『玄米茶2』
「はぁ・・」康夫は、ため息をついた。
「どうしたの?なにかあったんですか?」と、美加は聞く
「それが、どうしてもよく判らないんだ」
「なにがですか?」
「色々な人が、仕事の助言をしてくれるのは良いのだけれど、
人によって全然違って、何をどうして良いのか判らなくなってしまって」
「そうなんですか・・」
他の人はどうだか判らないが、入社当時から康夫と話をしてきた美加は、
康夫が人とは少し違うことに気がついていた。
康夫は、言葉や文章をまっすぐ受け止めてしまうようだ。
文面どうりに受け止めてしまうため、文章に矛盾点や
ひとつの問題に対して矛盾する幾つもの答えが理解できない。
多少の時間をかけると、言葉の中の重要な部分と不要な部分を整理して
自分なりに消化できるようだが、それも完全ではない。
「北山さん、一つづつゆっくりすれば良いと思いますよ。
それに、条件によって答えが変わるものもあるでしょう。
例えば、水は条件によって液体になったり固体になったり気体になったり。
条件次第で変わるでしょう。」
「なるほど、なるほど・・僕は助言した人が成功したときの条件を全然知らないよ。
そうか、それだと判らなくても当たり前なんだ。今度、全ての条件を聞いてみよう
そしたら全てがわかる。」康夫は、目を輝かせながら言った。
「それは無理だと思いますよ。細かいところまで覚えてないでしょう」
「なんで?」康夫は不思議そうに聞く。
「えっ?北山さんは覚えているんですか?」
「うん。だいたい2ヶ月ぐらいは100%覚えてるかな。それを過ぎると
少しずつ忘れるけどね。」
そう言うと康夫は、2ヶ月前に美加と話した会話の内容を
スラスラと美加に話してみせた。
「すごい・・」
美加は 康夫の能力に驚いた。
「マインド セメタリー」
生き埋めにされた 俺の心を
墓石を倒して 掘り起こせば
半分腐りかけてた心が
激しい心音を響きわたらせ
時代のレールの 支配を解く
さぁ 踊れ 思うままに
さぁ 戻れ あの心に
「玄米茶①」
「しまった、失敗するための論文は読んだことが無かった」
と康夫はつぶやいた。
一流高校、一流大学、一流企業への就職と順調に進んできた北山 康夫にとって
上司に言われた言葉が、痛く胸に響いたようだ。
「北山さん、どうしたの?」
短大を出て入社した、3歳年下の山岸 美加が不思議そうな顔で康夫にたずねる。
「大きなプロジェクトを 幾つも成功させてきた部長に、成功の秘訣を聞いたんだ」
同期ということもあり、二人はよく話をする。二人とも今年入社した新入社員だ。
「それで部長は、なんて言ったの?」
美加は聞いた。
「失敗すること」
「失敗すること?」
「そう。失敗することで多角的な視野・志向が身に付き、大きな成功を手にすることができる。
失敗をしない人間は、小さくまとまっていて、大きな成功を成し得ないと言うんだ」
今まで失敗しないことが成功だ。と思っていた康夫にとって、新鮮な言葉だったようだ。
「うふふ。それで『失敗するための論文は読んだことが無かった』なんて言ってたの?北山さんらしいわね」
「僕らしい?」
「北山さんって面白いわね。頭は良いのかもしれないけど、天然入ってるわ」
「天然?」
「そう天然。頑張って失敗してね」
退社時間が過ぎ、それぞれ帰路についた。
翌朝、美加は何時もより少し早く会社にやってきた。
「おはようございます」
康夫を見つけた美加が 近づいてきた。
「あっ、山岸さん。おはよう」
「北山さん良い失敗方法見つかりましたか?」
「いや、良い失敗の仕方が見つからなくて。
考えても仕方が無いから、取りあえず失敗してみようと思うんだ」
「あはははは」
おもわず笑ってしまう美加。
「北山さん。昨日、部長が言ったことは、そういう事じゃないんですよ」
「えっ?どういうこと?」
「自分で考えて下さい、頭が良いんだから」
美加はニッコリ笑って自分のデスクについた。
「太陽の光」
俺は光を拾ったよ
両手をこうして広げると
俺の手のひらに
光が落ちてくる
俺は光を拾ったよ
拾った光を両手で包み
手の中を覗いて見ると
拾った光が無くなった
如何してだろう・・
もう一度手を広げると
また光が落ちてきた
光を持って帰ろう・・
俺は また手で包んだ・・
「物語」
そこは既に 航海の中
夜霧を進む 幽霊船で
有りもしない宝目指し
俺は進むのさ
宝の地図に印されたのは
ダイヤの型の天国への扉
気付かぬフリして
俺はただそこへひた走る
お前も既に
承知のはずさ
帰り道の無い物語

