワインで、これでは受けないわけだ。
このワインがヴォーヌ・ロマネのテロワールを主張しているか、というとはっきりNoだ。
うっかりすると、1500円のACブルゴーニュ程度の代物かと思ってしまいそうである。

ところがどっこい、甘みの乏しい、酸味ばかりの軽々しいワインにもかかわらず、
余韻だけは思い切り長く続く。
感性のアンテナをよ~く立てて味わってはじめて、妙に気品があることに気付くのである。

ワインの初心者なら、500円のテーブルワインと区別はつかない。
ちょっとワインを飲み慣れた人は、2000円くらいの広域ブルゴーニュかな、と思う。
ピノ中毒のわたしは、これがやんごとない出自のワインであると分かる。

難解ではあるが、この喉ごしと余韻は、3000円以下では得られない。
軽やかですいすいと飲めるが、ほんのちょっぴり幸せな気分にしてくれる。

しかし、5000円以上も払うなら他にいくらでも良いワインがある、というのも
動かし難い事実だろう。

ボア・ルカを例に出すまでもなく、より恵まれない土地から、造り手の力量によって
瞠目に値するワインが生まれている。
こんなに恵まれた世界最高の土地から、この程度のワインしか生まれないことを知って初めて、
造り手の役割の大きさに気付かされるのである。

そういう意味では、貴重な体験をさせてくれたワインであった。