フィギュアスケートと音楽 | 閉じた眼

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40年以上愛好するフィギュアスケートに関する自己流観戦コラムです。
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先週はあまりニュース(コストルナヤのコーチ替えと昌磨君のYouTubeチャンネル開設くらい??)がなかったのと、今週グランプリシリーズの開催に関するISUのミーティングがあるということで(そういえば、もともとスケートアメリカのキャンセル期限は8/1だったはずだけれど、今の所何のニュースもなし)、

 

今日は、私的ネタ、フィギュアスケートと音楽の話をしたいと思います。

 

私が子供の頃、ビデオなるものはまだ普及しておらず、当時何か記録するとなるとカセットテープで、映像は見れなくても音楽と解説を記録したいと、カセットでフィギュアスケートの中継を録音していました。

 

当時は、音楽のタイトルは必ずしも放送されないし、多分ISUでも選手の音楽情報を管理していなかったと思われ、そうした情報を日本国内で入手するのは、中継で実況の人が言うかどうかにかかっているようなところ、また選手によっては必ずしも音楽の正規のタイトルではなかったりと情報が不正確でした(今でも正確でない場合が多々ありますが、少なくともあの頃よりは情報が豊富であります)。

 

例えばですが、フィギュアスケートの定番といえる「カルメン」ですけれど、カルメンというとフランスの作曲家ビゼーのオペラです。が、フィギュアスケートで使われるカルメンはビゼーが作曲していない音楽がしばしば使われます。この点がしばらくの間パズルになったことがあるのですが、ビゼー作曲のカルメンのCDを聴いてみても、「フィギュアスケートで見たあのパートが出てこない!」

 

何年がかりかで、何の音楽だったか判明しました。フィギュアスケートで良く使われているのは、バレエ音楽カルメン組曲で、ロシアの作曲家ロディオン・シチェドリンがビゼーの曲をモチーフに作曲したものでした。このシチェドリンはボリショイ・バレエ団の伝説的バレリーナ、マイヤ・プリセツカヤの夫でもあります。

 

カルメンというと私の中で一番印象的なのは、1984/1985シーズンのベスティミアノワ&ブキン組の演技ですね。YouTubeでとてもきれいな映像のバージョン見つけました。どの試合のパフォーマンスか不明です。世界選手権や欧州選手権ではないようで、ソヴィエト国内の大会でしょうかね?

 

昔はソヴィエトの選手というとロシア民謡とかソヴィエトのテレビドラマの音楽とか定番でしたが、中には珍妙な音楽で滑る選手もいました。ロシア人がそうなのか、ソヴィエトの体制がそうさせたのかよくわかりませんが、バレエとか美術とかでも現代ものは珍妙な印象はあります。

 

その中で最も珍妙な音楽で印象に残っているのが、彼らでした。

出だしは、オルフのような重厚な交響曲調で、いきなりディスコ調ビートルズ(Get Back)にフラメンコ風の「エリーゼのために」になって、最後はソビエトのドラマ音楽?みたいなすごいごった煮です。しかも衣装と音楽の関係が不明。。

とはいえ、初めて彼らの演技を1983年ヨーロッパ選手権で見た時には衝撃的でした。ペアで現代バレエではないかと思えるような振付や、変形のサイドバイサイドスピンを初めて見ました。これまでペアの演技というとリフト、ジャンプ、ステップといった要素はただ滑っているだけで、それ以外のつなぎでここまではっきりした振付が入ったプログラムは見たことがありませんでした。

 

彼らが、あのペアのレジェンド的コーチ、モスコヴィーナさんが育てた世界チャンピオン第1号でした。先日のアワードでは、モスコヴィーナさんに賞を与えるべきだったのではという声もネットでありました。

 

フィギュアスケートで知った音楽というのも数々あり、中には探し回って、やっとCDを買ったというものもありました。

エジプトの町中でかかっているのではないかと思えるような現地度満点の音楽で、夢中になり、どうやらMostafa Saxというエジプトのミュージシャンの音楽と知り、Amazonで見つけて買いました。

 

これまで、中東風のプログラムというとシェヘラザードとかピーター・ガブリエルのパッションとかヨーロッパの人が中東をイメージして書いた音楽が使われることが多かったですが、「本当の中東音楽」が使われているのを初めて見たと記憶しています。

 

この音楽は問題になりましたが、音楽自体は好きでした。不祥なバックストーリーが残念でした。

フィギュアスケートというとクラシック音楽が良く使われて、今ではフィギュアスケートで使われた音楽を取り上げて、映像と共に演奏をするコンサートも開かれているそうで、一度そのテレビ放映番組も見ました。映像に合わせたり、編集した音源に似せるのに演奏者はいろいろ工夫している話を興味深く聞きました。

 

試合中継をカセットテープで、しかもケーブル接続もなく生録音で、家族の話声も入ってしまっているような音源を繰り返し聴いていた私の中学・高校時代とは、次元が違っています。あの日々は何だったのか。。。

 

フィギュアスケーターに人気のクラシック音楽作曲家というと、ラフマニノフでしょう。ピアノ協奏曲第2番を始め、鐘、パガニーニの主題による狂詩曲、ヴォカリーズ、エレジー、シンフォニックダンス、悲しみの三重奏曲、これほど多くの曲が使われている作曲家はいないように思います。

 

ラフマニノフに並んで人気なのはラヴェルで、ボレロを始め、マ・メール・ロワ、ダフニスとクロエ、ツィガーヌ、水の戯れ、序奏とアレグロなどが使われています。ツィガーヌは高校時代にとても好きな曲でしたが、その頃はマイナーな曲でFMでライブで聴いたきり、CDを探しても見つからず、フィギュアスケートで使われるのをみて驚き嬉しく思いました。その一方、ラヴェルでは超有名曲「亡き王女のためのパヴァーヌ」を使うスケーターは私の記憶の限りではなくて、フィギュア向きのスローなテンポで誰かが滑ってもよさそうに思えるのですが、、、

 

私の中ではラヴェルといえばこの人、クリュイタンス指揮パリ音楽院管弦楽団の演奏で聴いてみると、

スケートで滑るイメージはないのかな。。。ペアとかアイスダンスとか、カップル競技で滑るとよさげな気もしますが。。

 

最近のフィギュアスケートの音楽は、クラシックよりもコンテンポラリーな音楽が使われることが多くなって、私の知らない音楽が増えています。

 

パパダキス&シゼロン組がイタリアの作曲家ボッソの曲を使って、ニューエイジミュージックっぽい雰囲気の曲がはやっています。私的には、世界チャンピオンになれなかった2016/2017シーズンのフリーの曲は衝撃的でした。

 

この頃から、1984年サラエボ・オリンピックのトーヴィル&ディーン組のボレロ以来、長く続いていたフィギュアスケートの音楽の潮流、1つのプログラムで1曲を使うのが、昔の私がフィギュアスケートを見始めたことに主流だった複数の音楽を使う方向に変わってきたように思います。

 

ただ、昔の場合は音楽が変わるとプログラムの振付や雰囲気がガラリと変わる(かつては早い音楽のパートとスローパートを組み合わせてプログラムを作るのが主流でした)ものでしたが、最近は複数の音楽を使いながらも、切れ目が分からないように、まるで1曲かのように編集しているのが進化しているところです。しかし、個人的には「やりすぎでは(あるいは編集がうまくない)?」と思うプログラムもいくつかありますが。

 

音楽の中には、この音楽好きだけど、フィギュアには絶対無理だろうなと思う音楽もあります。例えばこちら。

複雑なリズムが前面に出ているような音楽というのは、スケート向きではないのかなと思います。

 

ジャズもあまりフィギュア向きでなくて、テイク・ファイブとかスィングの曲は使われることはありますが、私が「これがジャズだ!」と思う曲や演奏が使われることはないですね。

何となくですが、あまり曲に合わせず、曲と無関係に動くような振付が合うのかなと思ったりします。何となくジャズって「俺は俺でやっている、お前はお前でやれ」的な、同調を拒否するような雰囲気があります。

 

昨シーズンは、歌でなくセリフが入っている音楽というのも使われたりしました。個人的にはアカペラとか菅楽器ソロとか打楽器だけの音楽を使ったプログラムって見てみたい気がします。アイス・ショーで演奏家がスケーターに合わせて即興で弾くなんてパフォーマンスも面白そうです。

(例えばこういうアカペラ)

 

 

最近は「誰かが滑ったことのある音楽」を選ぶスケーターが多いような気もして、驚きや出会いが少なくなってきたかなと思います。数々の素晴らしいプログラムを作ってきた振付師でも「二番煎じ多くない?」と思う人も。

 

2019/2020シーズンで音楽で特に印象に残ったといえば、ステパノワ&ブキン組ですね。

ティンバーレイクのクライ・ミー・ア・リバーを使うのは彼らが初めてではないですが、初めて印象に残りました。音楽とリズムと振付、衣装、パフォーマンスがすべてがっちり合っていた印象があります。

 

演技が素晴らしいと、音楽が大きく、歌の場合は歌詞がすごくはっきり聞こえたりしませんか?私はしばしばそういう経験します。

 

 

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